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2023年01月16日 15:14 更新

【医師監修】つわりが起こる原因とすぐできる4つの対策|つわりはなぜ起こる?なったらどうする?

吐き気や嘔吐など、妊娠初期のつわりの不快な症状はなぜ起こるのでしょうか? つわりが軽かった経験談を聞いたりすると「なぜ私だけこんなにつわりがつらいの?」と落ち込んだりすることも。でも、決してあなたが悪いわけではありません! 今回は、妊婦さんを悩ますつわりの原因とすぐに実行できる具体的な対策について解説します。

つわりとは?

吐き気のつわりに苦しむ妊婦のイメージ図
Lazy dummy

妊娠初期の吐き気や嘔吐、食欲の低下などの消化器症状を中心とした体調不良や症状が出る状態を総称して「つわり」と呼びます。特定のにおいが苦手になったり、限られた食べ物しか受け付けなかったりということもあるでしょう。

つわりは、妊娠初期の女性の50〜80%[*1]が経験するとされているものの、症状や程度は個人差が大きく、また、同じ人でも妊娠の度にその症状や程度は違うことがあります。

一般的には5〜6週ごろから始まり、12〜16週ごろまでの一過性の症状で、症状は徐々に軽減しておさまるケースが多いものの、長引く場合もあります[*1] [*2]。

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妊娠初期のつわりについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎つわりの時期はいつから?
関連記事 ▶︎つわりのピークはいつからいつまで続く?
関連記事 ▶︎妊娠初期につわりが急になくなる理由は? 流産? 受診すべき?

つわりの原因って?

つわりの原因はまだ詳しく明らかになっていませんが、妊娠によって起こる「ホルモン分泌の変化」「代謝の変化」などいくつかの要因が複合的に影響していると考えられています。
中でもつわりを発生・悪化させる主な要因として考えられているのは以下のものです。

1. hGCホルモンなどの分泌増の影響

妊娠によって分泌量が増えたホルモンが脳の「おう吐中枢」という部分を刺激し、吐き気やおう吐をまねくと考えられています。特にhGCホルモンの分泌量が増える時期がつわりの発症時期と重なり、分泌量が減る時期につわりが軽減するため、つわりに関与していると考えられています。

妊娠・出産とホルモンの変化イメージ

2. 女性ホルモンの消化器への影響

妊娠によって分泌が増える女性ホルモンのひとつ、プロゲステロンの分泌が高まると全身の筋肉が緩むことから、消化器での食べ物の消化や腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が低下することとなり、消化器症状をまねきます。

3. その他、精神的ストレスなども関与

ホルモン以外にも妊娠や出産、生活への不安、仕事や夫婦・家族間の問題など、妊婦さんの背景にある精神的ストレスは、つわりによる身体的ストレスとともにつわりを悪化させると考えられています [* 3]。

「ストレスがなかったらつわりが起きない」「ストレスを感じると必ずつわりがひどくなる」ということではありませんが、肉体面だけでなく精神面でも妊婦さんの負担を減らす必要があると言えるでしょう。

つわりは、妊娠によって起こる急激な心身の変化に、女性自身の体調が適合するまでの間に起こる体調不良と考えるとわかりやすいでしょうか。
つわりが赤ちゃんに直接影響することはありませんが、症状が悪化し妊娠悪阻(にんしんおそ)という病気に進んでしまうと母子の生命の危険につながるリスクがあり、その場合は治療が必要となります。

(松峯先生)

原因から考えるつわり対策は?

考える女性
Lazy dummy

つわりがつらいときには、次のような工夫を試してみましょう。

対策1. 食べるタイミング・もの・量は自分のペースで

食べられるものを食べられるとき、食べられる分だけ食べましょう。この時期は十分に食べられなくても赤ちゃんに影響はないので無理をしないで!
なお、「妊娠したら2人分の食事」などと言いますが、その必要はありません。妊娠初期には1日50kcalをプラスすることが推奨されていて[*4]、50kcalの目安は食べ物でいうとバナナ1/2本程度となります[*5]。

ただし、脱水には気をつけ、栄養補給で心配なことがあれば主治医に相談してください。

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つわり中の食事について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎つわり中の食事のコツと食べやすい食品
関連記事 ▶︎つわり対策で私がイケた食べ物21選
関連記事 ▶︎つわりの時に頼りたいコンビニの食べ物

対策2. 消化のよいものを小分けにして食べる

消化器の負担を軽くする食べ方として次のようなことを試してみましょう。これは、妊娠後期に起こりがちな消化器不調対策にもなる食べ方です。

・ よく噛んで、ゆっくり食べる
・ 生よりよく煮込んだものなど、消化しやすい料理を選ぶ
・ 揚げ物など脂質が多く、消化に時間がかかるものを食べすぎない
・ 1日3回ではなく、5、6回に分割して食べる

対策3. 仕事も家のことも無理せず、心も体も休める

仕事や家事の無理をしすぎない注意をして、心身を休めることを心がけましょう。

また、ストレスは1人で抱え込まない、がまんしないことが大切です。不安や悩みがあったら身近な信頼できる人や、妊婦健診の機会などに主治医や助産師に相談をしましょう。

妊婦健診の目的のひとつは「妊婦が医師や助産師などとコミュニケーションをとり、妊娠・出産・育児について気軽に相談できる機会となることで、妊娠期間中を安心して過ごせるようにする」とされています[*6]。「医療機関で相談できるのは体のことだけ」などとは思わず、妊娠にまつわる不安に思うこと・つらいと思うことを伝えてみましょう。

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妊娠中のストレスについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎妊娠中のストレス源9選!おすすめの発散法とは
関連記事 ▶︎妊娠中の情緒不安定はいつまで続く? 解消法やパートナーへの対処法

対策4. がまんは禁物、早めに相談を

医師と患者の対話のイメージ画像
Lazy dummy

食事や水分を受け付けず、おう吐を繰り返してしまうような場合は、がまんせず、早めにかかりつけの産科の医師や助産師に相談しましょう。電話で相談すれば、急いで受診したほうがいいのか判断を仰げますし、自宅での対応方法を教えてもらうこともできます。

「つわりの時期には、妊婦さんがより妊娠を前向きにとらえ、症状が軽くなるよう、さまざまな相談にのっています。

吐き気をがまんして家族のために台所に立っている人も多いですが、たとえばつわりがあって特定の食べ物しか受け付けず、苦手なにおいを嗅ぐと吐き気をもよおすような状態で、家族の食べたい献立を調理するのは、想像以上に大変なことです。自分以外に料理を作る人がいればいいのですが、それも難しい家庭もたくさんあります。そんなときは、デリバリーサービスなどで家族それぞれ好きなものを食べることなどを提案しています。

コロナ禍前は、つわりについてパートナーなどの理解が乏しい場合には、健診に同行してもらって一緒に医師の説明を受けることを勧めていました。今なら電話で伝えるのもありですね。妊婦さんから伝えるよりも、医療者から直接伝えた方が納得しやすいこともありますので、こうした機会を利用してパートナーや家族にもよく理解してもらいましょう。」

(松峯先生)

まとめ

つわりの原因は明確なことはわかっていませんが、妊娠によって起きるホルモン分泌量などに加え、精神面の変化も関与していると考えられています。ホルモンの変化は妊娠経過において避けられない大切なことですので、なるべく気持ちを楽にしてこの時期を乗り切ってください。無理をせず、症状がつらく、生活に支障をきたすような場合には早めに産科を受診し、主治医や助産師から適切なケアや症状軽減のためのアドバイスを受けましょう。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1] 病気がみえるVol.10産科 第4版 , メディックメディア, 2018.
[*2] 「臨床婦人科産科 2018年 4月号増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド? いまのトレンドを逃さずチェック! 」, 医学書院, 2018.
[*3]「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」
[*4]厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
[*5]文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
[*6]厚生労働省「リーフレット“妊婦健診”を受けましょう」
産婦人科診療ガイドライン―産科編, 日本産科婦人科学会, 2017.
中井章人「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」東京医学社,2008

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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