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ひどい手荒れ、これってなに? 皮膚の炎症「手湿疹」の症状とその対策

横井彩(皮膚科学会認定専門医・医学博士)

カサカサしたりかゆみがあったりと、ひどい手荒れで悩んでいる人も多いのでは? 実は、手荒れは「手湿疹」という皮膚の炎症です。ハンドクリームを使ってもなかなか治らないその手荒れは、もしかしたら治療が必要な状態かもしれません。手湿疹の症状と対策について皮膚科医で医学博士の横井彩先生に伺ってみました。

指先のカサカサ、手のかゆみなど、気が付けば起こっている手荒れ。

空気が乾燥する時期ですし、近頃は手指衛生のために日に何度も手を洗ったり消毒したりするので、なかなか治りにくいといえます。頑張って日に何度もハンドクリームでケアしても治らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、そのひどい乾燥の症状は、単なる乾燥ではなく、手荒れ(手湿疹)という治療が必要な状態かもしれません。そこで、手湿疹の概要や原因、対策方法について紹介します。

なかなか治らないひどい手荒れ。もしかしたら治療が必要かも

手荒れを放置していると、かゆみで眠れなくなったり、指先の痛み・かゆみで仕事や日常生活に支障をきたしたりすることもあります。

まずは手湿疹がなぜ起こるのか、手湿疹とは何なのかについて知りましょう。

そもそも手はなぜ荒れるの? かゆみや皮がむける理由とは

手荒れは手の皮膚の一番外側(表面)にある角層と呼ばれる層の異常から始まります。角層の構造はレンガ塀を想像してみるとわかりやすいです。

角層はレンガのように積み重なった細胞とその隙間を埋める脂質からなる構造をしています。この角層の細胞は生きてはいないのですが、とても丈夫で、きちんと並ぶことで皮膚の内部を守るバリアの役割を果たしています。このバリア機能が外界から侵入してくる有害物質や微生物をブロックしてくれています。

また、バリアを構成する脂質は皮膚の中に水分をとどめる役割も担っています。皮膚の最も外層にあるこうした機能のおかげで皮膚は健やかな状態を保つことができており、また皮膚そのものが体の最も外層でバリアの機能を果たすことで、体を外界から守ってくれているのです。

角層のバリア機能の低下が手湿疹につながる

角層のバリア機能は、皮膚に繰り返し加えられる刺激によって徐々に低下します。例えば、食器洗いなどに使う洗剤は皮膚にとって強い刺激の一つです。

洗剤で洗い流された皮脂や保水成分はすぐには回復しません。角層は徐々にガサガサと毛羽立ち、きれいなレンガの構造ではなくなります。そうなると外界から皮膚内部を守っていたバリアが崩れ始め、外界からの刺激がさらに皮膚に入りやすくなってきます。

角層より内側の皮膚の細胞が刺激を受けると、赤み・腫れ・かゆみなど炎症を起こすようになってきます。そして、その炎症によりさらに角層はボロボロになっていきます。つまりバリア機能がいったん乱れてしまうと、この悪循環に入りやすくなります。この状態が手湿疹です。

手湿疹はひどくなる前に早めの対処を

角層のバリア機能が低下することで引き起こされる手湿疹は女性に多いといわれています。また、水仕事はもちろん、手を使う作業を頻繁に行う人にもよく見られるものです。手湿疹を放置してさらなる刺激にさらされ続けると皮膚の炎症がどんどん強くなり、強いかゆみや水ぶくれ(水疱)などが生じるようになります。

この状態にまでなるともはや皮膚の本来の力だけで治ることは難しく、治るまでに時間がかかるようになります。ハンドクリームなどの保湿はあくまで予防。もっと軽い段階なら効果がありますが、起きてしまった強い炎症を抑えていく効果はハンドクリームにはありません。

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