【妊娠出産のウソ&ホント】ピルを飲んでいると、将来妊娠しにくくなるってホント?
将来妊娠したい、したくないに関わらず、妊娠・出産は未知の世界。出産未経験の女性たちが感じている妊娠・出産にまつわる素朴なギモンについて、産婦人科専門医の尾西芳子先生がわかりやすく教えてくれます。ウソかホントかわからない情報に惑わされずに、正しい知識を身につけましょう!
生理不順や生理痛を緩和しようと、「低用量ピル」を飲んでいる人もいるのでは? そういう婦人科系の悩みはもちろんのこと、排卵が抑制されるため、避妊目的で飲む女性も多いようです。だからこそ、ピルを飲み続けていると将来妊娠しにくくなるのではないかと心配してしまうのも事実。一体ホントのところはどうなのでしょうか? そこで今回は、ピルにまつわるウソ&ホントに迫りました!
本日の「ソボクな疑問」
Q.ピルを飲んでいると、将来妊娠しにくくなるってホント?
<読者の声>
・生理が軽くなる、量も生理痛も減る。子宮を休ませることができるので高齢で出産するならメリットのほうが大きい。(33歳/その他/クリエイティブ職)
・あまりたくさん飲むと妊娠しにくい体になる。(31歳/建設・土木/事務系専門職)
・特にカラダへの影響はない。(28歳/建設・土木/事務系専門職)
・乳がんのリスクは増えるということ。(26歳/医療・福祉/専門職)
尾西先生のアンサーは!?
答えは……
「ウソ」です!
妊娠しにくくなるということは基本的にありません。長期間服用していても妊娠に影響はないというデータもあります。
逆に、不妊の原因になる子宮内膜症という病気を持っている人は、きちんと飲んで進行を抑えたほうが妊娠しやすくなります。子宮内膜症は女性の10人に1人が発症すると言われており、自覚症状がない人も多いんです。そういう意味では、ピルは将来の妊娠に対してマイナスになることはないと思いますよ。
また、読者の声に「生理が軽くなる、量も生理痛も減る」とありますが、その通り。これは、生理のメカニズムが関係しています。排卵をすると子宮の内側の膜がだんだんと厚くなるのですが、妊娠しなければ必要がなくなり、子宮を収縮させて体の外に押し出します。このときの子宮の収縮が生理痛で、押し出されたものが月経血なんです。つまり、ピルを飲むことで排卵が起きなければ膜は薄いままなので、子宮も強く収縮しなくて済みますし、月経血の量も少なくて済みます。ですから、ピルは正しく飲んでさえいれば、生理痛の緩和だけでなく、最近増加しているPMS(月経前症候群)にも効果が期待できます。ただ、「子宮を休ませている」わけではないので、高齢出産に対してのメリットはありません。
そして、先ほど妊娠に影響はないとは言いましたが、読者の声にある「カラダへの影響はない」はウソです。ピルは薬ですから、当然副作用はあります。代表的なのが、血栓症。血が固まりやすくなり、肺梗塞や脳梗塞のリスクがあがると言われています。しかし、そもそも妊娠すると血栓症のリスクは増します。そのリスクに比べると、ピルによるリスクは6分の1程度。ものすごく稀であることは頭に入れておきましょう。
また「乳がんのリスクは増える」という意見についてですが、確かに増える可能性はありますが、一方で卵巣がんや大腸がん、子宮体がんなどリスクが減るがんも。トータルで考えると、ピルを飲む・飲まないことによるがんのリスクはあまり変わらない気がします。不安な人は、定期的に乳がん検診を受けるといいのではないでしょうか。
ちなみに飲用を中止すると、9割近くの人が3カ月くらいで排卵が戻ると言われています。ですが中には1カ月で戻る人もいるので、絶対に妊娠したくないのであれば、ギリギリまで飲み続けたほうがいいですね。とはいえ、いくらピルを飲んでいても、卵子の数は年相応に減っていきます。いつか子どもがほしいと思っている人は、そのことも踏まえて、将来設計を考えてくださいね。
(取材協力:尾西芳子、文:ヨダヒロコ、撮影:masaco)
※画像はイメージです
※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.07.19)
※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください
※この記事は2016年06月25日に公開されたものです