「ご冥福をお祈りします」はどう使う? 意味や注意点(例文付き)
お葬式(葬儀)の場面などで耳にする機会も多い「ご冥福をお祈りいたします」という挨拶の言葉ですが、意味や使い方を正しく理解できていますか? 宗教によっては使用を避けた方がいい場合もあります。今回はそんな「ご冥福をお祈りします」の使い方や代わりに使える表現について、コミュニケーションアドバイザー®の松岡友子さんに教えてもらいました。
令和という新しい時代を迎えて2年。このところ、各界において昭和や平成の日本に欠かせない存在だった方々の訃報が続いています。
訃報に接する時、私たちがよく耳にする「ご冥福をお祈りします」という言葉があります。
今回はこの言葉の意味と正しい使い方を考えてみましょう。
「ご冥福をお祈りします」の意味とは?
社会人となり交友関係が広がってくると、仏教以外の宗教の葬儀に参列する機会も増えてくるように思います。
どの宗教、どの宗派であっても、現世での一生を終えた人を送る葬儀は荘厳で重要な儀式です。
葬儀では生前の故人に思いをはせ、故人を悼み、故人が死後の世界で安らかであるよう祈りを捧げます。
その目的や意義は同じであっても、宗教によって葬儀や死後の世界の捉え方、表現は少し異なります。
ここではまず、「ご冥福をお祈りします」の言葉の意味を解説していきます。
「冥福」とは「死後の幸福」のこと
まずは、「ご冥福をお祈りします」に使われている「冥」という漢字の意味から見てみましょう。
冥
(1)くらい。おおわれて光がないさま。
(2)死者の世界。あの世。
(『漢字源 第四版』学研プラス)
このような意味から転じて、「冥福(めいふく・みょうふく)」とは「死後の幸福」(『広辞苑 第七版』岩波書店)となります。
「ご冥福をお祈りします」は仏教由来の言葉
宗教によっても「死」や「死後の世界」の捉え方が少し違ってきます。
「冥途・冥土(めいど)」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これは死者の霊魂が行く道。
また、行きついた世界、冥界(みょうかい)、黄泉、黄泉路(よみじ)という意味です。
私たち日本人の葬儀を最も多く執り行う仏教では、死者やその魂は来世(冥土)に向かって暗い道(冥途)を歩き続けるといわれています。
初七日(しょなのか)は三途の川のほとりに到着する日であり、そこから死者は7日ごとにさまざまな審判を受け、49日目に、極楽行きか地獄行きかが決まります。
四十九日の法要は、死者の来世が極楽浄土であるように祈る重要な行事ということになります。
つまり、冥土への暗い道すがら死者が無事であるように、そして冥土にたどり着いたなら平穏に幸せに過ごしてほしいと願う言葉、それが「ご冥福を祈る」という言葉です。
したがって、この言葉は仏教由来の言葉であるということが分かります。