「寂しい」「淋しい」の違いは? 意味や使い分けを解説
「さびしい」を漢字変換する際、「寂しい」なのか「淋しい」なのか悩んだ経験はありませんか? この二つの漢字に、意味の違いはあるのでしょうか。ライティングコーチの前田めぐるさんに、「寂しい」「淋しい」の違いや使い分けを解説してもらいました。
「さびしい」は、「寂しい」か、「淋しい」か? どちらの漢字を使えばいいのか? パソコンで入力変換しようとすると、どちらも出てきますよね。
一般的な言葉なので、仕事でも日常でも使う機会は少なくないはずです。ビジネス文書ではどちらを使えばいいのか、口頭ではどうか……など、悩むこともありますよね。
今回は、「寂しい」「淋しい」の意味や使い分けについて解説します。
「寂しい」と「淋しい」の意味はどう違う?
ここでは、「寂しい」と「淋しい」の意味を紹介します。
「寂しい」「淋しい」は同じ意味
「寂しい」と「淋しい」のそれぞれについて辞書を引こうとすると、単独ではなく、両方合わせて1つの言葉として意味の説明が記載されています。
さびしい【寂しい・淋しい】
本来あった活気や生気が失われて、荒凉としていると感じ、物足りなく感じる意。
(1)もとの活気が失せて荒廃した感じがする。
(2)欲しい対象が欠けていて物足りない。満たされない。
(3)孤独がひしひしと感じられる。
(4)にぎやかでない。ひっそりとして心細い。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
「さびしい」にも、いろんな理由からの「さびしい」状態があるのだと分かりますね。
「寂しい」も「淋しい」も意味は同じで、物や人など何らかのあるべき対象が欠けたり、活気がなく荒んでいたりすることから、孤独を感じ、心が満たされない様子を表す言葉だと考えられます。
したがって、「寂しい」と「淋しい」のどちらを使っても、国語的に間違いではないといえます。
「寂」と「淋」ではニュアンスが異なる
とはいえ、「寂」と「淋」は違う漢字なので、もし違う意味であれば使い分けることで、ニュアンスの違いを表現でき、意味がさらに伝わりやすくなるかもしれません。
そこで、それぞれの漢字について意味を調べてみます。
【寂】さび・さび(しい)・さび(れる)・セキ・ジャク
音がなくひっそりしている。しずか。さびしい。さびれる。
(『例解新漢和辞典』三省堂)
「寂」を使った熟語に「静寂(せいじゃく)」「寂寥(せきりょう)」などがあります。
「静寂」は「人の声や物音がせず、しんとしてさびしい様子」を、「寂寥」は「ひっそりと、ものさびしい様子」を表します。
また「寂」は、「人が死ぬこと。煩悩を離れた涅槃の境地」も意味しています。
【淋】さび(しい)・リン
水が絶えずしたたる。水が注ぐ。
人けがなくひっそりしている。孤独である。とぼしい。不足。
(日本語での用法)淋しい場所。淋しい生活。ふところが淋しい。
(『例解新漢和辞典』三省堂)
一方、「淋しい」は、「自分の身の回りに在るはずの人や物、お金が欠乏して満たされない孤独感からくる心さびしさ」を表します。
このように、より深くニュアンスを表現したい場合には、漢字の意味の微妙な違いで使い分けることも考えられます。