「人間の本能」が投資の邪魔をする? 投資で初心者が一喜一憂してしまうワケ
普段の生活の中で、ついついやりがちな「合理的でない」行動ってなんでしょうか。
すぐに寝たほうがいいとわかっているのに、スマホを延々と眺めてしまう。買わなくてもいいのに、「今買わないともったいない気がする」と3足1,000円の靴下を買ってしまう。遅刻ギリギリになるってわかっているのに、「あと10分」とスマホの目覚ましをスヌーズにしてしまう。あげてみたら、いろいろあるのではないでしょうか。
人間は完ぺきな生き物ではありません。食べ過ぎることもあるし、お酒をついつい飲みすぎることも、予算を超えた買い物をしてしまうこともあるでしょう。自制心がいついかなる時もはたらき、感情に左右されずに理性だけで物事を決められる人は相当少ないのではないでしょうか。
普段の生活でもそうなのですから、お金がからむことに関しても同様にそうなってしまいます。
例えば、こんなゲームがあったら参加しますか? コインを投げて、表の面が出たら、100万円をゲットできる。でも、裏が出たら50万円を払わなければいけない。チャンスは一度だけ。いかがでしょうか?
多くの実験によると、このゲームには「参加しない」と答える人の方が多いようです。しかし、この場合は「参加する」方が合理的です。どちらの面が出るかの確率は同じ2分の1で、失う額よりも得る額の方が大きいからです。ところが、この選択に抵抗がある方も多いのではないでしょうか。お金に関しては、人間の本能は「得る」と「失う」を天秤にかけた場合、「失いたくない」方に傾いてしまうのです。
この「失いたくない」という人間の本能が、投資をするうえでの合理的な行動を邪魔します。投資をするうえでの合理的な行動とは「続ける」ことです。「続ける」ことが、長期的に大きな利益につながります。
しかし、投資をするとお金が増えたり減ったりします。投資を始めると、お金が増えたタイミングでは「いったん利益を確保したい」、逆に減ったタイミングでは「これ以上損を膨らませたくない」という感情が生まれがちです。
これらの感情は、まさに「失いたくない」という人間の本能からくるものです。「失いたくない」という感情が強くなればなるほど、「売却する=投資をやめてしまう」という合理的でない行動をとってしまうわけです。
このように、人間の本能のままに投資をすると、淡々と投資を続けることは難しいのです。短いスパンで株を安く買い高く売るのが投資、と思われる方もいると思いますが、それは金融のプロであっても至難の業です。細かい波に一喜一憂して売り買いの選択をしてしまうと、未来にやってくるはずのもっと大きな波を逃してしまいます。大切なことは、感情に左右されずに淡々と、長く投資を続けることです。
一喜一憂せずに長く続けるには、人間の本能を知り、経験を積むしかありません。本を読んで勉強することも大事ですが、投資の場合は、自分の感情の動きを知る経験がものをいいます。投資の年数が1年、2年と積み重なっていくと、細かい波は繰り返すということがだんだんわかってくるからです。いずれ「またこの波がきたな」と動じなくなっていきます。ですが、そこまで来るのは、実は大変なことなので最初が肝心です。波の上下が気にならない程度の少額から積み立て、投資の経験を積み重ねていくこともよいでしょう。
まずは1年続ける、などと目標を決めることも一案です。投資を始めたばかりの時の一喜一憂は、誰にでもあることです。迷ったときは長く続けた人の成果を見るなど、「思いとどまる」すべをいくつか身に着けておくとよいでしょう。
※この記事は2023年07月19日に公開されたものです