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『SELF LOVE CARD』開発者と考える「自分と世界の愛し方」

#わたしが向き合う女性のカラダ

ミクニシオリ

すべての女性が自分らしく過ごすために、女性の健康や身体にまつわるサービスを展開するリーダーにインタビュー。女性としても、ビジネスパーソンとしても輝く彼女たちは、一体どんなことを考え、“女性のカラダ”と向き合っているのでしょうか?

取材・文:ミクニシオリ
撮影・編集:鈴木麻葉/マイナビウーマン編集部

昨今、さまざまな場面で耳にすることの多い「自己承認」という言葉。自分を承認するって、当たり前のことのように聞こえるけれど、肯定してあげたい気持ちとは裏腹に、色々なシーンで傷つけられていく私たちのココロ。自分くらいは、自分を肯定してあげたい。そんな気持ちはあっても、その余力が持てないほどに、日々の暮らしや周りの関係、他人からのちょっとした言葉に疲弊してしまいます。

自分を愛すること……「セルフラブ」という文化は、日本ではまだ本質的に根づいているとは言いづらいかもしれません。そもそも、自分を愛するってどういうことなのでしょうか?

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些細なようで、人生そのものに関わるこの疑問に答えてくれたのは、セルフラブ・セクシャルウェルネスを学ぶプロダクト『SELF LOVE CARD』を開発するLimLoveのクリエイティブプロデューサーで、セルフラブガイドのMutsumi Leeさん。

クリエイターとして、人生を賭してキャリアを築いていた彼女は、病的なワーカホリックや幼少期からのさまざまな経験から、自己統一を模索する中でセルフラブの重要さに気づいたのだと言います。

セルフラブ……自分を愛することがなんなのかを聞いてうちに、自分にとっての「幸せ」がなんなのかも考えさせられます。

セルフラブ=自己承認。社会に認められても、自分を否定し続けた過去

――Mutsumiさんはなぜ、セルフラブに関心を持つようになったのですか?

私はもともと、幼少期から自身に対しセルフラブできていなかったのですが、自分ではそのことに気がついていませんでした。クリエイターとしてキャリアをスタートさせ、40歳までは、仕事で認められることが私の目標でした。息をつく間もないほど働き、仕事や自己表現の分野で、やりたいことを全てやり尽くしたんです。

働き始めた頃は、目標が更新されていくことが楽しかった。40歳ともなればキャリアとしてはもうベテランですし、会社もいくつか経営していましたが、その頃には何をやっても達成感が得られず、やりたいこともどんどん少なくなっていきました。

――キャリアは充実していても、満たされている実感がなかったんですね。

そもそも私は幼少期から生きにくさを抱えていましたし、だからこそ自身で選んで仕事をする環境を作っていきました。けれど蓋を開けてみれば、40歳を迎えた時の私は幸せではなかったんです。自分の存在価値を認めてもらうために、仕事をして社会的地位を獲得したのに、幸せにはなれなかったんです。

がむしゃらに行動を続ける中で、とうとう身体も壊しました。そこで、自身を自己承認できない限り、この生きにくさはなくならないのだということに気がつきました。

――自分を承認できないからこそ、社会や他人に承認を求めてしまう気持ちは分かる気がします。

誰しもが承認欲求を持っているものですし、何かに承認されていないと存在価値を見出だせないのは人間の性です。しかし、いかに社会や周囲から承認されても「まだ足りない」と感じてしまうのは、私自身が私を承認していなかったから。40歳を迎えて、その事実を受け入れてみた時に、私はやっと自分との戦いから開放されたんです。

周囲でも、自分自身を受け入れられないことが原因で悩みや生きにくさを抱える人が多くいました。私も、そのことに気がつくまでにとても長い時間をかけ、その間ずっと自分を傷つけ続けていました。

セルフラブを仕事にしようと思ったのは、その気づきがきっかけでした。セルフラブの存在や自分の現状を、もっと自然に受け入れられるカルチャーを広めたい。そう思ったタイミングに、たまたま私はウェルネスのメッカでもあるロサンゼルスを拠点に活動していました。せっかくなら、セルフラブを広める活動をしたいと考え、LimLoveというチームを立ち上げることにしました。

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「なぜ自分が嫌い?」自己啓発の前に、自分を知る

――LimLoveの活動についても教えてください。

ウェルネス関係のイベントの企画プロデュースやセミナー活動、それに『SELF LOVE CARD』を始めとするプロダクトの開発などを行っています。ロサンゼルスで立ち上がったチームですが、現在は日本向けに活動を行っていて、去年は「SELF LOVE FES」をラフォーレ原宿とミヤシタパークで2回開催しました。

――『SELF LOVE CARD』は、どのようなプロダクトなのでしょうか?

カードには自身を見つめる質問が書いてあるので、ご自身のタイミングでそのカードを引き、質問と向き合います。質問が書いてあるけれど、目的は質問に対し「答えを出すこと」ではありません。普段は聞かれないような深い質問と向き合ってみると、答えは簡単に出ないと思います。

けれど『SELF LOVE CARD』で自身に問いかけを続けていくと、自分自身を深く知るきっかけを得ることができるんです。カードを使うと、まずは自分がどれだけ、自分の気持ちを理解できていないのかを知ることになると思います。

――私たちは、実は自分のことをよく知らない……そういうことなのでしょうか?

私自身、自分が「なぜ」自己承認をできていないのか、本当に長い間気づけずにいました。自分を受け入れるためにまず必要なのは、本当の自分を知ることなんです。

みなさん、悩みごとがあった時に「自己啓発」をしますよね。落ち込んだ時、理想の自分に近づくために新しい活動を始めようとする。でも、傷が回復していないうちに新しいことを初めて、より苦しくなってしまった経験がある人もいるのでないでしょうか。

傷ついている今の自分を受け入れるために必要なのは、努力して新しいスキルを身につけることではないんです。自分が何を心地よく感じ、何に悲しみを覚えるのかを「自己潜水」を通して知ることなんです。

――自信をつけようと自己啓発本を読んだのに、啓発をうまく活かせず「自分はダメだ」と余計に傷つく、というのはよくある話ですよね。

「なぜそう感じるのか」を自分に問いかけていくと、トラウマのきっかけや幼少時の体験など、コンプレックスの根源に辿り着くはず。すると、今の自分が「なぜこんなに傷ついているのか」が分かります。

悩みやすい物事には、昔傷ついた思い出があることが多いんです。私自身、そのことに気づいた時は本当にほっとしました。

分からないのに悩んでいた時の方が、ずっとつらかった。自己嫌悪にも原因があることを知れたから、自身を受け入れることができたんです。

――自分を愛することが、自分を深く知ることとつながっているとは思っていませんでした。

セルフラブ、自分を愛そうって一言で言われても、どうしたら自分を愛せるのか分からない人がほとんどだと思います。

セルフラブというからには、愛する対象が必要なんです。その対象は自分だし、そこには自分が嫌いだと感じる自分も、トラウマに苦しむ自分も含まれているんですよ。

つらいことって色々あるけど、無視をされるのって苦しいじゃないですか。つらい経験をした自分を、自分自身が無視している。存在に気づいてもらえない「トラウマを持っている自分」は、とても悲しいと思いませんか?

自分を愛することで、相手も世界も愛せる

――自身のトラウマと向き合うのはつらいことだし、自愛のためには、トラウマとは向き合わない方がいいと思っていました。

トラウマに向き合い続けて、乗り越える必要はありませんよ。ただ、傷を隠していく限り、自己否定も終わりません。蓋をして隠してしまっている自分や、忘れてしまっていた自分に再会して「よくがんばったね。もう大丈夫だよ」と声をかけて包容する。

このように、つらかった時の自分自身と再会して包容するというビジュアライゼーションを繰り返していくと、自分で自分を癒やせることが実感できると思います。だから、1日1枚の『SELF LOVE CARD』で、自身に潜水する癖づけをしてみてほしいんです。

使い方はそれぞれの方法でいいのですが、セルフラブには自然に慣れていくのがいいと思います。自身と向き合えるルーティンが習慣になるプロダクトにしたくて、カードを作りました。

スマホアプリにすることも考えたけれど、現代人って忙しいから、スマホやWEBを見ていると、心が休まりきらないでしょう?

私も、メッセージが来ていたら返してしまうタチなんです。でも、カードを引く時はスマホからは離れている時なので、邪魔されずにゆっくり自分と向き合うことができます。

――『現代人の「忙しさ」は、セルフラブとも関わりがあるのでしょうか?

あると思いますよ。情報が多い分、若いみなさんも意識が高い人が多いと思います。だから、一生懸命考えて自己啓発をして、心を疲弊させてしまうんですよね。

――私たちは、セルフラブのためにどんなことができるのでしょうか?

30代って、とっても悩む年代だと思います。キャリアに結婚、出産、周りからあれこれ言われることも多いでしょう。両親やパートナーと話し合えば解決できることばかりじゃないと思います。

自分を知らないと、人との関わり方も選択肢が少なくなっていくんですよ。だって、自分が捉えられる範囲でしか、相手のことも捉えられないのだから。

自分の感度が広がると、世界が変わりますよ。相手への捉え方だって変わります。自分の世界は、自分の意識を変えるだけでいくらでも変わるんです。今の環境にある悩みの受け取り方も、感じ方次第で悩むことではなくなることもたくさんあります。自分らしくのびのびと生きたいと思うなら、社会や他人の価値観ではなく自分の目線で世界を捉えることが重要なんです。

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――自分の価値観を知ることが、セルフラブの第一歩ですね。

まずは自分がどう世界を捉えたいのか、つまり自分の価値観を知って、そこから少しずつ広げていくことが大切だと思います。

若いみなさんには、社会が作ったルールを世界そのものだと思わないでほしいんです。それは社会の価値観だから、あなたの価値観と違っても当たり前でしょう? 社会の概念に忠実に生きなきゃと思ったから、私は生きにくかったんですよ。

――人を自分と比べてしまうのは、自分が社会に合わせて生きようとしているからなんですね。

周りと違うことは、最初は不安かもしれません。でも、自分にとって必要のないルールもあると思うんです。何が不要で、何が必要かを知るためには、自分を知らなきゃ。

たくさん話してしまったけれど、セルフラブって「自分にとっての幸せが何か」を本質的に知ることなんですよ。それさえ分かれば、社会のルールも友人のマウンティングも、気にならなくなりますよ。

今後は、みなさんがセルフラブを身近に感じられるような「体験」ができる場所も作っていくことも検討しています。興味があったら、ぜひLimLoveの発信を追いかけてみてください。

――今まで漠然と悩んでいたことを、言語化していただいてほっとしました。貴重なお話をありがとうございました。

こちらこそありがとう。みなさんも、自身の人生を楽しんで!

※この記事は2023年07月20日に公開されたものです

ミクニシオリ

1992年生まれ。2017年にライター・編集として独立。芸能人やインフルエンサー、起業家など、主に女性に対するインタビューを多数執筆。恋バナと恋愛考察も得意ジャンル。ハッピーとラッキーがみんなに届きますように。

Twitter:https://twitter.com/oohrin

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