「用件」と「要件」の意味の違いは? 使い方・例文・類語を解説
同じ読み方でも意味が異なる「要件」と「用件」。その意味や使い方の違いを把握していますか? 今回は「要件」「用件」の意味の違いや使い方、例文、それぞれの類語について解説します。
「用件」と「要件」は、どちらも「件」が入る混同されがちな言葉です。メールや書面に起こす時、どちらが適切か迷ってしまうことも少なくないのではないでしょうか。
この記事では、「用件」と「要件」の違いをまとめています。それぞれの意味や使い方、類語を知ってビジネススキルを高めたい方は要チェックです。
「用件」と「要件」の意味の違いとは
「用件」も「要件」も、同じ「ようけん」という読み方をする言葉です。
同音異義語として認識されていますが、意味合いはどのように違うのでしょうか。互いの意味を見比べながら、異なる点をひも解いていきましょう。
「用件」の意味は「行う・伝えるべきこと」
まず、プライベートでもなじみのある「用件」の意味からです。
ようけん【用件】
なすべき仕事。また、伝えるべき事柄。用事。「―を伝える」「すぐに―に入る」
(小学館『デジタル大辞泉』小学館)
「用件」とは、「行っておくべきこと」もしくは「伝えておくべきこと」を意味します。「用事」という言葉をイメージすると、意味を捉えやすいでしょう。
「要件」の意味は「必要条件・重要な用事」
次に、ビジネスシーンでもよく見る「要件」の意味は以下の通りです。
ようけん【要件】
1.大切な用事。
2.必要な条件。
(小学館『デジタル大辞泉』)
「要件」には、大きく分けて2つの意味があります。1つ目の意味は「重要な位置づけとなる用事」で、2つ目が「あるものを満たすために必要な条件」です。
用事という観点から見ると、「用件」と近しい意味を持っています。ただし、用事の重要度が定められていない「用件」に対し、重要度の高いことを示すのが「要件」です。
同等の意味を内包しているため混同しやすいといえますが、行う・伝えるべきことの重要さで使い分けると分かりやすいでしょう。
「用件」と「用事」の違い
「要件」と「用件」に加え、覚えておきたいのが「用件」と「用事」の違いです。同じく「用」の付く言葉ですが、「用事」には次のような意味があります。
ようじ【用事】
1.しなくてはならない事柄。用件。
2.大便・小便をすること。用便。
3.江戸深川の遊里で、芸娼妓が月経や病気、また私用などのさしさわりのために休むこと。
(小学館『デジタル大辞泉』)
大きく分けて3つの意味を持っていますが、一般的に用いられるのは「しなくてはならないこと」です。若干のニュアンス違いはあるものの、「用件」と言い換えられることから意味はほぼ同じといえます。
しかし、大きく違うのが相手に対して使うのか、自分に対して使うのかということです。「用件」は主に上司や先輩など、目上の人に対して「ご用件」と使うのに対し、「用事」はどちらかというと自分の行動を伝える時に使います。
「用件」は「相手が行うべきこと」で、「用事」は「自分が行うべきこと」と認識しておくと使い分けしやすいでしょう。
「用件」をビジネスで使う時の使い方・例文
「するべきこと」を意味する「用件」は、ビジネスシーンにおいて果たしておきたいこと、もしくは相手に伝えるべきことがある時に使用できます。
先述した通り、敬いたい相手に用いるのにふさわしい言葉のため、上司や先輩、取引先の人に使っても問題ありません。
ただし、内容がいかに重要かということは含んでいない言葉です。必ずレスポンスが欲しい時や、なるべく早く読んでほしい時は、メールや文書に「重要な要件」など一言添えて、重要度を示すことをおすすめします。
例文
次に、「用件」を使った例文を見ていきましょう。
ビジネスシーンにおいて、会社に来ていただいたお客さまや取引先の人に「どのようなご用件」「ご用件は何でしょうか」と尋ねるシーンは少なくありません。また、相手が不在で「用件を伝えてほしい」と伝言を頼む機会にも使ってみてください。
また、メールでは「用件のみで失礼します」や「用件のみで恐縮ですが」といった言い回しも有効です。これは「こちらの事情で詳しくはお話しできませんが、現段階で伝えておきたいことを知らせました」というニュアンスになります。
・取り急ぎ、用件のみですが失礼いたします。
・本日は、どのようなご用件でしょうか。
・重要な用件となりますので、なるべく早くご返信いただけると幸いです。
「要件」をビジネスで使う時の使い方・例文
「必要条件」そして「重要な用件」という2つの意味を持つ「要件」は、クリアするのに何かしらの条件が伴うシーンや、行うべきことが重要であると示すシーンに適しています。
「用件」と同じ感覚で、用事を表現する言葉として使えるのが「要件」です。メールや書類に「要件」と書くだけで、伝えたい内容が重要であるということが分かる便利さがあります。ビジネス上で大切な情報をやり取りする時に重宝するでしょう。
例文
続いて、「要件」の使い方について例文を交えチェックしていきます。
重要な用事を伝える、もしくは聞くという意味で使用できるものの、どちらかというと「条件」といった意味合いで用いられることが多い言葉です。
例えば、試験合格や卒業、ビジネスシーンでは企画を進めるにあたって、必須の条件がある場合などに活用できます。
とある物事を達成するのに必要な要素が揃ったという意味で、「要件を満たす」や「要件が整う」と用いてみてください。
・彼女は、試験合格における要件を満たしています。
・要件をなるべく手短にお話しください。
・企画を再スタートさせる要件は整いました。
「用件」の類語
「用件」は幅広いシーンで活用できる言葉ですが、状況によってさらにふさわしい言葉があるかもしれません。そこで次に、ビジネスシーンにも適した「用件」の類語を紹介します。
「所用」
「所用」とは、字のごとく、用いること・ものを意味する言葉です。
用事や用件という意味もあり、内容の重要度を問わず使用できます。「用件」の言い換え表現としても活用できるでしょう。
「用務」
行うべきことを意味する言葉の中でも、特にビジネスシーンで活躍するのが「用務」です。
「用務」とは、自分もしくは相手に課せられた業務を意味します。学校や会社で雑用を請け負う「用務員」も関連語です。
「務め」
「用件」より、行うべき度合いが強い場合は「務め」を用いるのも一手です。「務め」とは、果たさなければならないことを意味します。
任務や義務といった意味合いもあるため、仕事においてやるべきことと表現したい時に重宝するでしょう。
「要件」の類語
「要件」にも、近しい意味を持つ類語は存在します。「必要条件」という意味で使いたいけれど、「用件」と取り違えられそうな時の言い換え表現として役立つでしょう。
「条件」
「条件」とは、とある物事を成立させるために必要な要素、もしくは決定にあたって制約となる事柄を意味する言葉です。
「要件」を「必要な条件」という意味に絞り込むなら、ストレートに「条件」を使ってみてください。
「要点」
「要点」は、必要な条件の中でも、より中心となる部分を指す言葉です。「要件」の中に「要点」があるとイメージしてもいいかもしれません。重要なポイントを表現する時に用いてみましょう。
「前提」
「要件」そして「条件」と似た意味を持つのが、「前提」です。
前置きと同じ感覚で使用でき、とある物事が成立するために必要な条件という意味があります。具体的な条件を頭につけて、「○○を前提に」と使うのが一般的です。
「用件」は「行うべきこと」、「要件」は「必要条件」
一見すると同じように見える「用件」と「要件」ですが、一般的に使われる意味はそう近くはありません。
「用件」は「行うべきこと」、また「要件」は「必要条件」を意味します。確かに「要件」は「重要な用件」といった意味も持ち、用件の中でも上位のウェイトを占めるケースに当てはめられる言葉です。
とはいえ、ビジネスシーンで混乱を招かないためにも、「要件」は「条件」の意味に絞って使用するのが賢明といえます。
いずれも知識としては蓄えておき、相手や状況に応じて使い分けしましょう。
(にほんご倶楽部)
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※この記事は2023年08月25日に公開されたものです