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2022年07月05日 15:21 更新

宋美玄先生取材|NIPTってどんなもの? 出生前検査について妊婦さんが知っておきたいこと

生まれる前の赤ちゃんの健康を調べる検査=出生前検査。NIPTはそのひとつです。耳にしたことのある人も多いでしょう。NIPTとはどんな検査で、どんなことがわかるのか、産婦人科医で出生前検査にも詳しい宋美玄先生に伺いました。

NIPTとは? どんな検査で何がわかる?

NIPT(エヌ・アイ・ピー・ティー)は妊婦さんの血液から、おなかの赤ちゃんの染色体異常の可能性を調べる検査です。妊娠10~16週頃に行うことができます。以前は「新型出生前検査」と呼ばれることもありました。

ダウン症など染色体異常の有無がわかる

染色体

細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体のことを染色体といいます。ヒトの細胞の染色体は通常、2本で1組のものが23組、計46本あります(精子と卵子を除く)。

しかし、なんらかの原因によって、2本で1組のところが3本で1組トリソミー)になったり、通常とは異なる構造になったりすることがあります。それらを染色体異常といいます。

NIPTは、妊婦さんの血液中に含まれる胎児由来のDNA断片を分析し、ダウン症など3種類の染色体異常(13・18・21トリソミー)の可能性を「陽性」または「陰性」で診断します。

検出感度が高いスクリーニング検査

出生前診断のための検査には、NIPTのように染色体異常がわかるもののほか、赤ちゃんの発育異常がわかるもの、心臓の異常がわかるもの、染色体異常がわかるものなど、いくつかの種類があります。

NIPTは、染色体異常がわかる出生前検査の中でも「非確定的検査」「スクリーニング検査」と呼ばれるもので、染色体異常の疑いの発見を目的に行われます。21トリソミー(ダウン症)の検出感度が99%を超えており、ダウン症の見落としが非常に少ない検査として知られています。

しかし一方で、一定の頻度で偽陽性(ダウン症ではないのに「ダウン症の可能性あり」という結果が出る)が発生しています。特に若年の妊婦さんでは陽性的中率が低くなる傾向にあります。

NIPTの結果、染色体異常の可能性が高かった場合、絨毛(じゅうもう)検査や羊水検査を行い、診断を確定させます。

宋美玄先生に聞く「NIPTについて、妊婦さんが知っておいたほうがよいこと」

NIPTに興味があるものの「どうしたらよいのかわからない」と戸惑ってしまう妊婦さんもいるでしょう。
そこで、イギリスに留学し出生前診断について学んだ経験もある産婦人科医の宋美玄先生に、NIPTについて妊婦さんが知っておいたほうがよいことを教えていただきました。

①「NIPTさえ受けておけばOK」ではない

「出生前検査について『NIPTを受ければ、赤ちゃんの先天異常が全部わかる』と誤解されていることがよくあります。

NIPTは、赤ちゃんの染色体異常の可能性が高確率でわかる検査です。しかし、染色体以外のすべての先天異常もわかるような、万能な検査ではありません

赤ちゃんの先天性の病気や異常には染色体異常のほかに、形態異常や遺伝子異常など、さまざまなものがあり、超音波検査やMRIといった画像検査でしかわからないものもたくさんあります。

そのことをよくわかっていないと『NIPTさえ受けて、結果が問題なければOK』と勘違いしてしまうことになりかねません。まずは『何がわかる検査なのか』を正しく理解しておくことが大切です。」

② NIPTで陽性=染色体異常確定ではない

『検査結果が陽性だった場合、必ず確定検査を受けてください』ということも併せて伝えたいです。

NIPTは『21トリソミー(ダウン症)の検出感度が99%』と言われますが、その数字は『ダウン症のある赤ちゃんが検査で陽性になる割合』という意味で、『陽性になったら99%ダウン症』という意味ではありません。陽性的中率は年齢によって違い、若い人の場合はあまり高くないです。つまり、中にはダウン症ではないのに、陽性(ダウン症の可能性あり)と出るケースもあるのです。

なので、NIPTの結果が陽性になった場合、まずは必ず絨毛検査や羊水検査といった確定的検査を受けてください。NIPTだけでは確実な判断が難しいということを覚えておくとよいでしょう。」

③ 適切な情報が得られるようにする

「海外では公費でNIPTを受けられる国もありますが、日本はそうではありません。妊婦さん自身が検査を受けるのか、さらにどこで受けるのかを自主的に選ぶ必要があります。NIPTを受ける医療機関を選ぶ時には、『適切な選択をするための情報を得られるかどうか』を重視したほうがよいでしょう。

出生前検査を受ける際、遺伝カウンセリングを受けて情報を得ることはとても有効です。遺伝カウンセリングはNIPTなどの出生前検査を受けた人だけでなく、受けるかどうか迷っている人にとっての相談先にもなります。認定施設のほかに、胎児ドックを行っているクリニックなどでも受けることができるので、ぜひ積極的に活用してほしいです。」

遺伝カウンセリング、胎児ホットライン(出生前検査前後の家族がオンライン上で相談できるサービス)について詳しくは以下のリンクよりご覧ください。

④ 検査を受けることに後ろめたい気持ちを持たないで

「妊婦さんの中には出生前検査を受けることに後ろめたさを感じる人もいるようですが、私が妊婦さんから出生前検査の相談を受ける時は、『出生前検査は、お母さんが赤ちゃんの情報を知りたいと思ってするものだから、後ろめたいと思う必要は何もない』と伝えています。

出生前診断と妊娠中絶は切り離せない問題であることも事実ですが、それだけがすべてではなく、検査で赤ちゃんに先天性疾患などが見つかった場合、病気の治療や医療連携に役立てられます。
(そもそも赤ちゃんが病気だからという理由だけでの中絶は、日本では法律上認められておらず、『重い病気の赤ちゃんを育てることが母体にとって負担になる』というロジックのもと、行われているのが現状です。)
いずれにせよ『胎児がどんな状態であろうと産むことだけが正しい』という考えを強要すべきではないと思います。

もちろん、どんな子でも産み育てられるならそれがいいに決まっています。ですが、特別な配慮が必要なお子さんを出産した場合、親の社会生活に出る影響は決して少なくありません。決して中絶を肯定するわけではありませんが、『親になるんだから全部受け入れましょう』というのは、あまりにきれいごと過ぎるのではないでしょうか。」

赤ちゃんと前向きに向き合うために役立てていきましょう

NIPTは母体の血液検査だけで、赤ちゃんのダウン症など染色体異常の可能性を調べることができ、採血だけで済むのに見落としが少ないというメリットがあります。しかし、一方で偽陽性になることもあり、若い人ほどその確率が高くなる傾向にあります。人によっては検査結果を受け入れるのが難しいことがあるかもしれません。
ですが出生前検査の本来の目的は、おなかの赤ちゃんを一人の患者として扱い、病気の治療を行ったり、出産後に小児科と医療連携したりすることにあります。過剰な期待や反応をせず、赤ちゃんを最善の体制と前向きな気持ちで迎えるために、出生前検査を役立てていきましょう。

(文:山本尚恵/監修:宋美玄先生)

※画像はイメージです

【お知らせ】出生前診断について学べるオンライン講座<アーカイブ視聴できます>

宋美玄先生が代表理事を務めるウィメンズヘルスリテラシー協会では、2022年6月10日(金)「フロントランナーに聞く‼︎ 出生前診断」と題して講座が行われました。
講師は出世前診断の専門家、中村靖先生(FMC東京クリニック)と林伸彦先生(FMF 胎児クリニック)と超豪華! 一般の方にもわかりやすく解説されており、ただいまアーカイブ視聴ができます。興味のある方は是非チェックしてみてください。

<アーカイブ視聴>フロントランナーに聞く!!「出生前診断」
※2022年8月31日まで
■講師:中村靖先生、林伸彦先生
■視聴チケット:2,000円

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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