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花火がさまざまな色で光るのはナゼ?「金属が起こす炎色反応」

「たまや~」や「かぎや~」の掛け声から連想されるものと言えば、夏の風物詩の1つである花火ですね。

【今はもう無くなってしまった星座たち「アルゴ座」「しぶんぎ座」】

日本人にとっては、とても身近な存在だと思います。

実にさまざまな色が空へと打ち上がり、見ていてとても美しいのですが、どうして花火はあんなにたくさんの色が出せるのでしょうか。

金属が起こす炎色反応

料理をしていて鍋から汁がふきこぼれた経験、皆さんはありませんか?

もしも、おみそ汁や煮物など、その汁に塩分が含まれていたとしたら、きっとガスの炎は一瞬黄っぽく見えたはずです。それは塩、つまり塩化ナトリウムに含まれているナトリウム成分が燃える時に反応したためです。

このように、ある種の金属が炎と反応し、決まった特有の色を出すことを「炎色反応」と言います。この言葉は、きっと学生時代に聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?

炎色反応の代表的な例としては、今ご紹介したナトリウム(黄色)のほか、リチウムやストロンチウム(ともに赤色)、カルシウム(オレンジ色)、カリウム(紫色)、銅(青緑色)など、実にさまざまです。

花火はこれらの現象を利用して作られています。職人さんたちは、燃える順番を計算して「星」と呼ばれる火薬を配置することで、あのように色が変化する花火が楽しめるわけです。

炎色反応はどうして起こるの?

それでは、これら炎色反応はどのような理由で起こるものなのでしょうか。
そこにはエネルギーの放出が密接に関係しています。

例えば、ナトリウム原子の場合、中心にある原子核の周りを全部で11個の電子が回っています。

けれども、それらは同じ1つの軌道を回っているわけではありません。イメージとしては、原子核に近い方から2個、8個、1個と、全部で3つの軌道に分かれて回っているような感じです。

しかし、原子は熱せられると熱エネルギーを吸収し、その結果、原子核の周りを回っている電子たちは外側の軌道へ移っていきます。

とはいえ、これは本来の安定した状態ではないため、電子たちはこの不安定な状態を長時間維持することができず、再び内側の軌道へと戻っていきます。その際に余分なエネルギーを光という形に変えて放出しているのです。

金属の種類によって、炎色反応の時に示す色が異なるのは、この電子の移動の仕方が違っているからです。移動の仕方が違えば、放出される光のエネルギー、すなわち光の波長も違うので、私たちの目にはそれぞれ別の色として見えるわけです。

「たまや」と「かぎや」に秘められた事実

冒頭でも紹介したとおり、花火の掛け声と言えば「たまや~」と「かぎや~」ですね。

これらは、江戸の町で人気を博した「玉屋」と「鍵屋」という二大花火師の屋号に由来しています。

「玉屋」の方が「鍵屋」よりも大きい感じがするかもしれませんが、実は「玉屋」は「鍵屋」の番頭さんが、鍵屋からのれん分けされて名乗っていた屋号です。

ところで、この二大花火師がともに活躍した期間は意外と短かったということをご存知でしょうか。

今からおよそ200年前となる19世紀の初め頃、現在の隅田川花火大会の前身ともいえる江戸の花火大会(両国川開き大花火)で、この二大花火師は見事に競演を果たします。この時に生まれたのが、「たまや~」と「かぎや~」という掛け声でした。

ところが、19世紀半ばに「玉屋」は失火による大火事を起こしてしまい、江戸の町から追放されてしまったのです…。

ちょっと切ない物語ですが、一方の「鍵屋」の方はその後も代々受け継がれ、現在でも「(株)宗家花火鍵屋」という屋号で活躍されています。

まとめ

日本の夏の夜空を彩る美しい花火。

炎色反応と呼ばれる科学の知識と、花火職人さんたちが培ってきた長年の経験によって、私たちはそんな美しい花火を毎年楽しむことができるのですね。

(文/TERA)

●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年07月04日に公開されたものです

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