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2021年03月01日 11:21 更新

【医師監修】妊娠検査薬ってフライングで使ってもOK? 早く使える検査薬と注意点

妊娠を待ち望む人にとって、妊娠の有無は一刻も早く知りたいもの。市販の妊娠検査薬をつい早めに使ってしまう……ということもあるでしょう。そもそも妊娠検査薬はフライングで使ってもよいものなのでしょうか? また、通常の妊娠検査薬より早く調べられる検査薬とはどんなものなのでしょうか? ここでくわしく紹介します。

そもそも妊娠検査薬ってどんなもの?

妊娠検査薬のイメージ画像
Lazy dummy

妊娠検査薬はドラッグストアなどで簡単に入手できますし、検査スティックに尿をかけるだけ、と使い方も簡単なので、思い立ったらすぐに試すことができます。いきなり産婦人科に行くのは心理的にハードルが高いと感じる人でも、妊娠検査薬なら試しやすいですよね。

まずは妊娠検査薬ではどんなことがわかるのか、また、「もしかして妊娠?」と思ったら、妊娠検査薬で早めに妊娠の可能性を調べておきたい理由を知っておきましょう。

妊娠検査薬でわかること

妊娠検査薬は、妊娠初期に分泌され、尿に排出されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンを検出するものです。hCGは妊娠した女性の体内でつくられる特有のホルモンで、妊娠していない女性や男性の体内には通常存在しません。

hCGが尿中に一定量以上あることが検出されると、妊娠検査薬では陽性反応が出ます。それはすなわち、受精卵が子宮内膜に着床してhCGが分泌され始めたということを示しており、「受精卵の着床=妊娠の成立」と定義されています。

したがって、「妊活をしている」「いつも生理周期が順調だけれど、予定日を過ぎても生理が来ない」などの場合は、適切なタイミングで妊娠検査薬を使ってみれば、妊娠しているかどうか、その可能性を自分で調べることができます。

妊娠検査薬で早めに妊娠の可能性を知りたい理由

妊娠検査薬で早めに妊娠の可能性を知ることができると、赤ちゃんはもちろん女性の体を守ることにもつながります。

妊娠の初期(妊娠12週ごろまで)は器官形成期といって脳や心臓など、胎児にとって重要な臓器がつくられる時期です[*1]。その間は感染症や医薬品の成分、X線検査などによる放射線の照射、飲酒、喫煙など、母体が取り込んだ物質の影響を赤ちゃんが受けやすい時期でもあります。

妊娠検査薬によって妊娠の可能性を早めに知ることができれば、こうした敏感な時期に赤ちゃんに影響する可能性のあるものをできるだけ避けることができます。

異所性妊娠に早めに気づく助けにも

また、妊娠検査薬で陽性が出たことで妊娠の可能性に気付いた女性は、産婦人科を受診すると思いますが、これもとても大切です。なぜなら、自然妊娠の1~2%[*2]という割合で起こる「異所性妊娠」ではないか、確かめることができるからです。

異所性妊娠は、受精卵が卵管など、子宮内膜以外の場所に着床してしまうもので、ある日突然、お腹の中で大量に出血することがあり、そうなるとときに命にかかわります。出血や下腹部痛など、異所性妊娠の症状が出るのは妊娠6週ごろ[*2]が多いとされていますが、これは生理開始予定日の2週間後ごろにあたります。

だいたい規則的に生理が訪れていた人であれば、生理開始予定日(妊娠4週にあたる)以降に生理が来なかったら「もしかして妊娠した?」と考え、妊娠検査薬を使うでしょう。そして、陽性であれば医療機関を受診すると思います。つまり、妊娠検査薬で早めに妊娠の可能性を知ることができれば、もし異所性妊娠であっても大出血などの症状が起こる前に医療機関を受診し、診断を受けることもできるのです。

妊娠検査薬が陽性であった場合、医療機関では、超音波検査で子宮内に胎嚢があるかどうかを調べます。見当たらなければ異所性妊娠が疑われ、状況に応じて薬や手術による治療が行われます。

ちなみに、妊娠検査薬でわかるのはhCGの有無であって、「子宮内に正常に着床したか」まではわかりません。ですから、繰り返しになりますが、妊娠検査薬を使って陽性だったら、早めに医療機関を受診し、超音波検査を受けることが大切なのです。

妊娠検査の「フライング」とは

カレンダーで日程を確かめながら妊娠検査薬を使用する女性
Lazy dummy

ここまで早めに妊娠の可能性を知ることの大切さを説明してきましたが、妊娠検査薬は使用できるタイミングが決まっています。それより早くフライングで使うと、どうなるのでしょうか。

フライングに当たる時期

通常、妊娠検査薬を使用する正しいタイミングは、生理開始予定日の1週間後(妊娠していた場合、妊娠5週にあたる)からです。したがって、それより早い時期に検査をするとフライングということになります。

フライングで妊娠検査薬を使うと、仮に妊娠が成立していてもhCGの濃度が足りず、検査結果が陰性になる可能性があります。一方で早々に陽性反応が出る場合もあります。

フライング検査でも反応が出るのはなぜ?

フライングで使用しているのに、陽性反応が出ることがあるのはなぜでしょう。それは尿中のhCGの濃度に関係があります。

最初にもお伝えしたように、妊娠検査薬は尿に排出される妊娠期特有のホルモン、hCGを検出しています。hCGは、着床した受精卵を取り巻く絨毛(じゅうもう)細胞から分泌され、個人差がありますが、妊娠4週ごろ尿中に検出されるようになります[*3]。その後、hCGの濃度は急激に上がり、妊娠8~10週ごろにピークを迎えます[*3]。

一般的な妊娠検査薬が生理開始予定日の1週間後から使用可能としているのは、だいたいの妊婦さんでこのころには、妊娠検査薬で検出できる量のhCGが分泌されるようになっているからです。

しかし生理周期が不規則だったり、何らかの原因で排卵日が早まったりすると、尿中のhCGが生理開始予定日の1週間後よりも早いタイミングで、検出可能な濃度に達することもあります。フライング検査で陽性反応になるのはこうしたケースが考えられます。

早期妊娠検査薬とは? 使うために知っておきたいこと

「生理予定日の1週間後まで待てない」「もっと早く知りたい」という場合には、早期妊娠検査薬を使う方法法もあります。

早期妊娠検査薬とは

妊娠検査薬のなかにはhCGの検出感度を通常のものより高くして、生理開始予定日の数日前や開始予定日当日から検査できるようにしたものがあります。そのような妊娠検査薬のことを「早期妊娠検査薬」と呼んでいます。

アメリカやヨーロッパでは生理予定日の数日前から使用可能なものが販売されていますが、日本で市販されているのは生理予定日から使用できるチェックワン(R)ファストなどです。

生化学的妊娠になることも

このように早期妊娠検査薬や妊娠検査薬の測定感度が上昇し、妊娠が早期に発見できることには利点もありますが、それによって別の問題も起こってきました。それは「生化学的妊娠」です。

生化学的妊娠とは妊娠検査薬でhCGが検出されたものの、超音波検査で胎嚢が確認される前に妊娠が終了してしまった状態のこと。化学妊娠や化学流産とも呼ばれます。

決して珍しいことではなく、とくに異常のない健康な若いカップルでも30~40%という高頻度で起こるといわれています[*4]。先ほども挙げた妊娠検査薬の測定感度の向上、不妊治療の普及などにより、ごく初期のhCGを検出する機会が増えたことから、これまで気づかれず流産にいたっていた生化学的妊娠を確認する機会も増えていると考えられます。

妊娠検査薬で陽性反応が出たのに赤ちゃんを授かれないというのは悲しいことではありますが、何かが悪かったり、誰かのせいで生化学的妊娠になるわけではありません。たまたま成長していくことができない運命の受精卵だったということです。

生化学的妊娠ではとくに異常がなければ治療は必要ありません。あまり思い詰めず、女性の心身が落ち着いたところでまた妊活に取り組んでみましょう。

早期妊娠検査薬で陽性になったら

フライング検査や早期妊娠検査薬を使用して陽性反応が出た場合、とくに体調などに異常が感じられなければ、その1週間後に通常の妊娠検査薬を使い再度陽性となるかどうか確認してから産婦人科を受診すると良いでしょう。

なぜなら、産婦人科で妊娠の確定が行えるのは、超音波検査で胎嚢が確認できる妊娠4週の後半~5週以降だからです[*5]。早く病院を受診したからといって、早く妊娠を確定できるわけでもないので、妊娠検査薬は焦らずに適切なタイミングで使用しましょう。

ただし、初めての妊娠で不安が強かったり、体調にいつもと違うところがあったりする場合は我慢せずに受診してください。

妊娠しているのに、妊娠検査薬が陰性になる可能性もある

なお、本当は妊娠しているのに、通常より排卵が遅れたなどの理由で、推奨されている期間に使用したにもかかわらず、妊娠検査薬の結果が陰性になってしまう可能性もありえます。

妊娠検査薬を使用してみて陰性であったとしても、その後、やはり生理が来ないのであれば、この場合も1週間後に再度、検査してみましょう。

まとめ

妊娠を待ち望むあまり、フライングで検査したくなる気持ちはとてもよくわかります。しかし信頼性の高い検査結果を得たいのなら、推奨されているタイミングを守って使用することが大事です。また、妊娠検査薬で陽性が出たら、産婦人科を受診しましょう。

(文:山本尚恵/監修:齊藤英和先生)

※画像はイメージです

参考文献

[*1]メディックメディア「病気がみえる vol.10 産科 第4版」P.24 -25

[*2]メディックメディア「病気がみえる vol.10 産科 第4版」P.94

[*3]メディックメディア「病気がみえる vol.10 産科 第4版」p.35

[*4]日本産婦人科医会:1.生化学的妊娠(Biochemical pregnancy)の扱い方

[*5]Baby+お医者さんがつくった妊娠・出産の本 p.8 日本産科婦人科学会監修

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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