【医師監修】つわりで点滴が必要なのはどんなとき?妊娠悪阻の判断と治療方法

【医師監修】つわりで点滴が必要なのはどんなとき?妊娠悪阻の判断と治療方法

妊娠するとつわりに悩まされる妊婦さんも多いですね。つわりは一般的には妊娠中期ごろまでにおさまる一過性のものですが、悪化して「妊娠悪阻(にんしんおそ)」という状態になると、ママの体だけでなくおなかの赤ちゃんにも影響することがあります。今回は、妊娠悪阻の違いについて、また症状がひどい場合に受ける点滴について解説します。


この記事の監修ドクター
産婦人科医 太田寛先生
アルテミスウィメンズホスピタル産婦人科(東京都東久留米市)勤務。京都大学電気工学科卒業、日本航空羽田整備工場勤務。東京医科歯科大学卒業後、茅ヶ崎徳洲会総合病院、日本赤十字社医療センター、北里大学医学部公衆衛生学助教、瀬戸病院を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士、インフェクションコントロールドクターICD)、女性のヘルスケアアドバイザー、航空級無線通信士

「つわり」と「妊娠悪阻」の違いは?

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「つわり」を経験する妊婦さんはたくさんいますが、「妊娠悪阻」は妊婦さんでもどのようなものかよくわからない、という人もいるようです。まずは、「つわり」と「妊娠悪阻」の違いを知っておきましょう。

つわりとは、妊娠初期の消化器症状

つわりは妊娠中に特有の消化器症状で、妊婦さん全体の50~80%が経験するといわれています。おもな症状は、気持ち悪さ、嘔吐、食欲不振など。原因は妊娠によるホルモンバランスの変化やストレスなど、いくつか考えられます。起こるのは 妊娠初期の5~6週ごろからで、たいていは12~16週ごろまでには自然におさまっていくでしょう。

「妊娠悪阻」とは、重症化したつわりのこと

「妊娠悪阻」とは、つわりが重症化した状態をいいます。妊娠悪阻になると、食事がとれない、度重なる嘔吐、極端な体重減少、脱水などの状態に陥ります(詳しくは後述します)。

つわりが妊婦さんの50~80%に起こるのに対して、妊娠悪阻になるのは妊婦さん全体の0.5%~2%程度です[*1]。経産婦より初産婦に起こりやすいのですが、重症化するのは経産婦に多いことがわかっています[*1]。

「妊娠悪阻」と診断されるのは、どんなとき?

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つわりは妊娠中によくある症状であるのに対して、妊娠悪阻は治療が必要な病気の一つです。妊娠悪阻は、妊娠するといきなりひどい症状が現れるわけではなく、徐々に悪化していくのが特徴です。どのような場合に妊娠悪阻と診断されるのか、見ていきましょう。

「妊娠悪阻」の症状は、段階的に悪化

妊娠悪阻の症状は、段階によって第1期~3期の3つに分けられます。

第1期 気持ち悪い状態が続き、嘔吐をくり返す

空腹時・満腹時にかかわらず気持ちが悪く嘔吐し、食事がとれなくなってきます。脱水を起こすと、吐いたものに胆汁や血液が混じることもあり、口の中が乾いたり、皮膚が乾燥してカサカサしてきたり、便秘をすることもあります[*2] 。

第2期 嘔吐に加えて、代謝異常による全身症状が現れる

体重が減って口の中の渇きがひどくなり、皮膚の乾燥も目立つようになります。また、軽い黄疸の症状が出て皮膚が黄色っぽくなる、熱が出る、頻脈(心拍数が1分間に100以上)になる、おしっこの量が極端に減る、タンパク量が出るなどのことが起こります[*2]。

第3期 脳症状や神経症状が現れてくる

この時期になると体重がかなり減ってしまい、発熱や頻脈のほか、肝機能障害から黄疸が見られることもあります。

また、ビタミンB1不足が原因で「ウェルニッケ脳症」になると意識障害を起こす、昏睡状態になる、眼球が動かなくなる、体がふらついたり手足が思い通りに動かせなくなる、などの症状がみられます。放置すると母子の命にかかわる重大な病気なので、上記の症状がみられる場合には大至急受診する必要があります[*2]。

「妊娠悪阻」と診断されるのはどんなとき?

妊娠悪阻とつわりの違いに関し、実際にははっきりとした線引きはなく、「〇〇が見られたら妊娠悪阻」というような明確な診断基準もありません。
一般的には、ほかの病気の疑いがないかを確認したうえで、以下のような症状が続いている場合に妊娠悪阻と診断されることとなります。

・一日中何度も吐く
・食事がとれず水も飲めない
・体重が元の5%以上減ってしまっている
・脱水によって尿の量が減る

上記のような症状のほか、血液検査や尿中ケトン体が陽性などの結果も含めて総合的に判断されます。

「妊娠悪阻」の治療はどんなことをするの?

妊娠悪阻と診断されたら、症状の重さに応じた治療が必要になります。基本は入院して、食事療法や点滴などの治療が行われます。

入院して休養する

つわりと同じく、妊娠悪阻の症状は精神的なストレスにより、重くなったりさらにつらく感じたりすることがあります。そこで、入院してゆっくり体と心を休めることもあります。

食事は少しずつ何回かに分けて食べる

食事や水分摂取は、栄養バランスなどを気にせず、好きなものや口にできるものが中心でかまいません。食べ方は、少しずつ、回数を多くすることがポイントです。

点滴による輸液療法を行う

気持ち悪さや嘔吐がひどく、食事も水分もがまったくとれないときには、点滴による輸液療法を行います。点滴が十分行われれば、脱水は改善されます。

ひどい気持ち悪さや嘔吐が続くときには、吐き気止めなどの薬を服用する場合もあります。入院するような重症の場合には、薬のリスクよりも、悪阻が長引くことのリスクの方が高いと判断することが多いです。もちろん、妊娠初期は胎児の体のさまざまな器官が形成される大事な時期のため、安全が確認されている薬を必要最小限だけ使われます。

さらに重症で、栄養を取れない期間が長引くようなら、栄養も点滴から注入することもあります。

つわりを重症化させないためにはどうしたらいい?

妊娠悪阻にならないためには、早めに対処することが大切です。つわりの症状がひどい場合には、以下のような方法を試してみましょう。

・飲めるものをこまめに飲んで水分補給をし、脱水を予防する。
・吐いてしまったとしても、食べられるものを少しでもいいので食べるよう心がける。吐き気があるときは、ゼリーやアイスクリーム、プリンなどの冷たいものや、水分の多い果物類が食べやすい。
・不安やストレスを抱えないよう、誰かとおしゃべりする、ゆっくりお風呂に入る、などで上手に気分転換する。

つわりや妊娠悪阻で点滴されるのはどんなもの ?

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妊婦さんの状態に応じて5~10%のブドウ糖輸液などを1日に1,000~3,000ml点滴します。点滴は、脱水が改善するか、嘔吐がすっかりおさまるまで続けられます。

点滴はなぜするの?

口から食事や水分がとれず、脱水症状がみられている、体重が著しく減少(5%以上)している、重い飢餓状態(きがじょうたい)で尿中ケトン体陽性である、などの場合は、点滴で輸液治療する必要があります。

点滴により、体内から失われた水分や電解質などを補給して適正な状態に戻します。

点滴の中には何が入っている?

点滴に使われるのはブドウ糖や電解質を補充できる輸液で、必要に応じて1日に1,000~3,000mlを点滴します。食事から糖分がとれない状態が続くとケトン体が作り出されますが、ケトン体は吐き気を誘発するため、ブドウ糖の補給は吐き気を抑えるためにも有効です。最重症で、体重が大きく減っている場合には、エネルギーも補充できるような脂肪製剤などが含まれることもあります。

また、ウェルニッケ脳症を起こすリスクを回避するためのビタミンB1や、妊娠悪阻の症状を軽くするのに有効とされるビタミンB6が加えられることもあります。

つわりでも点滴はしてもらえる?

大幅な体重減少などはなく、妊娠悪阻とは診断されない程度のつわりでも、点滴はしてもらえるのでしょうか。

これについては施設によって対応が異なりますが、一日中嘔吐が続き、水分摂取が難しい場合などは、点滴療法が検討される場合も多くあります。ますはかかりつけの産科で、今のつらい状況を相談してみましょう。

まとめ

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つわりによる吐き気や嘔吐の症状があっても、すぐに点滴治療が必要になるわけではありません。まずは、妊娠悪阻の予防のためつわりを悪化させないことが大切です。この時期にはまだ、母体の栄養状態が赤ちゃんに大きな影響を及ぼすことはまずありません。食事が十分とれなくても心配せずに、できるだけこまめに水分をとったり、食べられるものを少しずつでも食べるなど、自分でできることを試していきましょう。

つわりの重い症状が続いて飲んだり食べたりができず、体重も減ってしまうようなときには、我慢せずに早めにかかりつけの産科で相談しましょう。妊娠悪阻と診断がついた場合でも、点滴をはじめ適切な治療を受ければ症状が軽くなることが期待できます。

(文:村田弥生/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1] 「産婦人科診療ガイドライン―産科編2017」(日本産科婦人科学会)
http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2017.pdf
[*2]妊娠悪阻の診断と治療/妊娠悪阻の診断と治療, 日産婦誌, 1996.
http://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/48/1/KJ00001751576.pdf

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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