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老害な人々 #女子を困らせる人

#女子を困らせる人

アルテイシア

アラサー女子を困らせる人はこの世にたくさんいます。セクハラ、パワハラ、マウンティング、毒親……。「男は敷居を跨げば七人の敵あり」なんてことわざもありますが、女子のほうが敵多くない? そこでこの連載ではアルテイシアさんに、困らせてくる人々に立ち向かう知恵を授けてもらうことにしました!

人は誰しも年をとる。「老人」と大きな主語でディスると、それはブーメランとなって己に返ってくる。

当コラムでは実年齢に関係なく、後述する“老害仕草”で女子を困らせる人を「老害」と呼びたいと思う。

また自身も老害にならないために、自戒を込めて考えてみたい。

>前回「マウンティングする人」はこちら

“老害おじさん”とは

“老害おじさん”の一種「ちょいワルジジ」

「こいつは老害だッー! 昭和の加齢臭がプンプンするぜッーーーーッ!!」と景気よく燃えたのが“ちょいワルジジ”(※)だ。去年の炎上記事だが、老害のお手本のような例で印象に残った。

※ちょいワルジジ/流行語「ちょいワルオヤジ」を生んだ編集長が語った「ちょいワルジジになるには美術館へ行き、牛肉の部位知れ」というネット記事が大炎上、擁護する意見がほぼなかったのが特徴。

その記事では「まだまだ現役でいたい」という高齢男性に「美術館にいる若い女子にウンチクを語ってナンパしろ」とアドバイスして「焼き肉屋で牛肉の部位について語り、『キミだったらこの辺かな』とお尻をツンツン」とセクハラもセットで提案していた。

「戯言(たわごと)は地獄の鬼にでも言え」という感想しかないが、それを直接本人に言って秘孔を突くのは難しい。

日本は儒教文化の国で、敬老精神が根強い。欧米のように義父のことを「ハイ、ナミヘイ!」とファーストネームで呼んだりもしない。

そんな年長者を立てる国では、おじいさんに向かって「ウゼえな、うせろ」という態度はとりづらい。

私も美術館でおじいさんに声をかけられたら「孤独なお年寄りなのかな」と民生委員の気分で話し相手になるだろう。こちらは福祉の精神で接しているのに「イケるかも」と勘違いされて、おまけにケツまで触られたら、困るというより殺すと思う。

世の中には枯れ専の女子もいるが、文字通り「枯れ感」に萌えるのであり、ギラギラと性欲丸出しのジジイに用はない。

この手の老害に共通するのは「鈍感力」だ。鈍感力ゆえに、相手が不快に思っていることに気づかない。時代の変化にも鈍感だから、あらゆる面でアップデートできてないし、それに本人が一番気づいてない。

周囲の女性陣からも老害被害の声が寄せられた。20代女子は職場の50近いおじさんに敬老精神で親切に接していたら、しつこく食事に誘われて、帰りに待ち伏せまでされたという。

それで困った末に上司に相談したら、「俺をセクハラで陥れるつもりだったのか!」と相手に逆ギレされたんだとか。

この手の老害おじさんは今すぐ現世から退場して、アシダカグモなどの益虫に転生してほしい。来世は害虫をたくさん駆除して挽回しよう。

“老害おじさん”の鈍感力はどこからくるか

老害の鈍感力で厄介なのは「自分は立場が上だから、相手はイヤでもノーと言えない」という自覚に欠ける点である。

TVで松本人志がいとうあさこに「俺がキスしたら、それはセクハラになる?」と聞いて、いとうあさこが「超うれしい!」と返す場面があったが、典型的な老害仕草だ。

私も20代のころ、取引先のおじさんにキスされたがイヤだと言えなかった。相手を怒らせて会社に迷惑をかけるとマズい、と思ったからだ。「やっぱり女は営業に向いてない」と判断されるのもイヤで、上司に報告すらできなかった。

後輩女子にはそんな目にあってほしくない。

なので前回書いたように「身内に弁護士がいて、セクハラ案件を主に扱っている」とホラを吹いて、相手をびびらせてほしい。その流れで「セクハラって絶対許せないですよね!」と同意を求めるのもおすすめだ。

また二軒目に誘われたり、無理に飲まされたりしそうになったときは「すみません、実は生理かつ下痢で体調最悪なんですよ」と話して、サッと帰ろう。「あわよくばホテルに」などと目論むジジイを萎えさせる効果もある。

「セクハラは笑顔でかわせ」「おじさんは手のひらで転がせ」といわれるが、そんなものを手に載せなくていい。

「俺がキスしたら、それはセクハラになる?」と聞かれたら「そういう質問自体がセクハラですよ」と教えてあげよう。

“老害おじさん”撃退法

老害おじさん撃退法

私も中年スパイダーマンになって若い女子を守りたいが、手首や尻から糸が出てくる気配はない。なので老害おじさんをブロックする方法を考えてみた。

「年下が好み」と日ごろからアピール

ひとつは、普段から「年下が好み、おじさんは恋愛対象外」とアピールすること。「アベンジャーズでは断然トムホ推し! どんなにお金持ちでもトニー・スタークは無理ですね、お父さんに見えちゃうんで」と強調しよう。

「お父さんみたいな年の人に性欲を向けられたら、めっちゃキモいじゃないですか~!」と無邪気に言い放つのもアリだ。

「感じ悪い人」になる

しかし敵は鈍感力ゆえに「おじさんは対象外でも、俺だけは別」とマジで思っていたりする。

そんなグレッチで叩いても砕けないメンタルの強さで、「今度食事でも奢るよ」と謎に上から誘ってきたら、反射的に笑顔を出すのはやめよう

眉間にしわを寄せて「えっ?」とプーチン顔から「すみません」と目をそらして、その後は無言。このコンボをキメて撃退してほしい。自分を守るために必要なのは「感じ悪い人」になる勇気である。

“老害おじさん”に「愛想のない、感じ悪い女」と思われても痛くもかゆくもないし、むしろ狙われやすいのは愛想のいい女子だ。

LINEの返事は「身内の不幸返し」

おじさんから「今度食事でも奢るよ! ○○ちゃんとHな話がしたいな~ナンチャッテ(_;)」とLINEがきたら、「何言ってるんですか~(笑)」と愛想よく返さなくていい。

立場的に無視できない相手なら、一晩おいてから「申し訳ありません、先ほどLINEを確認しました。現在、仕事が多忙を極めてまして」と事務的に返そう。

それでも折れない心で「忙しいんだね! 温泉で癒してあげたいな~ナンチャッテ(_;)」と返ってきたら「恐れ入ります、身内の不幸があってバタバタしてまして」と身内の不幸返しをキメよう。

私はこれで「ご愁傷さまです、そんなときにすみません」と相手に謝らせてきたので、身内をどんどん殺すのがおすすめだ。「入院中の祖父が予断を許さない状況」など、死にかけアピールも効果的。

“老害おばさん”とは

老害おばさんとは

女性陣にヒアリングすると、“老害おじさん”はセクハラ系が多いが、“老害おばさん”はクソバイス系が多いようだ。

私は「求められない限り、アドバイスはしない」とJJ(熟女)べからず帖に刻んでいる。

「痩せたいんですよね~」という世間話のノリで「結婚したいんですよね~」と話す女子に「だったら努力しなきゃ! 女子会ばっかりしてちゃダメ!」とドヤるのは、キャバ嬢に説教するジジイと同じだ。

そのうえ「若さという価値は有限なのよ」「結婚したいなら妥協しなきゃ」と呪いをかけたり、「私が若いころはブイブイいわせてたわよ~」と武勇伝を語ったりするのは、老害以外の何物でもない。

そこで相手が「さすが! 知らなかった! すごーい!」と返してくれるのは、敬老精神であり、おもてなしの心なのだ。

しかし“老害おばさん”は鈍感力ゆえに「なんで彼氏いないの? いつからいないの?」と土足でズカズカ踏み込んでくる。

それに「ぶぶ漬けでもどうどす?」とやんわり返しても、鈍感族は3杯おかわりしたうえにデザートまで要求してくるもの。

“老害おばさん”には「最強のさしすせそ」で対応

その手の相手には「最強のさしすせそ」を活用しよう。

「なんで彼氏いないの?」
あ?」

「いつからいないの?」
らね」

「ずっとひとりは寂しいでしょ」
「全然。ごーい私!」

「結婚出産が女の幸せよ」
ンスやばい(笑)」

「結婚したほうがいいわよ」
うか?」

これぐらい強気に出ないと、デリカシーのない鈍感族は気づかない。

“老害おばさん”には「明菜返し」も効く

とはいえ、そう強気に出られない場面もある。

新婚のアラサー女子は職場で「体調がすぐれないので飲み会はパスしたい」と言ったら、男の上司に「帰って旦那と子作りするのか?」とニヤニヤされて、女の先輩に「ひょっとして、おめでた?」とキラキラされたという。

前者は明らかなセクハラなので、老害ジェットを噴射して駆除するといい。

一方、後者は「おめでたなら祝福しなきゃ(キラキラ)」という善意の発言なので対応に困る。

そういうときは「いろいろあって……」と小声&伏し目で明菜返しをキメよう。

一番の“老害おばさん”は「母親」??

一番の老害おばさんは母親?

「一番の“老害おばさん”は、うちの母親だ」と宣言する女子は多い。

毒親じゃなくても「母といると頭をカチ割りそうになる」と嘆くのは、親世代は「身内には気づかい不要」という意識が強いからだろう。

そのため「あんたはいい年して独身で、親せきの前で肩身が狭いわ」など、絶対他人には言えない剛速球をぶつけてくる。

異性交遊に厳しかった親ほど、娘が適齢期になると「いい人いないの? 早く孫の顔が見たい」とダブルスタンダードぶりを炸裂させがちだ。

「『女も仕事して自立するべき』と教育したくせに『あんたは仕事ばっかりして』とイヤミを言われる」「専業主婦の自分を否定されてる気になるのかな」とうんざり呟く娘も多い。

そしていざ結婚出産すると、子育ての先輩として「ああしろこうしろ」と押しつけてくる。「私が子育てしてたときはもっと大変だったわ、と苦労マウンティングされてウザい」という声も耳にする。

母親自身がワンオペ育児で我慢してきた恨みから「娘は楽してズルい」「あんたももっと我慢しろ」と思ってしまう、そんなふうに「娘の幸せを願いつつ、娘の幸せを妬む母」は珍しくない。母親もひとりの不完全な人間だからだ。

“老害母”の対処法

とはいえウザいものはウザいし、「育児を手伝ってもらって感謝もあるけど、母ストレスは子育てよりもキツい」とげっそりする娘たち。

世代間のギャップ問題もあるだろう。「なんでそんなこと言うの?」と唖然とする発言をするお年寄りは多い。

うちの義母(夫の母)もサッパリ系で付き合いやすいが、「それツイートしたら火だるまやぞ」という差別発言を平気でする。

「あなたの人権意識はどうなってる?」と問いたいが「まあ、おばあさんだしな」とスルーしている。老人の意識や思考を変えるのは、おそらく無理だからだ。

なんにせよ不快なものは不快なので、イヤホンや耳栓をつけるなどしてミュートしている。前回、マウンティング対策として提案した「ナイツ返し」のように、まったく別の話をふるのもおすすめだ。

毒親じゃなくても「親とまともな話し合いは無理」「こちらが意見を言うと、否定されたと受け取って逆ギレされる」という娘は多い。そんなときはエシディシ返し(※)をお見舞いするのもアリだ。

※エシディシ/『ジョジョの奇妙な冒険』に登場するキャラクター。激昂すると、全力で泣きわめいてクールダウンするライフハックを持つ。

「あァァァんまりだァァアァ AHYYY AHYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!!」とギャン泣きすれば「育児ノイローゼかな? あまり刺激しないようにしよう」と親も配慮するんじゃないか。

喜怒哀楽の「怒」ではなく「哀」で表現すれば、相手は心配してやさしくなることが多い。

それにエシディシ返しをすると、自身も「フー、スッとしたぜ」とストレス解消できる。

泣きたいときはギャン泣きして、かつ愚痴を吐くことも大切だ。

オンラインサロン「アルテイシアの大人の女子校」では「愚痴のお焚き上げスレ」でみんなが愚痴を吐き出して、スッキリしている。つらい気持ちを話して誰かに聞いてもらえば、心は癒されるもの。

男性はつらいと言えない、助けを求められないから、孤立化して人生詰みやすいといわれる。

うちの父も去年自殺したのだが、「男は強くなければ」というジェンダー意識の強い人だったので、追いつめられたのだと思う。

おじいさんたちもエシディシのように素直に泣けばいい。

「女は感情的」というテンプレのクソリプがあるが、私は自分の感情を大切にしてケアしたい。そうじゃないと、他人の感情も大切にできないからだ。

大人の女子校を運営しながら「女同士はつらさでつながれるから、いいな」と感じる。

女同士で連帯しながら、今後も「女子を困らせる人」と戦っていきたい。そして老害じゃないおばあさんになって、デンデラで愉快に暮らしたいと思う。

(文:アルテイシア、イラスト:若林夏)

※この記事は2019年06月22日に公開されたものです

アルテイシア (コラムニスト)

作家。神戸生まれ。著書『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった 』『アルテイシアの夜の女子会』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『59番目のプロポーズ』ほか、多数。

●Twitter:@artesia59

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オタク格闘家と友情結婚した後も、母の変死、父の自殺、弟の失踪、借金騒動、子宮摘出と波乱だらけ。でも変人だけどタフで優しい夫のおかげで、毒親の呪いから脱出。楽しく生きられるようになった著者による、不謹慎だけど大爆笑の人生賛歌エッセイ!

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