授乳中の牛乳はアレルギーに影響する!? 乳腺炎との関係は?【助産師監修】

授乳中の牛乳はアレルギーに影響する!? 乳腺炎との関係は?【助産師監修】

栄養豊富なイメージの「牛乳」ですが、授乳中は赤ちゃんにアレルギーを引き起こさないかや乳腺炎に関係しないか、心配している人がいるかもしれません。ここでは、授乳中に牛乳を飲むことが、これらの心配ごとと本当に関係があるのかどうかなどについて解説します。


この記事を解説してくれた先生
看護師、助産師、国際認定ラクテーションコンサルタント。 葛飾赤十字産院、愛育病院、聖母病院のNICU・産婦人科に勤務し、延べ3000人以上の母児のケアを行う。その後、都内の産婦人科病院で師長を経験。現在は東京で「すみれ出張助産院」を開業している。
HP:https://sumire-josanin.com/

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授乳中に牛乳を避けるとアレルギー予防になる?

「授乳中に牛乳を飲むと赤ちゃんが牛乳アレルギーになる」というような噂を耳にして、気にしている人がいるかもしれません。これは本当なのでしょうか。

ママが牛乳を避けてもアレルギーは予防できない

食物アレルギーの原因となる食品でもっとも多いのは「鶏卵」ですが、その次に多いのが「牛乳」です[*1]。

そのため、「赤ちゃんが牛乳アレルギーになったらどうしよう」と心配することがあるかもしれませんが、結論から先に言うと、牛乳アレルギーを予防するために、授乳中のママが牛乳を控える必要はありません

食物アレルギーによる症状がもっとも出やすいのは「皮膚」ですが、授乳中にママが該当する食品の摂取を控えることで「アトピー性皮膚炎」の発症を予防できるか調べた報告があり、牛乳、卵、ピーナッツについて、その効果はなかったことがわかっています[*2]。

また、厚生労働省でも、妊娠中・授乳中にかかわらず、「子供の⾷物アレルギーの発症を予防するために、⺟親が特定の食品を避ける必要はない」としています[*3]。

ただし、もし赤ちゃんに何か症状があって食物アレルギーの関与が疑われる場合は、医師の診断に基づいてママの食事制限を行う場合はあります。また、もともと牛乳アレルギーのあるママはもちろん摂取を控えましょう。

牛乳を飲むとおっぱいが詰まる!? 乳腺炎との関係は?

脂肪分の豊富な牛乳を飲むことで、「乳腺炎」を起こすことはないのでしょうか。

基本的には心配いらない

おっぱいの中で母乳が通る「乳管」が何らかの理由で狭まり、母乳が滞って炎症を起こすのがいわゆる「乳腺炎」です(うっ滞性乳腺炎)。

また、おっぱいに細菌が感染すると「急性化膿性乳腺炎」となりますが、うっ滞性乳腺炎から急性化膿性乳腺炎になることもあります。

このように、乳管が詰まると乳腺炎に発展することもあり、「おっぱいを詰まらせないために、授乳中のママは脂っこい食事を避けたほうが良い」と言われることがあります。でも、実はこれにははっきりした根拠はありません

母乳の中で脂肪は球の形をしていますが、この脂肪球は乳管の「200分の1」のサイズしかありません。また、ママが食べた食事の内容によって、この球がくっつき合ったり、大きくなったりすることもないと言われています[*4]。

つまり、牛乳含め、ママが食べたり飲んだりしたものが原因で乳管が詰まることは、基本的に考えにくいのです。

乳腺炎予防で大切なのは「赤ちゃんにしっかり飲んでもらうこと」

乳腺炎の予防で、ママが何を食べたり飲んだりするかよりも大切なのが、「赤ちゃんにしっかり母乳を飲み取ってもらう」ことです。乳腺炎のおもな原因は、「母乳が適切に排出されないことで起こる炎症」だからです。

そのため、

おっぱいが乳房に溜まっていないか

授乳時間と回数は適切か(おしゃぶりの使用などで間隔が空きすぎていないか)

赤ちゃんはきちんと母乳を飲めているか(授乳姿勢や吸着、赤ちゃんの口の中に問題はないか)

下着などで乳房を締め付けていないか

を日ごろからチェックし、解決しておくことが乳腺炎の予防には大切です。

また、ママに「疲れやストレス」が溜まっていると乳腺炎になりやすいので、授乳期はできるだけそうした状況を避けるのもポイントです。

牛乳は授乳期の栄養補給にぴったり

授乳中の牛乳に関する心配が減ったところで、今度は授乳中に牛乳を摂るメリットを紹介します。

不足しがちなカルシウムが手軽に摂れる

母乳には、赤ちゃんが育つのに必要な「カルシウム」が含まれています。

そのため、授乳中のママの体内からはカルシウムが失われていきますが、実は授乳期のママの腸は通常時よりカルシウムを吸収しやすくなっています。また尿から排泄される量も減るので、授乳期のママの体内では通常時より効率的にカルシウムが利用できるようになっています。

ただし、いくら効率的に利用できるとはいってもカルシウムの摂取量があまりにも少ないと、やはり赤ちゃんとママ自身の健康を保つことができません。日本人はもともとカルシウムの摂取量が足りていない人が多いので、そんな人では意識してカルシウムを摂取する必要があります。

そんなとき、カルシウムの摂取源として手軽なのが、「牛乳などの乳製品」。妊娠中に引き続き、授乳期にも牛乳や乳製品を摂ることは推奨されており、牛乳でいうと「1日にコップ1.5杯ほど」の摂取が授乳期には勧められています[*5]。

まとめ

ここでは、授乳中のママが牛乳を飲んだ場合、赤ちゃんの牛乳アレルギーや乳腺炎に関係するのかどうかなどを解説しました。授乳中に牛乳を飲んだからと言って、これらが起こるかもと心配する必要はほとんどないことがわかっていただけたと思います。赤ちゃんとママの健康にとっては、妊娠期に引き続き、授乳期もいろいろな食品をバランスよく摂っていくことが大切です。牛乳や乳製品の豊富な栄養を授乳中の食生活に上手に生かしていきましょう。

(文:マイナビ子育て編集部/監修:坂田陽子先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]国⽴研究開発法⼈ ⽇本医療研究開発機構(AMED):⾷物アレルギーの診療の⼿引き2020
[*2]Kramer MS, Kakuma R : Maternal dietary antigen avoidance during pregnancy or lactation, or both, for preventing or treating atopic disease in the child, Evid Based Child Health 2014 9 447-83.
[*3]厚生労働省:授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)
[*4]水野克己、水野紀子:母乳育児の疑問 Mr.&Mrs.水野が一挙解決!, ペリネイタルケア 2019 vol.38 no.3(213)
[*5]厚生労働省:妊産婦のための食事バランスガイド

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の指導を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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