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2022年12月07日 10:53 更新

【医師監修】妊娠超初期から初期の「下腹部痛」は危険? お腹が痛むよくある原因と流産との関係

妊娠を待ち望んでいる女性にとって、生理開始予定日前の2週間ほどはやきもきする期間ですね。このころに「下腹部痛」があったら、そこから妊娠の可能性を探ることはできるのでしょうか? ここでは、妊娠超初期の下腹部痛と、それによく似たPMSによる下腹部痛について解説します。

「妊娠超初期」は下腹部痛が起こりやすい?

下腹部に痛みがあり、妊娠初期の兆候では?と考えている女性のイラスト
(イラスト:杉井亜希)

妊娠のかなり早期の期間は、俗に「妊娠超初期」と呼ばれることがあります。医学用語ではないのできちんと定義されているわけではありませんが、生理開始予定日より前の期間、つまり妊娠4週未満までを指す場合が多いようです。

通常、妊娠検査薬は生理開始予定日の1週間後以降に使用するとされているし、このころは産婦人科での超音波検査でもまだ妊娠を確定できない時期です。

妊娠を待ち望んでいる女性にとっては、早く知りたいのに確定することができない、もどかしいころ。そんな時期に下腹部痛を感じたら、「もしかして妊娠の兆候かも!?」と気になるかもしれません。

そもそも、妊娠超初期に下腹部痛が起こることはあるのでしょうか? よくある原因を見てみましょう。

① 消化機能の変化による下腹部痛

受精卵が着床すると、女性の体内で分泌されるホルモンに大きな変化が生じます。そのうちのひとつ、プロゲステロン(黄体ホルモン)が胃や腸などに作用すると、食物の通過が遅くなり、便秘を引き起こすことがあります。

これを腹痛やお腹の張りといった症状として感じる可能性があります。

② 子宮周辺の変化による下腹部痛

また、もともと「鶏の卵」くらいの大きさの子宮は、妊娠3ヶ月末(妊娠11週)ごろには「握りこぶし」くらいの大きさにまで大きくなります。このように大きくなっていく準備として、妊娠すると、子宮への血流は増え、筋肉が伸びます。

子宮を支える「靱帯(じんたい)」や「広間膜(こうかんまく)」といった周辺の組織も子宮の成長に伴って引っ張られていきます。

こうした子宮自体やその周辺組織の変化が妊娠超初期にすでに始まっていれば、生理痛のようなおなかの張りや違和感となって現れる可能性もあります。

着床で下腹部痛が起こることはある?

なお、妊娠は受精卵が子宮内膜にくっつき、潜り込んでいく「着床」により成立しますが、この着床によって痛みを感じることは普通ないと考えられます。

なぜなら、子宮に潜り込んでいく受精卵はとても小さいからです。「着床出血」といって少量出血することはあります。

妊娠初期は下腹部痛は起こりやすい?

妊娠中は出産するまで、軽いお腹の張りや痛みを感じることはめずらしくありません。妊娠初期の腹痛もよくあることで、その多くが妊娠で体が変化することで起こります。

例えば、妊娠すると子宮への血流が多くなり、張ったような痛みを感じることがあります。また、大きくなっていく子宮によって靭帯が引っ張られ、張りを伴うつったような痛みが出ることがあります。これらは妊娠によって自然と起こる心配のない痛みです。

一方で、異所性妊娠(子宮外妊娠)、絨毛膜下血腫といった注意が必要な疾患が原因で腹痛が起こることがあります。早めに産婦人科へ連絡し、指示を仰ぎましょう。
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妊娠初期の腹痛の原因や症状については以下の記事で詳しく解説しています。参考にしてください。

流産の可能性もあるの?

腹痛のある女性
Lazy dummy

妊娠超初期〜妊娠初期に下腹部痛があったら「流産」が原因のこともあるのでしょうか。

下腹部痛イコール流産ではない

最初に説明したとおり、妊娠による変化で下腹部痛を感じることもよくあります。ですから、下腹部痛があるからといってすぐに流産を心配する必要はありません

妊娠初期は流産がよく起こる

ただ、妊娠初期に流産が起こりやすいのもたしかです。
妊娠22週未満で、お腹の赤ちゃんがなくなってしまうのが「流産」で、全妊娠の約15%に起こります。そして、流産の8割以上は妊娠12週未満に起こっています。

妊娠初期に起こる流産の原因は、染色体の異常など赤ちゃん側にあることが多く、この場合は、残念ながらもともとそうなる運命の受精卵だったということなのです。

なお、妊娠検査薬で陽性と出たあと、産婦人科での超音波検査による妊娠確定前に流産してしまうことを「化学流産」と言います。この場合、「検査薬で陽性」が出たあと、「生理時と同じくらい、またはそれより多い出血」が見られますが、腹痛はないと言われることが多いです。
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流産の症状や原因、予防法に関して詳しくは以下の記事で解説しています。

生理予定日前なら、妊娠以外が原因かも!

下腹部が気になる女性

生理開始予定日前で妊娠が確定していないのであれば、「妊娠以外の理由」で下腹部痛が起こることもあります。

月経前症候群(PMS)による下腹部痛

生理の3~10日前には、「月経前症候群(PMS:Pre Menstrual Syndrome)」と呼ばれる不快な精神的・身体的症状が出る場合があります。

この症状には、「イライラ」「集中力の低下」「眠気」「落ち込む」「不安」などの精神的症状、「頭痛」「腰痛」「胸の張り」「むくみ」などといった身体的症状があり、PMSによって「腹痛」を感じることもあるのです。

排卵による下腹部痛

また、女性の生理周期はストレスなどによって簡単に変動します。その結果、「予想より排卵が遅れていて、それによる痛みを生理前の痛みと勘違い」する可能性もあります。

排卵による痛みは、実はよく起こるものです。この場合、「お腹の片側の痛み」「ひきつった感じや違和感、張り」を感じることが多く、「少量の不正出血」を伴うこともあります。

妊娠超初期とPMSの症状の見分け方

妊娠超初期に下腹部痛を訴える女性
Lazy dummy

妊娠検査薬も超音波検査も頼りにできない妊娠超初期に、症状だけから妊娠の有無をうかがい知ることはできるのでしょうか。

症状だけで妊娠の有無を見分けるのは難しい

妊娠超初期に起こる症状とPMSの症状の違いは、残念ながらほとんどありません。

つまり、生理開始予定日より前に「下腹部痛」を感じたからといって、妊娠していると判断はできないのです。

ただ、PMSの症状であった場合は、生理が始まると消えたり軽くなったりします。

「あとから考えるとあれが妊娠のサインだったのかも」など、先輩ママなどから耳にすることもあるかもしれませんが、誰にでもあてはまるものではないと考えておきましょう。
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妊娠超初期症状とPMSの違いについては、以下の記事で解説しています。

基礎体温の変化と妊娠検査薬で見分ける

妊娠しているかどうか、早めに知りたい場合は、「基礎体温」と「妊娠検査薬」を活用しましょう。

基礎体温を記録している場合、「高温期が17日以上続いて生理が来ないとき」は妊娠の可能性が高いです。妊娠を希望する女性は日ごろから基礎体温をつけておくと良いですね。この兆候がみられたら、妊娠検査薬を使ってみましょう。

妊娠検査薬は、「生理開始予定日の1週間後から」使えるようになります(早期妊娠検査薬は生理開始予定日から)。妊娠検査薬で陽性が出たら、産婦人科を受診しましょう。

通常の妊娠検査薬を生理開始予定日に使った場合(フライング検査)でも陽性判定が出ることはありますが、フライング検査では「実は妊娠しているのに陰性と出る可能性」もあるので、できるだけ説明書にある使用期間に使いましょう。

なお、フライング検査や早期妊娠検査薬で陽性反応が出た場合は、とくに体調などに変化がなければ、その1週間後に通常の妊娠検査薬を使い再度陽性となるかどうか確認してから、産婦人科を受診すると良いでしょう。

まとめ

晴れ晴れとした女性のイメージ

妊娠超初期に下腹部痛が起こることはありえます。ただ、症状だけから妊娠の可能性を知るのは難しいものです。妊活中、生理の前に何か症状があると、妊娠の兆候と結び付けて考えがちですが、はやる気持ちをぐっと抑えて、適切な時期に妊娠検査薬で検査してみましょう。

(文:マイナビ子育て編集部/監修:宋美玄先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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