マウンティングする人 #女子を困らせる人
アラサー女子を困らせる人はこの世にたくさんいます。セクハラ、パワハラ、マウンティング、毒親……。「男は敷居を跨げば七人の敵あり」なんてことわざもありますが、女子のほうが敵多くない? そこでこの連載ではアルテイシアさんに、困らせてくる人々に立ち向かう知恵を授けてもらうことにしました!
今回のテーマは「マウンティングする人」。
なぜ人はマウンティングするのか。どんな人がマウンティングされやすいのか。マウンティングされにくくするにはどうしたらいいのか。
そのあたりについて考えてみた。
「マウンティングされやすい人」と「されにくい人」のちがい
世の中には「マウンティングされやすい人」と「されにくい人」がいる。
両者を分ける理由のひとつとして「見た目」が大きいと思う。私はマウンティングされにくい派だが、がっしり骨太体型で「本物のドラミング、聞かせてやろうか?」とゴリラ感を漂わせているからだろう。
おまけに顔圧も強いし、服装も派手である。実際の戦闘力はスカウターで測るとカメさん並みだが、見た目が強そうな印象なのだ。
マウンティングされやすい人の印象
マウンティング好きは「自分より弱い者を叩きたい」と思っているため、弱そうに見えるタイプを狙う。そのため小柄で華奢な女子や、地味でおとなしそうな女子が標的になりやすい。
今から牛乳を2億リットル飲んでも骨格は変わらないが、印象を変えることは可能だ。
背筋を伸ばして大股で歩く、声を張ってハキハキ話すなど、姿勢や振る舞いを変えるのは効果的。また「強(つよ)見えする、ナメられないファッションやメイク」のネット記事もあるので、ぜひ参考にしてほしい。
ちなみに、痴漢もおとなしそうな女性を狙うことで知られている。女性読者から「サングラスをかけて通勤するようにしたら、痴漢に遭わなくなった」との報告が寄せられた。これは手軽なテクなので試してほしいし、鉄道会社はキオスクでトゲつきのサングラスを販売してほしい。
トゲ肩パッドやメリケンサックなどの小物使いで「聖飢魔Ⅱ感」を演出すれば、マウンティング好きは寄ってこない。ラオウのように額に30本ほど血管を浮き上がらせたり、初対面で「こんにちは、狗法眼ガルフです(※)」と挨拶したりして、犬の話しかしないのもおすすめだ。
※狗法眼(くほうがん)ガルフ/『北斗の拳』に登場する犬好きの暴君。愛犬のブルドッグの名前は「セキ」
マウンティングされやすい人は怒るのが苦手
「攻撃は最大の防御」というが、私はやられたら殴り返すタイプなのでマウンティングされにくい。一方、怒るのが苦手なタイプは標的になりやすい。
ラオウのように闘気をまとうのがベストだが、一朝一夕で身につくものでもない。マウンティングされやすい派は「その場で怒れなくてあとからモヤモヤする」と言うが、堪忍袋の緒は人によって長さがちがう。私は緒が3ミリ程度しかないので、反射的にキレてしまう。かといって、ハサミで緒をカットするのも難しい。
マウンティングされない人になる方法
では、どうすればマウンティングされにくくなるのか。
反射的な笑顔を封印
前回のセクハラと同様、まずは反射的に笑顔を出すクセをやめよう。そのうえでプーチン顔や真顔返しをマスターしてほしい。どうしても笑顔が出てしまう人は、微笑みながらクルミを握りつぶすのもアリだろう。
自分を守る嘘をつく
また、ホラを吹くのもおすすめだ。「昔、失礼なこと言われて、棒で殴っちゃったんですよ~」と話して「おとなしそうだけど、やるときはやる」とアピールしよう。棒の部分は角材・バール・グレッチなど好みでアレンジしてほしい。
ホラは自分を守る有効な手段なので、どんどん吹いていこう。たとえばセパ両リーグ(セクハラ・パワハラ)に対しては「身内が弁護士でセパ案件を主に扱っている」と話しておけば、強力な抑止力になる。
やたらと自虐しない
やたらと自虐しないことも重要だ。自分を低く見せると、他人からも「こいつは見下してオッケー」とナメられて、マウンティングやイジリの標的になりやすい(かつモラハラ男やミソジニー男も引き寄せてしまう)。
かつては「独身女性は負け犬アピールしたほうが生きやすい」説もあったが、それが独身イジリや既婚マウンティングといった悪しき文化を助長している。人を見下す笑いはもう古いし、多様性社会の実現のためにアップデートしていこう。
「自分が好きか、嫌いか」を一番に意識する
マウンティングされやすい派には「嫌われたくなくてみんなにいい顔をしてしまう、八方美人なんですよ」と悩む女子もいる。だがそれは「人を差別しない、みんなに公平で親切」という長所なのだ。
そんな素晴らしい長所を変える必要なんかない。ただ世の中には人の長所につけこみ、利用・搾取してくる妖怪がいる。そんな魑魅魍魎ホイホイにならないために、「相手に嫌われること」よりも「自分が相手を好きか、嫌いか?」を意識しよう。
付き合う人を変える
「この人のこと好きだな、一緒にいて居心地がいいな」と感じる人と仲良くして、そうじゃない人とは距離を置く。これが快適な人間関係を築くコツである。
生きづらさを解消したいとき、もっとも有効なのは「付き合う人を変えること」。腐れ縁を断ち切れば、新たな縁が生まれる。斬鉄剣でつまらぬものをバッサバッサと斬ってほしい。
関係を切らずにマウンティングに対抗する方法
とはいえ、仕事関係やママ友付き合いなど、切りたくても切れない縁もある。
女性陣にヒアリングすると
「会社の先輩から『彼氏いないの? 大丈夫! 女子力磨けば結婚できるよ』とクソバイスされた」
「ママ友から『夫が一流企業に勤めてる』『夫にベンツを買ってもらった』と自慢される」
といった声が寄せられた。
そこで「うるせえな」「だからどうした」と返せればいいが、そうもいかない場面は多い。そんなときはハート様(※)のように相手の技を無効化するのがおすすめだ。
※ハート様/『北斗の拳』に登場するデブ。どんな攻撃も吸収する脂肪の塊のような肉体で、「拳法殺し」の異名をもつ
攻撃されてもダメージを受けずにケロリンパとしていれば、「こいつはマウンティングし甲斐がない」と相手のほうが離れていく。
「マウンティングし甲斐がない」と思わせるトーク術
拙著『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』でも紹介したが、ネズミ返し・スピ返しはあらゆる場面で応用できる。
ネズミ返し
「女子力磨けば~」に対して「お肌は磨いてますよ! 今こんな石けんを使ってて」とマルチ商法のパンフレットを広げる。
スピ返し
「結婚したいんですけど……神様はどこに導こうとしているのでしょうか……とにかく神に祈ります……」と神を連呼する。森友問題の総理夫人のメールをお手本にしよう。
いずれも相手は「あまり近づかないでおこう」と距離を置いてくるはずだ。「それだと悪い噂が立つ」「子どもがいじめられる」と懸念する方は、ナイツ返しはどうだろう。
ナイツ返し
「夫が○○商事に勤めてる」→「私は村上ショージを目指してる」、「息子が○○中に合格した」→「私はギョウ虫検査に引っかかった」とトークを展開すれば「いい加減にしろ」「どうもありがとうございましたー」と名コンビの誕生だ。
要するに「全然別の話をふろう」という提案である。「この人は話を聞いてくれる」と印象づけると、厄介な人を引き寄せやすい。まともに会話のキャッチボールをしようとせず、あさっての方向にボールを投げる練習をしよう。
「ベンツを買ってもらった」と言われたら「ベンツってドイツ車だよね、ドイツの移民問題についてどう思う?」と返してもいいし、「ドイツ軍人はうろたえないッ!」とシュトロハイム(※)の真似をして「ジョジョ読んでる? 何部推し?」と返してもいい(ちなみに私は四部推し)。
※シュトロハイム/『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する、気合いの入ったドイツ軍人。
「ドイツといえばシェパードだよね」と、犬の話しかしない狗法眼ガルフ返しもおすすめだワン。
「人の話を聞かない人」と印象づければ、マウンティング好きから身を守れる。それでいうと、一番簡単なテクは「よそみ」である。あさっての方向を向いて「ちょっと聞いてる?」とムッとされたら「あの壁のシミ、人の顔に見えない?」とオカルト返しをキメよう。
マウンティングはしない、されない、かかわらない
私はマウンティングが嫌いである。それはイジメや差別を憎んでいるからだ。物心ついたころからそうだったので、前世的な因縁かもしれない。
人に上下や優劣をつけて、自分より下の者や弱い者を攻撃する。それで自我を守って、劣等感を埋めようとする。そんな卑劣な人間とはかかわりたくないし、グレッチでめった打ちにしたい。
そんな方針で生きてきたので、女友だちはマウンティングに興味のない人ばかり。未婚・既婚・子持ち・子ナシ・バリキャリ・専業主婦……と属性はバラバラだが、価値観の合う人たちと平和に愉快に過ごしている。
だが過去を振り返って「あれはマウンティングだったな」と思う出来事がいくつかある。
女子校から共学の大学に進んで、学校のテストやバイトの成績がよかったとき、男子から「お前なんか大したことない」「俺のほうがデキる」「その程度で調子に乗るな」的な発言をされた。
その根っこには「女は男より下であるべき」というミソジニー(女性蔑視)があったのだろう。女子校には「できないフリをして男を立てろ」「男の脅威になるな」という文化がなかったので「ラピュタは本当にあったんだ……!」と衝撃を受けた。
「女の敵は女」「女はドロドロして陰湿」と語る人がいるが、それこそがミソジニーだろう。男女共にマウンティング好きはいて、それは性別じゃなく人間性の問題だ。ただ、男女でマウンティングの分野が異なる印象はある。
男は学歴・仕事・金のジャンルで優位に立ちたがり、女は結婚・子育て・容姿のジャンルで優位に立ちたがる、という傾向を感じる。これも根っこにジェンダーロールがあるのだろう。
するつもりのないマウンティングにも注意
いずれにせよ、私は「マウンティングはしない、されない、かかわらない」の三原則でいきたい。かつ「その気はないのに、相手にマウンティングと受け取られる」という誤解も避けたい。
たとえば、不妊治療中の女子から「子持ちの人に『子どもはまだ?』『産むなら早いほうがいいよ』とか言われると、相手に悪気はなくてもマウンティングだと感じてしまう」といった悩みをよく聞く。
人にはさまざまな事情があるし、その事情を話したくない人も多い。なのでやはり発言する側が気づかって、相手がどう感じるかを想像することが大事だろう。
「マウンティングと受け取ってしまう自分がイヤ」「そんな自分は性格悪いと落ち込む」といった声も耳にするが、それは人として自然な感情だ。
「他人と比べてもしかたない」とよくいうが、「比べるのはしかたない、人間だもの」と私は思う。
私も恋愛地獄行脚していたころ、セレブ記事を見ながら「ビクトリアはいいな、ベッカムがいて」とオイオイ泣いて「誰と比べとんねん」と友人につっこまれた。親友の結婚式に出席したときも、おめでたい気持ちと妬ましい気持ちが半々だった。
そうやってネガティブな感情を抱くだけなら、誰にも迷惑はかけてない。心の中は不可侵領域で、何を思おうが自由なのだ。
マウンティングと受け取ってしまうのは、性格が悪いからじゃなく、今がつらい状況だから。状況が変われば気持ちも変わる。
「どんなときでも人の幸せを喜ばなきゃ」なんてブッダみは出さなくていいし、無理するほうが余計こじらせる。「今は、これでいいのだ」とブッダじゃなくバカボンのパパになろう。
そして、そのつらい気持ちを今後に活かそう。たとえば選択的子ナシの私には、不妊治療のつらさはわからない。でも「ほしいものが手に入らないつらさ」ならよくわかる。
立場や属性がちがっても、同じ経験をしていなくても、想像力があれば人はわかりあえる。
「人それぞれ喜びも苦しみもある」と皆が胸に刻めば、七つの傷を持つ男がいなくても、世紀末な世界に平和が訪れるだろう。私は脂肪を有効利用して、「マウンティング殺しのアルテイシア」の異名を持ちたいと思う。
(文:アルテイシア、イラスト:若林夏)
※この記事は2019年05月22日に公開されたものです