「先生がおっしゃられました」「社長がおっしゃられました」など、「おっしゃられました」という表現は、日常生活やビジネスシーンでもよく使用されています。しかし本当に正しい敬語なのでしょうか。
この記事では、「おっしゃられました」の使い方や正しい表現について、例文を用いながら詳しく解説してきます。
■「おっしゃられました」の意味とは?
目上の人が発言したことに対して「○○さんがおっしゃられました」というフレーズを見聞きすることがあります。「○○さんが言った」という意味で、^「言う」の尊敬語である「おっしゃる」の過去形として使われていますが、実はこれは二重敬語であり誤った表現^です。
では、どこがどう間違っているのでしょうか。詳しく解説していきましょう。
◇「おっしゃられました」は敬語として間違い
^「おっしゃられました」は、「言う」の尊敬語である「おっしゃる」と、尊敬の助動詞である「れる」の2つの尊敬語を重ねて使っていることから、二重敬語です。^
二重敬語とは、1つの語に、同じ種類の敬語を二重に使うことです。敬語には尊敬語や謙譲語、丁寧語などの種類がありますが、同じ種類の敬語を重ねて使うことは好ましくないとされています。
「おっしゃった」は既に尊敬語としての機能があることから、わざわざ「れる」を付け足す必要はありません。^正しくは「おっしゃいました」^だけでいいのです。
「おっしゃられました」と誤って覚えている人にとっては、少しあっさりした表現のように感じるかもしれませんが、「おっしゃいました」だけで相手への敬意は十分に伝えられます。
■「おっしゃられました」の正しい使い方と例文
^「おっしゃられました」の正しい表現は、「おっしゃいました」「おっしゃった」^などです。
「おっしゃる」は「言う」の尊敬語であることから、目上の人を主語にする場合に使用します。「部長がおっしゃられました」と誤った使い方をして恥をかくことのないように、正しい敬語を身に付けましょう。
◇例文
ここからは、「おっしゃいました」の正しい使い方の例文を紹介していきましょう。
*
・「○○様は、A案がいいとおっしゃいました」
・「お客さまはカウンターに忘れ物をしたとおっしゃいましたが、それらしいものは見当たりません」
・「部長がおっしゃった通り、やはり日程の変更を検討すべきではないでしょうか」
*
■「おっしゃられました」の言い換え表現
「おっしゃられました」は二重敬語の誤った表現であるため、正しい表現に言い換える必要があります。また敬語には尊敬語や謙譲語、丁寧語など複数の種類があるため、何について述べるのかや場面に応じて適切な表現を用いましょう。
◇(1)目上の人の発言に対して使う場合は「おっしゃいました」
^目上の人に使う場合は、前述のように「おっしゃいました」や「おっしゃった」^などを使います。「おっしゃる」は「言う」の尊敬語であるため、上司や取引先など、目上の人を主語にする時に適した言葉です。
くれぐれも「私が先ほどおっしゃったように」など、自分を主語にする場面で使用しないよう注意しましょう。
◇(2)距離が近い人の発言に対して使う場合は「言いました」「言っていました」
^社内の同僚や後輩など、対等、あるいは目下の人を主語にする場合は、「言いました」「言っていました」^などを使います。尊敬語でも謙譲語でもない「言う」に、丁寧語の「ました」をつけたシンプルな表現です。
距離が近い人に対して「おっしゃいました」「おっしゃっていました」を用いると、過剰な表現となってしまいます。
◇(3)自分や身内の発言に対して使う場合は「申し上げました」
^自らを主語にして「私が言った」ということを伝えたい場合は、「申し上げました」^などを使います。「申し上げる」は「言う」の謙譲語であるため、へりくだった表現で相手を立てる効果がある言葉です。
また例えば「弊社の○○が申し上げましたように……」など、取引先といった目上の相手に対して、自分側の人間の発言について説明する時も同様です。
ただし、「申し上げました」は目上の人を主語にする際には使いません。「○○様が先ほど申し上げたように」と使うと、失礼にあたってしまうため注意しましょう。
■「おっしゃいました」と「言われました」の違い
「おっしゃられました」の正しい言い方である「おっしゃいました」と同様に、「言われました」も目上の人の発言に対して使用できます。「言われました」には尊敬語の「れる」が含まれていることから、相手への敬意が込められた表現です。
ただし^敬意の度合いは「おっしゃいました」の方が高く、「言われました」はややカジュアルな印象^があります。
また^「言われました」には受け身の意味もある^ことから、文脈によっては敬語だと伝わりにくいかもしれません。ビジネスシーンなど分かりやすく相手へ敬意を表現したい場合は、「おっしゃいました」を用いることがおすすめです。
■「おっしゃられました」の他に注意すべき二重敬語
「おっしゃられました」は、「おっしゃる」と「れる」の尊敬語が重なった二重敬語ですが、他にも注意すべき二重敬語は多くあります。下記がその一例なので、誤った敬語を使っていないか改めて確認しましょう。
*
・×お読みになられる → ○お読みになる
・×お帰りになられた → ○お帰りになった
・×ご覧になられる → ○ご覧になる
・×拝見させていただく → ○拝見する
・×お目にかからせていただく → ○お目にかかる
*
ただし、^最初は「誤用だ」とされていても、次第にその使い方が定着していくこともあります。^例えば「お伺いする」は「伺う」と「お~する」の謙譲語を重ねていることから、誤った二重敬語だといわれていました。
しかし近年では「お伺いする」という表現も広く使用されるようになり、一概に「二重敬語だから誤りだ」とはいわれなくなりました。
このように言葉は私たちの生活と共に柔軟に変化していくものであるため、その都度正しい使い方を見直していくことが大切です。今は誤りといわれている「おっしゃられました」も、いつか正しい使い方として認められる日が来るかもしれません。
■「おっしゃられました」は二重敬語。正しい表現を使おう
「おっしゃられました」は、「おっしゃる」と「れる」の2つの尊敬語が重なった二重敬語で、誤った表現とされています。よく聞く言葉であるため、あまり違和感はないかもしれませんが、正しくは「おっしゃいました」が適切です。
ビジネスシーンでは誤った敬語を用いることで、相手からの評判を下げてしまいかねません。ささいなミスでビジネスチャンスを逃すことのないように、普段から正しい敬語の使い方を身に付けておきましょう。
(にほんご倶楽部)
※画像はイメージです