【妊娠出産のウソ&ホント】おデブは妊娠しにくいってホント?
将来妊娠したい、したくないに関わらず、妊娠・出産は未知の世界。出産未経験の女性たちが感じている妊娠・出産にまつわる素朴なギモンについて、産婦人科専門医の尾西芳子先生がわかりやすく教えてくれます。ウソかホントかわからない情報に惑わされずに、正しい知識を身につけましょう!
妊娠前から太っている人の中には、産婦人科医に「これ以上、体重を増やしてはダメ」と注意される人もいると聞きます。また、「そもそもおデブは妊娠しにくい」という話も……。もしそれが本当なら、その理由は? そして、おデブの定義は? そこで今回は、そんなおデブの妊娠にまつわるウソ&ホントに迫りました!
本日の「ソボクな疑問」
Q.おデブは妊娠しにくいってホント?
<読者の声>
・不健康なほどでなければ関係ないと思う。(23歳/運輸・倉庫/事務系専門職)
・噂で聞いたことがあるので信じてしまう。(24歳/医療・福祉/専門職)
・太っていても妊娠する人をたくさん見てきた。むしろ冷えないからいいんじゃないかと思う。(30歳/機械・精密機器/事務系専門職)
・妊娠時にも出産時にも太っていると子宮や骨盤周りが圧迫され、影響が出てしまうと聞きました。(31歳/団体・公益法人・官公庁/その他)
尾西先生のアンサーは!?
答えは……
「ホント」です!
「太りすぎ」だけでなく、「痩せすぎ」も妊娠には不利になります。
おデブが妊娠しにくい原因はいくつか考えられますが、ひとつは「女性ホルモン」が関係しています。ぽっちゃりしている人には色白でつるんとした美肌が多いですが、これは脂肪細胞から女性ホルモンが出ているからです。この女性ホルモンが多すぎると、「既にしっかり出ていますよ」という指令が脳に行き、逆に脳からの「女性ホルモンを出しなさい」という卵巣への指令がストップしてしまうのです。結果、卵巣の働きが鈍くなってしまうという弊害が起きてしまいます。
一方、痩せすぎの場合も、体が自分を守ろうとして脳から「排卵する余裕がないからストップしなさい」という指令を出して、妊娠しづらくさせてしまいます。
さらに、脂肪には「アディポネクチン」というタンパク質があるのですが、肥大しすぎた脂肪ではかえって分泌量が減ってしまい、排卵しにくくなることもわかっています。太りすぎで生理不順の方が多いのはそのためです。
ちなみにここで言うおデブとは、体重を身長の二乗で割った「BMI値」が25以上の人を指します。中でも30以上は、レッドカード。不妊治療のために病院へ行くと、「30以上は診ません」「まずはダイエットをしてきてください」と言われるところもあるくらいです。ちなみに、BMI値が18以下の人は「痩せすぎ」と判断されます。なお、BMI値が22に近いほど妊娠しやすいと言われています。
また、おデブの弊害は妊娠のしにくさだけではありません。妊娠してからも「妊娠高血圧症」や「妊娠糖尿病」、「静脈瘤」といった合併症のリスクが高く、出産の際には産道が脂肪に圧迫されて狭くなっていることも。そうなると、赤ちゃんはお肉をかきわけて出てこなくてはならなくなるので、難産になりやすいのです。
さらに、「むしろ冷えないからいいんじゃないか」というコメントがありますが、脂肪はあたたまりにくく冷えにくい性質があるため、体が一度冷えてしまうと、ずっと冷えたままなのです。体が冷えれば、子宮が収縮しやすくなりおなかも張りやすくなってしまうので、やはり太りすぎは百害あって一利なしです。
とはいえ、妊娠したいからといって急なダイエットをするのは体への負担が大きいですし、心も体も余裕がないと、排卵は止まってしまいます。ですから、今のうちから、少しずつ体重を標準範囲にもっていきましょう。
(取材協力:尾西芳子、取材・文:ヨダヒロコ、撮影:masaco)
※画像はイメージです
※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.07.26)
※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください
※この記事は2016年12月31日に公開されたものです