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楽しく前進する「まっすぐキャリ」。ダイキン 加峯まりえさんの働き方

#働くわたしの選択肢

太田 冴

「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。

取材・文:太田冴
撮影:永田洋輔
編集:鈴木美耶/マイナビウーマン編集部

「最高の職場、見つけちゃいました」

溢れんばかりの笑顔でそう話すのは、老舗空調メーカー・ダイキン工業株式会社で働く加峯(かぶ)まりえさん。まだ世に出ていない製品のデザインを、日々考案し続けているプロダクトデザイナーです。

これまでたくさんの働く女性を取材してきたけれど、ここまで濁りのない笑顔で「仕事が楽しい!」と話す人は実はとってもめずらしい。そりゃあ仕事をしていれば嫌なことの一つや二つ、当たり前にあるはず。でも加峯さんの笑顔は、そんなあれこれさえも乗り越えた、「好きなことをやっている」という清々しい笑顔なのです。

いったい、どうしてそこまで真っ直ぐに仕事を楽しめるのか。加峯さんのお仕事の価値観に、迫ってみました。

親の反対を押し切ってデザイナーの道へ

太田
現在デザイナーとして活躍されていますが、昔からデザインに興味があったんですか?
加峯さん
今思えば、好きだったんだと思います。両親が美術鑑賞好きなこともあり、物心ついた時から美術作品を見るのは好きでしたし、工作みたいに何かしらものを作っていた気がします。
太田
では、進路もそのようなことを軸に決められたんですか?
加峯さん

そうですね。ただ、進学校に通っていたのとそこそこ成績も良かったので、両親は難関大学に進むことを期待していて……。私が美大に行きたいと伝えた時は、「それじゃあ食っていけない」と大反対されました。散々悩んだ挙句、総合大学である九州大学の芸術工学部に進学しました。

デザインから人間工学まで、さまざまなことが学べる場所だったんです。たまたま家の近所でしたし、両親は「九州大学なら」と認めてくれたので、良いところに妥協点が見つかったという感じです(笑)。

太田
良い巡り合わせだったのですね。具体的に、どんなことを勉強していたのですか?
加峯さん
所属していた研究室がブランディングを専門にしていたんですが、そこの教授が元々プロダクトデザイナーだったんです。そこでプロダクトデザインもブランディングも両方学び、大好きになりました!
太田
笑顔が輝いてる……! 本当に楽しかったんですね。
加峯さん
それはもう、めちゃくちゃ楽しかったです。グループで一つの作品を作ることが多かったのですが、それも楽しかったんですよね。全く違う意見を持った人と意見をぶつけ合いながらも最終的には一つのものに仕上がる、というのが感動的でした。

太田
そこまで好きなことなら、迷いなく就職活動も進みそうですね。
加峯さん

どうにかしてデザイナーになりたかったので、色んなメーカーを受けました。ただ、デザイン系職種の就活ってすごく大変なんですよ。

まず自分の作品集みたいなものを作って提出して、選ばれた10人くらいで約1週間かけてデザインを作るみたいな……。そこから最終的に採用されるのはたった1人だけ。本当にコスパが悪い(笑)。めちゃくちゃ狭き門なんです。

太田
そんな狭き門をくぐり抜けてダイキンさんに入社したわけですよね。すごい!
加峯さん

社風がマッチしたのかな、と思います。ダイキンって、良い意味で変な人が多いんですよ(笑)。

私を面接してくださった方が今の上司なんですが、すごく個性的な方で「ダイキンの空調製品を、Apple製品みたいに唯一無二の憧れられるようなデザインにしたい」というようなことを言っていて。そのデザインへの熱量がかっこいいなと思っていたんです。

実際に入社してみても、想像通りの熱量があって面白い人ばかり。あの時の勘は当たってました!

「言語化すること」の難しさを痛感

太田
いざデザイナーとして働いてみて、いかがでしたか?
加峯さん
いやぁもう、めちゃくちゃ楽しいです。入りたいと思った会社で、デザインという自分が大好きなことをやれている。最高ですね。
太田
そこまでまっすぐに「仕事が楽しい」って言えるの、すごいことだと思います。
加峯さん

もちろん、大変なこともあるんですよ。でも、決して嫌な大変さではなくて。

ちょうど私が入社した頃から、ダイキンは大きな変化の時を迎えていて。ダイキンというブランドそのものを見直そう、という動きがあるんです。そこで私もブランドを再定義するプロジェクトの一員として参加しています。

さらに最近の製品作りでは、企画の段階からデザイナーが参加するケースが増えてきました。

どれも前例があることではないですから、とにかく試行錯誤の繰り返し。新しく取り組むことはもちろん大変な側面もありますが、その分やりがいもあります。

太田
なるほど。「どういう製品を作るか」というところから、デザイナーが一緒になって考えるのは意外でした。
加峯さん

そうすることで、ブレない企画になるんですよ。

最終的な目的はユーザーにとって良いものを届けるということですから。ユーザーの方々はどんな時にどんな気持ちでこの製品を使うのか、そうしたユーザー体験をデザイナーが構築していくことで、よりユーザーに製品の良さが伝わると思うんです。

太田
お話しを聞いていると「楽しいことばかり」のようにも聞こえますが、ブランディングやデザインを行ってみて、正直難しいなと思うこともありますよね?
加峯さん

ブランディングもデザインも実現させるには、まずは言語化して社内の人に伝える必要があります。それが一番難しいですね。

どんなに自分が一生懸命考えて「これだ!」と思ったものでも、「どうしてこのデザインなの?」「どうしてこれじゃなきゃダメなの?」という問いに対して答えられなければ納得してもらえません。そこは学生時代の作品作りとの大きな違いですし、今まさにその修行をしているところです。

目指すのは“命が宿る”デザイン

太田
加峯さんが目指すデザインとは、どのようなものでしょう?
加峯さん

先ほど「言語化するのが大変」というお話をしましたが、私が作りたいデザインはまさにそこをクリアしたものなんです。本当に良いデザインって、とってもシンプルで、使う人にとって分かりやすいもの。

だからこそ、考え抜いて削ぎ落として、「どうして?」という問いに対してサラッと答えられるくらいにまでなりたい。

太田
そのようなデザインをすることで、製品にはどんな良さが生まれるのですか?
加峯さん
私たちが作るものは「モノ」ではありますが、伝えたいメッセージをクリアにして細部までこだわり抜くことで、作り手の“命”が宿る気がするんです。ただの「モノ」ではなくなるというか。
太田
“命が宿る”、すてきな表現ですね。加峯さんがデザインを手がけた製品、早く見てみたくなりました!
加峯さん
まさに今、鋭意制作しているところなんです。今年か来年には、私がデザインしたものが見られるかも……!?
太田
とっても楽しみです!
加峯さん
こだわり抜いて作っていますから、私の命が宿るはず。ぜひ期待していてください。

デザインに対するまっすぐな姿勢は貫きつつ、楽しく仕事をしていたい

太田
ダイキンというと創業100年近い老舗メーカーなので、もっとお堅いイメージがありました。でも、加峯さんのお話を聞いていると、想像していたよりずっと自由な雰囲気なんだなと思いました。
加峯さん

歴史は長いですが、良い意味で新しい風が吹いている、変化を受け入れる懐のある会社だなと思います。このタイミングで入社できたことはすごくラッキーですし、これからもどんどんチャレンジしていきたいですね。

職場の雰囲気も本当に楽しくって、この間なんて“オンライン運動会”っていうのをやったんですよ(笑)。

太田
オンライン運動会!? 何をするんですか?
加峯さん
コロナ対策で大勢では集まれないので、さまざまな場所から社員同士をオンラインで繋いで、競争をしたりクイズをしたり。役職関係なく参加するので、偉い人たちが運動会に参加する姿は見ていてすごく楽しかったです(笑)。
太田
とっても仲の良い職場……! すてきです。
加峯さん

今入社4年目ですが、本当に優しい先輩方に囲まれて、これまでやってくることができました。でも既に新入社員がどんどんと入社してきていますから、これからは教える立場としてもしっかり成長しなければと思います。

私が面白そうに仕事をする人に囲まれてきたからこそ、私もずっと楽しく仕事をしていたい。まっすぐに自分の作りたいデザインを貫く姿勢を持って、成長していきたいですね。

※この記事は2021年07月02日に公開されたものです

太田 冴

ライター/平成元年生まれ。舞台、韓国ドラマ、俳優、アイドルグループ、コスメなどを幅広く愛する雑食オタク。ジェンダー・ダイバーシティマネジメント・メンタルヘルスなどの社会問題にも関心あり。30歳で大学院に入学し、学び直しをしました。

●note:https://note.com/sae8320

●Twitter:https://twitter.com/sae8320

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