妊娠 妊娠
2021年08月17日 15:07 更新

【医師監修】着床はいつ?症状はあるの?完了サインの確認方法

妊娠したかどうか、気になって仕方がない人にとって、着床はいつ起こるのか、身体に何か変化や症状があるのかは確認しておきたいところですよね。ここでは、そもそも着床とはいったい何なのか、着床によって感じるかもしれない体の変化、着床したかどうかきちんと調べる方法などについて解説します。

着床完了のサインはあるの?

着床完了のサインはあるの?症状は?と考える女性
(イラスト:mico Ꮚ•ꈊ•Ꮚ @gogo_aokun

着床が起こって初めて「妊娠が成立した」ことになります。「着床が完了した」ということを何か症状や体の変化から知ることはできるのでしょうか?

着床の完了を自覚するのは難しい

着床は受精卵が子宮の内膜にくっつき、入り込んでいくことです。受精卵が完全に子宮内膜に潜り込んで「着床が完了した」ということになりますが、着床の完了を症状から自覚するのは難しいです。

ただ、着床が起こるころに感じる可能性がある症状はいくつかあるので、このあと解説します。

着床するころに感じることがあるサイン

着床についてスマホで調べる女性
Lazy dummy

ここでは、着床するころに起こるかもしれない体の変化について、いくつか紹介します。

着床出血

受精卵(胚盤胞)が子宮内膜に潜り込んでいくとき、そこから少し出血することがあります。これは「着床出血」と呼ばれます。

着床出血は、着床が起こるころ、つまり妊娠週数で言うと妊娠3~4週ごろ、妊娠していない場合で考えると生理予定日かそれより少し早いくらいの時期に起こります。ただし、排卵の時期はストレスなどの影響で変動するので、いつもの生理と同じくらいの時期に起こることもあります。

着床出血の量は普通、生理より少なく、続いても3日程度で治まることが多いと言われています。「いつもより生理が早く来た」「生理にしては量が少ない」と感じたら、着床出血の可能性もあります。

ただし、着床出血は着床すると必ず起こるというものではなく、着床出血が見られるのは、すべての妊娠の8~25%と言われています[*1]。つまり、着床していても出血はない人のほうが多いということです。

おりものの変化

妊娠していないときは、生理前にエストロゲンという女性ホルモンの分泌量がいったん下がりますが、着床で妊娠が成立するとその分泌量は減らず、むしろ妊娠期間中にわたって増え続けます

エストロゲンの分泌量が多くなると、おりものは増える傾向にあります。そのため、妊娠するとおりものが増えたと感じる人が多いようです。ただし、おりものの量はもともと個人差が大きいため、増えたと感じない人もいます。

熱っぽさ

通常、生理前の基礎体温は「高温期」といって「低温期に比べて0.3~0.5℃高い状態」です。生理が起こる直前になると基礎体温は急に下がり、低温期に入ります。一方、着床が起こり妊娠成立すると、体温の低下は起こらず、高温期が17日以上続きます。

これはやはり女性ホルモンであるプロゲステロンの分泌量が、妊娠により増えていくことによる影響と言われています。プロゲステロンの分泌増は、眠気やだるさを引き起こすこともあると言われているので、着床後になんとなく風邪っぽい、熱っぽい、だるい、眠気といった症状を感じる人がいても不思議ではありません。

頭痛、吐き気

また、プロゲステロンには血管を拡げる作用があり、そのために脳内の血管が拡張すると、周囲の神経を刺激し頭痛を起こすことがあるとも言われています。これも、着床によるプロゲステロンの分泌量増加で起こる可能性がある不調のひとつです。

さらに、妊娠による不調で有名なのが「つわり」ですが、人によってはつわりのような吐き気を着床後に覚える人がいるかもしれません。

つわりがなぜ起こるか、実ははっきりとはわかっていませんが、着床すると絨毛から分泌されるようになる「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」というホルモンの影響が大きいのではないかと言われています。

hCGの分泌量は、妊娠8~10週にピークとなりますが、実は妊娠のかなり早い段階から分泌が始まっているので、その影響で食欲減退や吐き気を感じる女性がいてもおかしくはなさそうです。

ただし、普通、つわりは「妊娠5~6週(妊娠5週が、妊娠していない場合の生理予定日翌週)ごろ」から始まり、「8~10週ごろ」にピークとなり、「12週ごろ」から軽減してくる人が多いと言われています。

立ちくらみやめまい

妊娠初期には、立ち上がった時に血圧が下がりすぎるために起こる「立ちくらみ」や「めまい」が起こりやすいものです。これは起立性低血圧によるもので、妊娠すると血管の収縮や拡張が不安定になるために起こると言われています。

立ちくらみやめまいも、着床を境に起こすようになったと感じた人がいても不思議ではない変化です。ただし、「立ちくらみ」や「めまい」を引き起こす原因は妊娠だけではなく、貧血や低血糖などによっても起こります。



他にも、着床後に体に起こるかもしれない変化には、胸の張りや便秘、イライラなどさまざまなものがありますが、ここまでに挙げたものと共通して言えるのは、それらの兆候が見られたからといって、「症状のみから着床したと判断することはできない」ということです。これらの症状の原因は妊娠に限らず、またもともと個人差が大きいので感じ方は人それぞれだからです。

次の章では、実際に着床したかどうか確定させるにはどうしたらよいかを解説します。

着床・妊娠を確定するまでの流れ

妊娠検査薬
Lazy dummy

ここからは、着床したかどうかを知るためにはどうすれば良いかを解説します。

市販の妊娠検査薬を使う

つわりの項でも説明しましたが、着床が始まると、胚盤胞は絨毛という組織からhCGというホルモンを分泌し始めます。hCGは妊娠を維持するために欠かせないホルモンで、妊娠していない女性や男性では普通、分泌されません。

尿中にhCGが一定以上含まれるかどうかで妊娠の可能性を判定するのが、「妊娠検査薬」です。hCGは着床直後から分泌され始めますが、妊娠5週ごろになると通常の妊娠検査薬で判定できるほど尿中に排出されるようになります。妊娠5週は、生理予定日の週の翌週です。このころになったら妊娠検査薬を使ってみましょう。

超音波検査を受ける

妊娠検査薬で陽性が出たら、産婦人科を受診して超音波検査を受け、妊娠を確定してもらいましょう。妊娠検査薬では着床している可能性が高いか低いかはわかりますが、陽性だったとしても胚盤胞がきちんと子宮内に着床したかどうかまではわからないからです。

産婦人科では、超音波を発するプローブを腟に入れて行う「経腟超音波検査」で調べてもらえます。この検査で、胚盤胞が子宮内に着床しているかどうかがわかります。

また、早ければ妊娠5週のはじめ、遅くとも6週末には胎児の心拍が確認できるので、子宮内で赤ちゃんが育っていることが確認できます[*5]。

そもそも着床とは?

排卵・受精・着床までのながれ

着床とは、卵管で卵子と精子が出会い受精した後、子宮内へと移動して「子宮内膜に潜り込む」現象のことです。これが起こってはじめて、妊娠が成立したということになります。

受精卵は、卵管から子宮内部に移動しながら受精約30時間後には細胞分裂をはじめ、受精後4〜6日頃には細胞数が数百個以上の「胚盤胞」という状態になります[*1]。そして、子宮内にたどり着いた胚盤胞は子宮内膜にもぐり込んで根を張り、周囲から栄養を得るようになります。

排卵から妊娠までの流れ

着床によって妊娠が成立すると説明しましたが、着床が起こるまでにどんな出来事があるのか、もう少しくわしく知っておきましょう。

このあと、(1)排卵、(2)受精、(3)着床、(4)妊娠 という順で解説していきます。

(1)排卵

「排卵」は、卵巣の中で成熟した卵胞(卵子を1つずつ包んでいる袋のような組織)から、卵子が排出されることです。卵巣の機能に異常のない妊娠適齢期の女性では、生理周期ごとに通常1個ずつの卵子が排卵されています。

排卵が起こるためには、エストロゲンという女性ホルモンがきちんと分泌されていることが大切です。卵胞は成長する過程でエストロゲンを分泌するようになりますが、この分泌量が一定量を超えることがきっかけとなって、卵胞から卵子が排卵されるからです。

卵胞から飛び出した卵子は、卵巣からも離れ、腹腔内に排出されますが、子宮上部にから左右に伸びている「卵管」のさらに先端にある「卵管采(らんかんさい)」という房状の器官にキャッチされ、卵管へと移動します。

(2)受精

さて、卵子が卵巣から排卵されるころ、精子はどこにいるのでしょうか? 排卵より前に性交した場合で考えてみましょう。腟から女性の体内に入った精子は、子宮の内部を進み、卵管へと到達します。そして、卵管采の近くにある拡がった部分(卵管膨大部)で卵子を待ちます。

ここに排卵で卵管に吸い込まれた卵子が到着し、精子と出会います。これが「受精」です。ちなみに、腟に射精されたとき、精子は2~4億個も排出されていますが、卵管膨大部までたどり着けるのはそのうち60~200個ほどと言われています[*1]。

なお、精子が進む速度は1分間に2~3mmほど[*2]。性交後、数時間で腟から卵管膨大部に到達します。精子は性交後約3日間〜最長で5日間、女性の体内で生存していると言われています[*3]。

一方、卵子の寿命は約1日しかないので、さきほど説明した流れのように、妊娠するためには卵子より先に精子が卵管膨大部で待っている状態が望ましく、排卵日の前日や前々日に性交すると妊娠しやすいと言われています[*4]。

(3)着床

卵管膨大部で受精すると、受精卵は卵管を通って子宮内へと移動し始めます。移動と同時に、受精卵は細胞分裂をし始め、受精後約30時間には2細胞、約40時間後には4細胞にと倍々で細胞数が増えていきます。受精後4~6日には胚盤胞という状態になります。

このころの子宮内膜は、卵子を包んでいた卵胞が排卵後に分泌するプロゲステロンの作用で、胚盤胞が着床しやすいよう厚く、柔らかく変化しています。子宮内膜にこの変化が起こらないと、胚盤胞は子宮にうまく着床できません。

このように胚盤胞が着床しやすい状態に子宮内膜が変化している時期は限られていて、排卵が起こる前にあった生理から数えると、生理19~22日ごろと言われています[*1]。

子宮内膜に入り込んだ胚盤胞は、絨毛という組織を根のように張り始め、子宮内膜から栄養などを取り入れられるように準備します。着床は妊娠3週のはじめごろから始まり、1週間ほどで完了します[*1]。

(4)妊娠

着床した胚盤胞は、まず子宮内膜に絨毛という根っこのような組織を伸ばしていきます。これは子宮と胚盤胞をつなぐための組織で、いずれ胎盤へと成長していきます。

同時に、胚盤胞の中では、いずれ赤ちゃんになる部分や赤ちゃんに渡すための栄養を蓄える袋などの組織が分かれてきます。さらに、赤ちゃんになる部分は、「皮膚や脳・神経など」「骨や筋肉・血管など」「胃や腸などの消化管」の大きく3つに分かれてから成長し始め、そのあとおよそ9ヶ月にわたって胎盤とへその緒を通してママから酸素や栄養などを受け取りながら、それぞれぐんぐん育っていきます。

なお、妊娠期間は、

【1】妊娠初期:妊娠0~13週(妊娠1ヶ月~4ヶ月前半)
【2】妊娠中期:妊娠14~27週(妊娠4ヶ月後半~7ヶ月)
【3】妊娠後期:妊娠28~39週(妊娠8ヶ月~10ヶ月)

の3つに分けられます。

着床の異常・妊娠の不成立について

腹痛のある女性
Lazy dummy

妊娠検査薬で陽性だと「妊娠した!」とうれしくなりますね。でもその後、産婦人科で超音波検査を受けることも大切です。なぜなら、子宮以外の場所に着床する「異所性妊娠」や「流産」などが起こることもあるからです。

異所性妊娠(子宮外妊娠)

「異所性妊娠(子宮外妊娠)」とは、子宮の適切な場所以外に胚盤胞が着床してしまうことで、自然妊娠のうち1~2%に起こると言われる、けして珍しくない異常です[*1]。

異所性妊娠は、胚盤胞が着床した場所によって、「卵管妊娠」「腹膜妊娠」「卵巣妊娠」「頸管妊娠」の4つに分けられますが、その多くが「卵管妊娠」です。また、卵管の中でも「卵管膨大部」に受精卵が着床してしまうことがもっとも多いと言われています[*1]。

異所性妊娠では、残念ながら妊娠を継続することはできません。そればかりか妊婦さんの命にかかわる事態を引き起こすことがあるので注意が必要です。着床した箇所が破裂することで大量出血し、出血性ショックを起こすことがあるからです。

異所性妊娠でもっとも多い卵管妊娠で症状が現れるのは「妊娠6週がもっとも多い」と言われている[*1]ので、妊娠検査薬で陽性が出たらできるだけ早く、どこに着床しているかを超音波検査で確認してもらう必要があります。

超音波検査で異所性妊娠であることがわかったら、子宮などの状況にもよりますが、薬や手術などによる治療を受けることになります。場合によっては慎重に経過観察が行われることもあります。

流産

妊娠が22週未満で終わってしまうことを「流産」と言います。妊娠が自然に中断される場合を「自然流産」、人工的に妊娠を中絶することを「人工流産」といいますが、実は自然流産も珍しいことではありません。

自然流産は全妊娠の約15%に起こるといわれており、そのうち約8割以上が妊娠12週未満に起こる早期流産です。そして、この早期流産の約半分は「受精卵の中に、もともと胎児が存在していない(枯死卵)」ことが原因といわれています[*6]。

「(4)妊娠」で、着床した胚盤胞の中では、いずれ赤ちゃんになる部分やその他の組織が分かれて育っていくと説明しましたが、着床した胚盤胞が枯死卵であった場合は、残念ながら、いずれ赤ちゃんになる組織がはじめから存在しない胚盤胞であったということです。

この場合、超音波検査で確認すると、赤ちゃんを包む袋状の組織である「胎嚢」は子宮内膜に見えますが、その中にいずれ胎児となる「胎芽」や栄養を蓄えている袋である「卵黄嚢」が見えません。「胎嚢」は早ければ妊娠4週後半から確認できる場合があり、その後、妊娠5週後半~6週前半になると、正常な妊娠であれば、胎嚢の中に「胎芽」が確認できるようになってきます[*7, 8]。

ほかにも流産の原因はあり、いずれにしても妊娠初期は流産しやすい時期です。なお、妊娠検査薬で陽性と判定されたにもかかわらず、超音波検査で胎嚢を確認する前に流産してしまうこともあり、「化学流産(生化学妊娠)」と呼ばれています。これも珍しいことではなく、健康な男女のカップルでも30~40%という高い頻度で起こっていると言われています[*9]。

まとめ

着床して妊娠した女性とそのパートナー
Lazy dummy

早く妊娠したい人にとって、着床したかどうかは毎月とても気になることですよね。ただ、ここで説明した通り、着床の有無を体調の変化だけから知ることはできません。はやる気持ちを抑えて、まずは適切な時期になったら妊娠検査薬を使ってみましょう。そこで陽性と判定されたら、あまり放っておかず、病院で超音波検査を受けてください。

ただ、超音波検査も時期が早すぎると、赤ちゃんが本当にお腹の中にいるかどうか確認することができません。無事に心拍が確認できるまで緊張の時期が続きますが、気持ちを落ち着けてその時を待ちましょう。

(文:マイナビ子育て編集部/監修:佐野 麻利子 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]病気が見えるvol.10産科, p.17-21,94, メディックメディア, 2018.
[*2]神奈川県 丘の上のお医者さん 妊娠のしくみ
[*3]アメリカ産科婦人科学会 Fertility Awareness-Based Methods of Family Planning
[*4]Wilcox AJ et.al. Post-ovulatory ageing of the human oocyte and embryo failure. Human Reproduction 13: 394–397, 1998
[*5]日産婦誌第59巻 第6号「妊娠初期の超音波診断」
[*6]南山堂「ウィリアムス産科学」(原著24版)p.419
[*7]篠塚憲男(胎児医学研究所)日獨医報57巻1号, 2012「妊婦健康診断-超音波診断の役割―」
[*8]日本産婦人科医会 産婦人科ゼミナール~産科一般超音波検査・初期編~
[*9]日本産婦人科医会:1.生化学的妊娠(Biochemical pregnancy)の扱い方

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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