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【少女マンガに学ぶ不倫】第1回『あなたのことはそれほど』

和久井香菜子

少女マンガ攻略・解析室室長の和久井香菜子が不倫を扱った少女(女性向け)マンガを毎週1冊ピックアップ! そこに描かれた男女の姿から、不倫の哀しさ恐ろしさを学んでいく連載です。美しく描かれることも多いけど、不倫はダメ、絶対!

こんにちは、少女マンガ攻略・解析室室長の和久井香菜子です。
告白してきた男性に、
「あなたとつき合っても私にひとつもメリットないじゃない」
と言ってお断りしたことがあります。
とっても好きなタイプの人なんですけどね。
だって結婚してて、子どももいるんだもん。つき合ったら不倫です。

女の気持ちは男にはわからないし、世の中まだまだ男性社会。
女同士が結託しないと、生きづらくてしょうがないと思うんですよ。だから「女の敵になるような不倫」はぜったいNGだと思ってます。

今年2016年は「不倫確変入りました!」ってくらい、不倫報道が相次ぎましたね。
でもどうやっても不倫した男性よりも女のほうが罰が厳しそうです。
女性向けマンガでは、不倫をどう扱っているのでしょう?
この連載で、ちょっと覗いてみたいと思います。

今週の教科書『あなたのことはそれほど』

何気ない話を書かせたら天下一品の巨匠、いくえみ綾先生の不倫ものです。
三好美都と有島光軌は中学の同級生。
社会人になってから偶然2人は再会します。有島くんのことを好きだった美都は、すぐに彼と大人の関係に。
しかしその後、有島くんに子どもが生まれます。そう、有島くんは既婚者だったんですね。

一方の美都も実は既婚者で、子熊っぽい渡辺涼太と結婚しているんです。
優しくて美都にぞっこんの涼太。だけど思い込みが激しく向こう見ずな美都は、有島くんにどんどんのめり込んでいきます。
美都の浮気に気づいた涼太は彼女を寛大に受け止めると言いますが、美都の気持ちはどんどん離れていき、それと同時に美都への気持ちがそれほど強くなかった有島くんは、どんどん引いていってしまう……。

有島くんと美都の不倫に学ぶ男女のちがい

ホントありそうな話で怖いです。
男も女も「ちょっとつまみ食い」はできるんですよね。美都も有島くんも、初めは軽いノリです。
だけど一度関係を持ったら、引きずるのはたぶん女のほうです。身体の関係が心に影響するのは、生物学かなんかからみても女のほうなのだとか。

有島くんは、要は「奥さんの出産里帰り中にちょっと羽のばしてみました~~」ってヤツです。最低男ですね。
でも有島くんに悪気があったかというと、たぶんないんですよね。
「チャンスがあったから関係してみた」
くらいの気持ちなんでしょう。
「奥さんが、自分との子どもを産むために命をかけてる最中に、自分はチャラチャラ女と遊んでる」なんて冷静に状況を客観視したりしてないんです
これが不倫の怖いところ

で、美都が自分にのめり込んでいくのを感じると、「面倒くせえ!」となっていきます。
そりゃそうですよね、なんの覚悟があった訳じゃないんだから、自分の会いたいときに会って、ガス抜きできる関係じゃなかったら、いりません。

一方で美都の夫、涼太は、すごくいい人なんだけど、ちょっとずつ気持ち悪くなっていきます。
美都の携帯を盗み見して有島くんとの関係を知っているのに、美都の不倫をなかったことのように振る舞い、有島夫婦のところに様子をうかがいに行く。
愛する妻の心が離れていくのを、寛大な心(のフリをして)受け止める以外に方法がわかりません。
同情を禁じ得ないんだけど、こうなると女の気持ちは離れていくばかり。
読者も「涼太はないな~」って思いながら読んでいるのではないでしょうか。
怒って暴れて、美都を責めたらよかったかもしれないのに。

美都夫婦、有島夫婦がどうなるのか、今後の展開が非常に気になります。どんどんと二組の夫婦の関係がこじれていっていて、ひやひやします。
10月8日、本日4巻が発売です。

まとめ

人生、何をするにも覚悟が必要です。
結婚をするときには「この人と生涯パートナーの関係を築く」覚悟
不倫をするときには「自分の結婚生活が破綻するかもしれない」覚悟
有島くんにしても美都にしても、なにか自分の都合のいいように物事が運ぶように考えているよう。

怖い怖い。「悪い人」なんて結局は、覚悟ができていなかったり、状況を客観的に捉えていなかったりという、フツーの人です。
行動するときに「覚悟」がなければ、誰にでも道徳を侵す可能性はあるんですよね。
軽い気持ちではじめると、そのツケは結構大きいのが不倫というヤツです。

(文・イラスト 和久井香菜子)

★次回の『少女マンガに学ぶ不倫の実態』は10月15日(土)掲載予定です、お楽しみに!

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※この記事は2016年10月08日に公開されたものです

和久井香菜子

少女マンガ攻略・解析室 室長(http://kanako-wakui.net/index/)、編集・ライター。卒業論文で『少女マンガの女性像』と題して、女性の社会進出と少女マンガの主人公の描かれ方がどうリンクしているかを研究。以後、各種少女マンガレビューの執筆を始める。著書に『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)がある。

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