【新連載】元彼と友人の結婚式。懐かしいあのころの思い出が蘇ってきて……
そう。わたしには響子と同じように、
愛する男性と、おまけに子どもまでいる。
4年前社外研修で出会った物静かで大人な夫と、
1年の交際の末結婚し1年で息子を授かった。
夫は、樹とも、宏太とも似ていない、
真面目で少しガンコで、でも愛情の深い人だ。
しかし夫と結ばれたのは愛もあるけれど、
ちょっと言い表すのがむずかしい、
別の不思議な引力が働いた、と思っている。
今日、あらためて樹や宏太、
そして響子に会って縁の不思議を感じる。
好きなだけで、縁を保つことはできないのだ。
わたしはあらためて、響子の幸せを祈ると、
エメラルドグリーンのドレスの上から、
薄手のコートをふわりと羽織って着る。
さあ、これでパーティはおしまい。
わたしは日常に戻っていく。
もう一度振り向いて、樹に向かって手を振った。
樹は気づいてくれて、やはりわたしに手を振った。
あのキラキラした大学時代にはもう戻れない。
でもわたしにはステキな思い出があり、
友情や愛情に恵まれているから、きっと大丈夫。
(終わり)
※この記事は2014年09月04日に公開されたものです