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2022年12月12日 16:55 更新

授乳中にケーキって食べていいの? 乳腺炎になるって本当?【助産師監修】

「授乳中にはケーキは食べないほうがいい」と聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。なんとなく、「おっぱいが詰まって乳腺炎になりそう」と思っているママもいるかもしれませんが、本当にケーキは授乳中には食べないほうがよいのでしょうか。くわしく解説します。

授乳中にケーキなどの甘いものはNG?

カップケーキ
Photo by Bryam Blanco on Unsplash

赤ちゃんにおっぱいをあげる授乳期は、妊娠中に引き続き食べ物に敏感になりますよね。「授乳中にケーキを食べる」ことに何か問題はあるのでしょうか。

そればかり食べているのでなければ問題ない

よく、ケーキなどの脂肪が多い食品・乳製品・甘いものなどは、「ママが食べるとおっぱいが詰まる、乳腺炎になる」ので、授乳中は控えたほうがよいと言われることがあります。でも、実はこれにははっきりした根拠はありません。

「赤ちゃんに少しでも質のよい母乳をあげたい」という願いは世界共通のようで、国や地域ごとに伝統的に信じられている「言い伝えのようなもの」があります。

ところがこうした風説には「根拠がない」ことがほとんどなのです。ある国では授乳中は食べないほうがよいとされている食品が、別の国ではむしろ母乳育児に役立つとされていることもあります。

日本ではケーキのような高脂肪食はおっぱいを詰まりやすくするとよく言われてきましたが、現在ではこの説にもとくに根拠はないとされています。ですから、授乳中であっても「ママがときどきケーキを楽しむのはなんの問題もない」ことです。その理由はこのあと詳しく解説します。

ケーキを食べて乳腺炎になることはないの?

授乳する女性のイメージ

そうは言われてもまだ心配な人のために、現在明らかになっている乳腺炎のおもな原因を解説します。

ケーキでおっぱいが詰まると心配する必要はない

油っぽい食べ物がママの体に入ると、いかにもおっぱいの中で詰まりそうな感じがしますが、実は母乳に含まれる脂肪の大きさは乳管(乳房の中で母乳が通る管)の「およそ200分の1」のサイズしかありません[*1]。

また、ママの食事内容によって、この脂肪のサイズが大きくなることもないと言われています。つまり、ケーキを食べたことが原因で母乳中の脂肪が乳管に詰まるというのは、考えにくいことなのです。

乳腺炎の原因はおっぱいが乳房に残ること

乳腺炎の原因として明らかになっていることは、「乳房の中で母乳が滞る」ことです。

母乳は赤ちゃんがママの乳首を吸う刺激で出るホルモンが乳腺に働きかけることで、血液から作られます。また、この流れが繰り返されることで、その赤ちゃんに合った量の母乳がつくられるようになります。

そして、乳首を刺激されたり、ママが赤ちゃんのことを考えたりすると、やはりホルモンの働きで乳管がゆるみ、乳首から母乳が出るようになります。

ですから、赤ちゃんが適切に乳首に吸い付き、必要な量をごくごくと飲めていれば、乳房の中に母乳が滞ることはありません。ところが、「赤ちゃんが飲み切れないほど乳房に母乳が溜まっている」「赤ちゃんが母乳を飲むのを妨げる何かがある」といった状況では、授乳後の乳房に母乳が残りすぎてしまうことがあるのです。

具体的には、

・授乳間隔が空きすぎた
(おしゃぶりの使用により赤ちゃんがあまり空腹を訴えない場合など)

・赤ちゃんの口の中に問題がある

・授乳姿勢や乳頭・乳輪の含ませ方に問題がある

などの状況が考えられます。

乳腺炎になってしまったときの対処についてくわしくは、下記の記事を参照してください。もし、熱が出ていたり、授乳や搾乳で工夫してもよくならない場合は、早めに受診してくださいね。

授乳中のケーキで気を付けることはある?

チョコレートケーキ
Photo by Waldemar Brandt on Unsplash

さて、授乳中にケーキを食べて乳腺炎になると心配する必要はないことはわかりましたが、その他に気を付けたほうがよいことはないのでしょうか。

ブランデー、ラム酒……洋酒入りのケーキもOK?

ケーキのなかには、風味づけにお酒を使用したものもありますよね。飲酒するとアルコールによって母乳の分泌が悪くなったり、赤ちゃんの運動発達に悪影響を及ぼす可能性があるので、授乳中の飲酒はなるべく控えたほうがよいと言われています。

ただ、授乳中にアルコールを少しでも口にすると、赤ちゃんにすぐ悪影響が現れるということではありません。アルコールの影響は人により異なりますが、飲酒の場合「ビールなら350ml・1缶くらい、ワインならグラス1杯程度」など最小限の量にし[*2]、「飲酒後2時間以上開けて授乳する」のであれば、そこまで心配しなくても大丈夫だろうと言われることもあります。

そもそもケーキのアルコール濃度は、飲料に比べて普通かなり低くなると考えられます。お菓子によく使われるブランデーやラムは、それ自体はアルコール度数40%前後の強いお酒ですが、少量混ぜる分には生地のアルコール濃度はかなり低くなります。また、焼く際にしっかり熱が加わっていれば、アルコールの大部分は揮発します。

ですから、授乳中であっても、たまに洋酒入りのケーキを食べる分には心配ないと考えられますが、大量に食べるのは栄養バランスの面からも避けましょう。また、心配なようなら、焼きあがった後にたっぷり洋酒をしみこませるようなタイプはごく少量にしておくか、食べた後時間をおいてから授乳すると良いでしょう。

抹茶、コーヒー、紅茶味やチョコレートケーキは?

抹茶やコーヒー、紅茶などを使用したケーキには、「カフェイン」が含まれます。授乳中はカフェインも摂り過ぎに注意が必要で、妊娠中と同様、「1日200~300mgを超えない」ようにすべきとされています[*3]。

つまり、通常の飲料として飲む場合は、

コーヒー:200mlのカップ1~2杯程度(カフェイン濃度60mg/100ml)

紅茶:200mlのカップ3杯程度(カフェイン濃度30mg/100ml)

抹茶:70mlの湯飲み4杯程度(カフェイン濃度48mg/70ml)

が上限となります。

ケーキのフレーバーとして入っている分には、上記の量を超えることはあまりないと考えられますが、あまり濃厚なものを大量に食べるのは、授乳中は避けたほうがよいかもしれません。

なお、チョコレートにもカフェインは含まれていますが、コーヒーなどの飲料に比べてかなり少ないので、これもあまり大量に食べ続けなければ授乳中に摂取しても問題ありません。
それぞれ、よりくわしくは下記の記事を参照してください。

食べるなら1日200kcalまでを目安に

間食(おやつ)を食べるなら、授乳中かどうかは関係なく、「1日200kcal程度」が適量と言われています。おやつばかり食べていると、朝食・昼食・夕食でバランスよく栄養摂取するのが難しくなってしまうので、ケーキの食べ過ぎには注意しましょう。

まとめ

ケーキを食べる女性

授乳中にもケーキは食べてよいのか、おっぱいが詰まったり、乳腺炎になったりする心配はないのかなどについて解説しました。授乳中だからといってケーキを控える必要はないことがわかっていただけたと思いますが、赤ちゃんのためというより、むしろママの健康を守るためにケーキばかり食べるのはおすすめできません。野菜や肉・魚、大豆製品、乳製品、海藻類など、さまざまな食品をバランスよく食べるようにしながら、授乳中もおいしいケーキを気兼ねなく楽しんでくださいね。

(文:マイナビ子育て編集部/監修:坂田陽子先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]水野克己、水野紀子:母乳育児の疑問 Mr.&Mrs.水野が一挙解決!, ペリネイタルケア 2019 vol.38 no.3(213)
[*2]母子栄養協会:授乳中のアルコールはどのくらい大丈夫?
[*3]内閣府「食品安全委員会 食品中のカフェイン」

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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