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秋の夜空に輝くたった1つの1等星の物語

夏の派手なイメージとは違い、物悲しい印象を受ける秋ですが、夜空を彩る星座もなんとなく寂しいです。

けれども、そんな中で頑張って明るく輝いている星がたった1つだけ存在します。

そこで今回は、けなげに光っているその星に注目してみましょう。

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秋の夜空に登場する唯一の1等星

夏の夜空には、織姫や彦星、さらに1つ加えた夏の大三角形など、たくさんの1等星たちが競演していました。

けれども秋になると、それらの星たちは夕方の西の空に早々と沈んでしまい、その後に登場する星には残念ながら目立つものがほとんどありません。

そんな夜空で唯一、明るく輝いているのが今回のお話の主役、みなみのうお座の1等星「フォーマルハウト」です。

星占いなんかでお馴染みのうお座は知っていても、みなみのうお座という名前の星座なんて聞いたことがないという方がほとんどだと思います。

しかし、その名の通り、南の夜空の低い位置に現れるみなみのうお座は、うお座には無い1等星が輝いていることから、実は本家よりも見つけやすかったりします。

「フォーマルハウト」というのは、アラビア語の「ファム・アル・フート」がもとになっており、魚の口という意味です。また、秋の夜空にただ1つ輝いている1等星であることから、「秋のひとつ星」という別名も持っています。

フォーマルハウトはどんな星?

フォーマルハウトは、その半径が太陽の1.8倍ほどの大きさをしていて、1.2等の明るさを持つ白色の星です。地球からおよそ25光年という比較的近い距離に位置する恒星で、生まれてからまだ2億年ほどしか経っていない若い星でもあります。

つまり、地球ではちょうど恐竜が繁栄していた頃に誕生した星ということになります。

ヨーロッパのような高緯度地域では、南の空のとても低い位置にしか見られないため、人々のあこがれも強く、見られればラッキーな星とも言われています。

また、このフォーマルハウトの周囲には細かい塵でできた環があることが分かっています。といっても、その環のスケールは大きく、半径は200億km以上(太陽~地球間のおよそ140倍)で、環の幅も24億km(太陽~地球間のおよそ16倍)もあります。

秋の空での見え方は…

ところで、このフォーマルハウト、実際の夜空ではどのように見えるのでしょうか。

東京の場合、10月中旬の21時頃の南の空の低い位置に見ることができます。もっとも高い位置になる真南のときでも、高度は25度程度までしか上らないため、南側が開けた場所で探してみてください。みなみのうお座はフォーマルハウトを除けばすべて4等星以下という暗い星しかなく、それ以外に周りに明るい星もほとんど無いので、意外と簡単に見つけられると思います。

なお、10月上旬なら22時頃、10月下旬なら20時頃の空でも同じように見ることができるはずです。

フォーマルハウトが属しているみなみのうお座の真上には、ちょうどみずがめ座が輝いていますが、その水瓶から流れ落ちてくる水をこの魚が大きな口を開けてゴクゴクと飲んでいるような姿で描かれています。

ちなみに、ギリシア神話によると、愛と美をつかさどる女神アフロディテが、川のほとりで他の神々と遊んでいたときに、怪物テュフォンに襲われ、あわてて魚に姿を変えて逃げたのが、みなみのうお座になったということです。

まとめ

明るい星が少ない秋の夜空で、ひときわ輝いて目立っているみなみのうお座の1等星「フォーマルハウト」。

「秋のひとつ星」とも呼ばれているこの星は、空の低いところにしか現れないため、西洋の人々にとってはあこがれの星にもなっています。

周りに明るい星は少なく、比較的見つけやすいと思いますので、興味のある方はぜひ鈴虫の音色でも聞きながら探してみてください。

(文/TERA)

●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年10月15日に公開されたものです

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