感情労働とは? 具体例と問題点・ストレスをためない対処法
感情労働の問題点
感情労働には、大きなエネルギーが必要とされます。
ではどんな面にエネルギーが必要となり、ストレスになるかを具体的に見ていきます。
(1)感情の抑制をする点
感情の抑制というのは、抱いた感情を心の中に抑え込むことで、実際の感情を隠したり、我慢したり、忘れようとしたりすることです。
感情を抑制すると、自律神経系の興奮レベルが高まってしまうといわれています。つまり「感情労働」をしている際、抱いた感情を隠すことや我慢することはできても、それを「なかったこと」にできるわけではないということです。
よって、感情を抑制することが続けば、血圧や脈拍が上がったりすることもあるとされます。
(2)求められる感情を作り出さなければならない点
接客業に求められる感情は、基本的にポジティブな感情に限られる場合が多いでしょう。
看護師や介護士、カウンセラーのような職業はポジティブな感情だけではなく、悲しみ、苦しみなどさまざまな感情を共有したり、励ましたりすることも求められます。
また、教員や保育士などは、生徒や園児に対して「指導」という目的で、自分の感情とは関係なく、厳しく注意したり叱ったりすることを求められる場面もあります。
このように、自分が抱いている感情と別の感情を作り出すということは、本当の気持ちと表に出している気持ちの間に矛盾が生じているため、強いストレスとなります。
(3)感情のコントロールと行動が求められる点
接客業ではどんなに疲れていても「笑顔」をつくり、横柄な態度を取るお客さまに腹が立っていても丁寧に接することを求められる傾向があります。自分の感情を抑制し、自分の真の感情とは裏腹な「行動(演技)」をしなければならないのです。
そんなふうに求められることから、仕事の時には意識的に別人格になってその役を演じられる人もいます。「教師は教師らしく」「看護師は看護師らしく」という世間から求められる職業イメージになろうと、仕事中は演じているのです。そして、「嫌なことがあっても心から誠意を持って対応しよう」とします。
このような場合は、本来の自分と仕事の時の自分を使い分けているので、疲労感を伴います。
(4)燃え尽き症候群(バーンアウト)になりやすい
燃え尽き症候群とは、それまでひとつの物事に没頭していた人が、心身の極度の疲労により燃え尽きたように意欲を失い、無気力状態になってしまうことを指します。
感情を抑制することを常に強いられる感情労働は、無意識のうちに大きなストレスを抱えていることが多いです。
そのストレスが限界に達して燃え尽き症候群に陥る可能性が高いでしょう。