お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

セックスをすると痛い。性交痛を感じる場所と痛みの理由&対処法

宋美玄(産婦人科医・医学博士)

セックスをすると痛みを感じる……。そんな経験をしたことがある人は意外と多いもの。なぜ痛くなってしまうのでしょう? 実は痛みを感じる場所ごとに原因が違うと産婦人科医・医学博士の宋美玄先生は言います。どんな理由があるのでしょうか、またその対処法とは?

「セックスをすると気持ちいい」「セックスのときは感じるもの」「セックスを楽しめてこそ大人の女性」――そんなイメージを抱いている人は決して少なくないでしょう。

もちろん、普段からセックスを楽しめているという人もいます。しかしその一方で「セックスが痛い」という人も、実は意外と多いのです。

宋美玄(産婦人科医・医学博士) (産婦人科医・医学博士)

大阪大学医学部医学科卒業。丸の内の森レディースクリニックの院長として周産期医療、女性医療に従事する傍ら、テレビ、書籍、雑誌などで情報発信を行う。

主な著書に、ベストセラーとなった『女医が教える本当に気持ちいいセックス』がある。

一般社団法人ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事

この著者の記事一覧 

なぜ? セックスで痛みを感じる理由

セックスで感じる痛みのことを「性交痛」といいます。

性交痛を感じる人は思いのほか多く、成人男女を対象としたセックスに関する大規模な調査『ジェクス ジャパン・セックスサーベイ2020』によると、セックスの時に痛み(性交痛)を感じることがあるかという問いに対して、「いつも痛い」「だいたい痛い」「たまに痛いことがある」と回答した人は、女性の全年代で62.4%、20代で74.1%、30代で63.5%でした[*1]。

すなわち女性の6割以上が、セックスの際に痛みを感じているということになります。

多くの女性から性交痛にまつわる相談を受けているという宋美玄先生によると、性交痛を感じる場所やタイミング、痛みの度合いなどは人によってさまざまであるものの、大きくは「腟の入り口付近が痛む場合」と「腟の奥や内部が痛む場合」とに分けられるといいます。

それぞれの場所ごとに、性交痛を感じやすい主な原因を確認してみましょう。

腟の入り口付近が痛い場合

腟の入り口付近が痛む主な理由には、以下のようなものが考えられます。

・興奮もしくはコミュニケーション不足からくる性反応の不足
・女性ホルモン(エストロゲン)の不足
・加齢による乾燥
・水分不足
・物理的刺激によるかゆみや炎症

一般的に、女性が性的な刺激を受けて興奮すると、性器周辺の血流が増加し、クリトリスが充血してふくらんだり、小陰唇がふっくらしてきたりします。また、腟粘膜から体液(潤滑液)が分泌されて、いわゆる「濡れる」という状態になるなどの性反応が現れてきます。

これらの反応は、ペニスを受け入れるための準備として起こるのですが、なんらかの反応が現れたからといって、すぐに準備が整うわけではありません。個人差があるものの、ペニスを挿入できるようになるまでにはもう少し時間がかかるのですが、性反応がまだ十分でない状態のうちに挿入をしようとすると、摩擦などで痛みを感じてしまうことがあるのです。

腟の入口付近が痛む性交痛はそうした、挿入を焦ることがきっかけとなって起こることが少なくありません。

しかし、中には「興奮もしていて性反応も起きているのに、なんらかの原因で潤滑液がうまく分泌されないために痛みを感じる」というケースもあります。

その原因とは、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの不足や乾燥、水分の不足です。エストロゲンには腟粘膜の厚さを保ったり、性的興奮時に潤滑液を分泌したり、セックスをスムーズに行える状態を維持する役割があります。しかしエストロゲンの分泌量が不足すると腟粘膜が萎縮し、潤滑液が十分に分泌されない状態になることがあります。

40代後半を過ぎた更年期に差し掛かる年代に起こりやすいのですが、若い女性でも極端なダイエットなどをしているとエストロゲンが不足して濡れにくくなり、性交痛を引き起こすことがあるのです。

また、意外なところでは乾燥や水分不足も性交痛の原因となります。腟の潤滑液は水分ですから、水分不足で体が脱水状態に近くなっていると、体液が分泌されなくなって痛みの原因になります。加齢に伴って乾燥しやすくなることはもちろん、若い世代でも水分が不足すれば体液が分泌されにくくなります。

そのほか、きつい下着や生理のときのナプキンなどが刺激となって腟周辺にかゆみや炎症が起こり、結果として痛みが生じることもあるでしょう。

腟の中や奥が痛い場合

一方で腟の中や、腟の奥の子宮に近い部分に痛みを感じるという人もいます。宋先生いわく、「性交痛があるとして相談にくるケースで多いのは、腟の入り口付近よりも、中や奥が痛むという悩み」とのこと。その場合の主な原因としては、以下のようなものが考えられます。

・子宮内膜症などの病気
・子宮後屈など内臓の位置関係によるもの
・パートナーと自分の体格差
・婦人科手術や骨盤内感染の後遺症
・コンドームなどのアレルギー

腟の奥、子宮に近い部分がセックスの際に痛むことの原因として多いのが、子宮内膜症です。

腟の奥のお腹の中にはダグラス窩という子宮と直腸の間のすき間があります。ここは子宮内膜症ができやすい部分で、子宮内膜症によって子宮と直腸の癒着が起こることがあります。セックスのとき、癒着した部分にペニスが当たると性交痛を感じることがあるのです。

「特定の体位になると性交痛がある」という場合は、子宮後屈(しきゅうこうくつ)の可能性が考えられます。子宮後屈とは、上のイラストのように本来、体の前側に向かって傾いているはずの子宮が、背中側に向かって傾いている状態のことをいいます。

子宮後屈そのものは、特別な異常がない限り治療が必要なことではありませんがセックスの際、子宮体部の方向にピストンを運動されると痛みを感じることもあります。

またレアケースではありますが、ペニスの長さと腟の長さが合わないことで痛みにつながったり、ゴム(ラテックス)アレルギーがある人はコンドームの素材によって腟に炎症が起き、痛みが生じたりすることもあるようです。

腟にうるおいを足すために使う潤滑ゼリー(ローション)も、素材によっては粘膜に炎症などのトラブルを発生させ、性交痛の原因になることも。

そのほか、子宮頸がんの円錐切除や尿失禁の機能再建手術など婦人科手術の術後合併症として性交痛が生じることも少なくありません。

次ページ:「性交痛をなんとかしたい」。痛みをなくすための対処法

SHARE