「僭越ながら」の意味は? ビジネスや乾杯スピーチでの使い方を解説
スピーチなどのあいさつで使われがちな「僭越ながら」という言葉は、使い方を間違えると嫌味のように聞こえてしまうことも。今回は「僭越ながら」の意味や使い方を紹介します。使う上でのポイントを押さえて、スマートに使いこなせるようにしましょう。
「僭越ながら」というワードを、結婚式や宴会のあいさつなどで耳にしたことはありませんか。
意味や使い方はしっかり把握していないけど、常套句のように使われているフレーズだから自分もなんとなく使っている。そんな人も少なくないのでは?
今回は、「僭越ながら」の意味や使い方を紹介します。これを機会に、適切な使い方や使う時のポイントを押さえましょう。
「僭越ながら」の読み方・意味とは?
「僭越」は「せんえつ」と読みます。
せんえつ【僭越】
自分の身分・地位をこえて出過ぎたことをすること。そういう態度。でしゃばり。
▷謙遜の気持ちでも使う。
(『広辞苑 第七版』岩波書店 )
上記の通り、僭越には「地位や立場をわきまえずにでしゃばったり、出過ぎたまねをすること」という意味があることが分かります。
また、謙遜の気持ちを表す際に使える言葉でもあります。
「僭越ながら」を使う際の注意点
続いて、「僭越ながら」を使う際に注意したいポイントを紹介します。
「僭越」に順番や順序は無関係
前述の通り、「僭越ながら」には「自分の地位や役職を越えて、出過ぎたことをする」という意味があります。
「僭越」に、順番や順序は関係ありませんので、「自分が先に~する」という意味合いで使うのは誤りです。そのため、「僭越ながらお先に失礼いたします」「僭越ながらお先にいただきます」のような使い方は誤った使い方となります。
「僭越ながら」は、順番や順序ではなく、あくまで自分の立場や役職に照らし合わせて使用する言葉なので、その点には注意するようにしましょう。
立場が上の人が使うと嫌味に聞こえる可能性も
「僭越ながら」は、立場や地位をわきまえないで出過ぎたまねをすることを意味しているので、立場や地位が高い人が使うことで、下の立場の人に対する嫌味だと取られることもあります。
変にへりくだると失礼に値することもあるので、自分の立場や地位がどの程度なのかを考える必要があるでしょう。
いつも通りの役割を務める時には使わない
「僭越ながら」は、自分の立場や地位に見合っていない重要な役割を任された時に使う言葉なので、いつもやっている役割を務める時には使いません。
例えば、毎月開かれている会議で毎回のように司会をやっているのであれば、「僭越ながら」と前置きをする必要はありません。
普段からやっている仕事なら、身分相応の仕事だと解釈されるので、謙遜の気持ちを表したいとしても使わない方が良いでしょう。
「僭越ながら」を使うシーン【例文つき】
ここでは、「僭越ながら」を使った例文を紹介します。
具体的にどのように使うのか、例文と一緒にチェックしていきましょう。正しい場面で使えるように、自分が使いそうなシーンを想像してみてください。
ビジネスシーン:「誠に僭越ながら申し上げます」
上司などの目上の相手や取引先の人に対して、指摘や意見をしたい時に使うクッション言葉として使われます。
言いにくいことを言いたい時、自分の意見を言いたい時に、「僭越ながら」と前置きすると印象を和らげることができます。
結婚式の乾杯スピ―チや会議・会食:「僭越ながら挨拶をさせていただきます」
パーティーでの乾杯の音頭や、ビジネスシーンでのかしこまった場面でのあいさつやスピーチをする時などに、前置きとして使われます。
会議や会食の司会進行を務める場合に、自己紹介などで使われることが多いです。
自分には身に余る大役だという謙遜の気持ちを表現することができるので、便利なワードでしょう。
「僭越ながら」の類語・言い換え表現
前述の通り、立場や地位によっては「僭越ながら」を使うのが適切でない場合もあります。
そのような時には、他の表現を使うのが好ましいです。
ここでは「僭越ながら」と似た言葉を紹介します。他の表現を把握しておくことで、時と場合に合わせた謙遜表現ができるようになるでしょう。
「及ばずながら」
「及ばずながら」には、「不十分ながら」という意味があります。
「及ばずながらお力添えいたします」というふうに、謙遜しながらも援助させてもらいたい時に活用できます。
「微力ながら」
「微力ながら」は自分の能力を謙遜する表現で、「能力が低いこと」「力不足であること」を意味します。
「微力ながらご支援いたします」のように、少ない力ではあるけれど協力するといったニュアンスで用います。
ビジネスシーンでも多く使われる言葉なので、聞き馴染みのある言葉ではないでしょうか。
「分不相応ではありますが」
「ぶんふそうおう」と読み、「自分の地位や能力にふさわしくないこと」を意味しています。
「僭越ながら」と同じような意味で使われるので、自分の地位や立場をわきまえて使わなくてはなりません。
「分不相応ではありますが、司会を務めさせていただきます」のように使います。
「お言葉ですが」
主に何か意見をする時に使う言葉で、印象を和らげるために使うクッション言葉のような役割を持っています。
目上の人や取引先の人に意見する時にも活用できる言葉です。
「お言葉ではありますが、そのような意見には賛成いたしかねます」というように、へりくだって意見を述べる時に使いましょう。
憚りながら
憚りながら(はばかりながら)には、遠慮すべきことかもしれないがという意味があります。
目上の人や上司に対して自分の意見を伝えたい時などに、自分の立場で意見を言うのは申し訳ありませんが……というニュアンスで使用することが多いでしょう。
恐れながら
こちらも目上の人に対してへりくだってものを言う時に使用する言葉です。
恐縮しつつも、あえてというニュアンスがあるため、上の立場の人に何か意見を言いたい時に使用します。
「僭越ながら」は失礼にならないように気をつけて使おう
立場や地位が低いことで使える「僭越ながら」は、使い方を間違えると嫌味のようにとられることもあります。謙遜する気持ちを表すどころか、失礼に値しないように正しい使い方を身につけましょう。
年齢を重ねると、それなりの地位や立場につく人も多いはずですから、自分の立ち位置に合わせた言葉遣いを意識しましょう。
どうしても謙遜の気持ちや、大役を任された喜びを表現したいのであれば、「僭越ながら」以外の表現を使うようにするといいでしょう。
公の場においては、自分の立場をわきまえた言葉を選べるのも、マナーの1つといえます。
(たむたむ)
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※この記事は2021年05月29日に公開されたものです