お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

前戯とは? 医師が教える前戯のやり方とコツ

髙橋怜奈

前戯とはそもそも何? 男性と女性、それぞれの前戯の目的と、やり方のコツを産婦人科医の高橋怜奈さんが解説。挿入へ移るタイミングの見極め方も紹介します。

あなたは、前戯とは何かを理解していますか?

中には、その文字を目にして、読み方も分からず手当たり次第調べてこの記事にたどり着いたという人もいるでしょう。

「前戯」と書いて「ぜんぎ」と読みます。

今回は、そんな前戯とは何なのか、やり方や注意点を産婦人科医の髙橋怜奈先生監修のもと、解説していきます。

そもそも前戯とは?

セックスにおける前戯(ぜんぎ)とは、心身の性的な興奮を高めるために、手や口でお互いの体に触れ、刺激し合う行為。唇から、乳頭やクリトリス、腟、ペニスといった性感帯、そして耳、指、背中、太ももまで、全身が対象になります。

前戯の形は人それぞれで、決まった順序ややり方があるわけではありませんが、具体的には、

・全身へのタッチ
・口や体へのキス
・性器への愛撫

などが挿入の前段階として行われます。

その行為自体が気持ち良くて楽しいコミュニケーションですが、前戯にはもう1つ目的があります。

それは、男性器を女性器に挿入するために、女性の体液を十分に分泌させること。

つまり、前戯を通して「濡れる」という状態にしておき、スムーズに進めるための準備の役割も担うのです。

前戯をする上で大切な4つのポイント

女性と男性とでは体の仕組みが違っていて、男性は勃起すればすぐ挿入可能なのに対し、女性は時間をかけて受け入れ体制を整える必要があります。

女性側の準備が整っていない状態での挿入は、異物感が強いばかりで快感につながりにくく、その後の行為が味気ないものになってしまうことも。それどころか痛みが生じることもあり、セックスそのものが苦痛になる可能性だってあるでしょう。

これらを踏まえ、まずは前戯をする上で知っておきたい4つのポイントを押さえていきましょう。

(1)体の緊張をほぐそう

体が緊張していると、男女とも思ったような性反応を示しにくいものです。具体的には、女性は濡れにくくなり、男性は勃起しないことがあります。

例えば、寒いと身が縮みますが、これは体が緊張している状態。末梢の血管が収縮して血流が低下しているので、性器も反応しにくくなるというわけです。

肌寒いと感じたなら、暖房をしっかりつけたり、お布団の中に2人で入ったりして、まずは触れ合って温まりましょう。

また、お風呂で湯船につかると、体が温まるだけでなくリラックス効果も期待でき、さらに清潔になって一石二鳥です。このような緊張をほぐす工程から前戯は始まっていると考えましょう。

(2)濡れ具合にこだわらない

前戯の目的を、女性側の体液を分泌させるため、つまり「濡らす」ためと思っている人は少なくないと思います。前述の通り、それは前戯の大きな目的の1つ。

従って、それ自体が間違いというわけではないのですが、体液の分泌量にこだわって「濡れていない=感じていない」「濡れている=感じている」と決めつけるのはやめましょう。

濡らそうとするあまり愛撫が執拗になると、女性は痛みを感じやすくなりますし、濡れていれば挿入していいというわけではなく、実は女性の体の準備が整っていないこともあるからです。

分泌量には個人差があり、また体調や気分にも大きく左右されます。これは男性の勃起にも言えることで、相手のことがいくら好きでも、性的に興奮していても、緊張して勃たないことはあるのです。

それよりも、お互いに相手の表情や反応をよく観察しましょう。言葉で確認するのもいいと思います。

(3)手や爪を清潔にする

相手の体に触れる前に、手が清潔であることを確認しましょう。

また、爪の長さにも気をつけてください。粘膜は繊細なので爪が長いと傷をつけることがありますし、爪と指のあいだに雑菌が残りやすいのでそれを腟内に持ち込むことにもなります。

マナーとして、お互いに手や爪の状態は綺麗に整えておいてください。

(4)お互いの同意を確認する

セックスを始めるには「性的同意」が必要です。

「セックスしたい」という意思をお互いに確認し合う行為ですが、そこでOKを出したからといって全ての行為がOKというわけではありません。日本では「セックス=挿入」というイメージが根強く、それは「挿入をOKしたなら、そこに至るまでの行為も全てOK」という考えにつながりやすいため、注意が必要です。

本来なら、全ての行為に同意が必要で、それを確かめ合う会話やステップは工夫次第でとてもセクシーなものになります。

同時に「嫌な時はすぐに言える」という空気作りも大切にしましょう。安心できる関係性があってこそ、リラックスした前戯が可能になるのです。

前戯のやり方とコツ

前戯には、順番や触れ方にルールはありませんが、嫌がることをしないという基本は必ず守りましょう。

相手を思い、気持ち良くなっている姿を見れば、自身の興奮もきっと高まります。

では、心地良い前戯をする上で、男女別に意識したいやり方とコツを紹介していきます。

男性から女性に行う前戯の場合

まずは、男性から女性へと行う前戯について、方法やコツ、注意点を解説します。

(1)最初から乳頭やクリトリスを刺激しない

最初から乳頭やクリトリスといった性感帯と言われる場所に手を伸ばすのは、得策ではありません。

特にクリトリスの先端は、小さいながら神経がたくさん詰まった、デリケートな器官です。気持ちと興奮が高まっていないうちに触ると、痛みを感じる可能性が高いでしょう。

また、クリトリスは敏感なため、触れることでオーガズムに達することもあります。そこでいきなり最高潮の快感を味わってしまうと、他のところに触れても感じにくくなってしまうかもしれません。

従って、敏感なところは後回し!

まずは、できるだけ性感帯から遠く離れたところから始めて、次第にその部分に近づいていく。頭皮や指、頬、肩などは性感とは無関係と思われがちですが、そうしたところに優しく触れられることで気持ちが盛り上がることもあります。

「ここは感じない」と決めつけずにいろんなところに触れてみましょう。さらには、できるだけソフトに触れて、徐々に刺激の度合いを強めていく方が効果的です。

(2)まずは下着の上から触れる

乾いた指先で乳頭やクリトリスなど敏感な部分に触れると、摩擦が大きく、痛みとなり、快感が遠のいてしまいます。これは男性器にも言えることです。

それも踏まえ、初めは直接触れるのではなく、下着の上から触れてみましょう。

その時に使うのは、指の腹ではなく手のひらです。指先だとピンポイントの刺激になるので、まずは点ではなく手のひらの面で刺激してみてください。やがて相手が感じ始めてから指を使うと、痛みを避けられます。

また、潤滑剤で潤いをプラスするという方法もあります。

(3)膣内へ指を挿れる際は慎重に

女性の興奮が高まってきたら、挿入の前段階として指を腟に挿れて刺激をするパターンもあります。

指はペニスよりも細いので、慣らしておくために行われますが、中には指での刺激を好まない女性もいるので、相手の様子や意思はを必ず確認しましょう。

特に気をつけたいのが、勢いよく一気に奥まで挿入する行為、そして指を挿入した後、激しく動かす行為。腟内にあると言われる性感帯“Gスポット”にアプローチしたいのだと思いますが、そこまでの刺激を女性側が求めていない可能性もあります。

男性は女性に声をかけながら行い、女性は自分がそうした強い刺激を求めているのかどうかを考え、相手に伝えてください。

指を挿れるだけでじっと動かさない方が気持ちいいという人もいます。万人が感じる愛撫方法というのはないので、相手に合った刺激を心がけましょう。

(4)クンニリングスは優しく行う

男性が女性に行う前戯として、女性器を唇や舌などで刺激するクンニリングスがあります。

ここでも、まず重要なのは「性的同意」。自分がしたくないのであればする必要はありませんし、嫌がる相手に無理やりしてもいけません。「クンニリングスが嫌いだ」「今日はしたくない」と言う女性もいます。お互いが望んでいることが分かった前提で行いましょう。

クンニリングスは、最初から激しくしてしまうと女性が痛みを感じてしまうので、優しく、舌全体を使って舐めることを意識しましょう。この時、クリトリス一点を刺激するのではなく、全体的に舐めてあげることで興奮を高めやすいかもしれません。

また、ひげがチクチクしていたり、唇が荒れてがさがさだったりすると、女性が痛みを感じてしまう場合も。まずは自分の手の甲などに触れてみて、痛くないか確かめてください。

なお、オーラルセックスでも性感染症になるリスクがあります。従って、心配な場合は、性器を覆うデンタルダムを使用しましょう。

参考記事はこちら▼

女性が感じる部位とは? 性感帯とオーガズムを感じる触り方を紹介します。

女性から男性に行う前戯の場合

続いては、女性から男性に行う前戯について、見ていきましょう。

(1)初めはペニス以外の全身に触れる

女性と違って、男性は性感帯が少ない――これは思い込みに過ぎません。

序盤は指や口で、男性の全身に触れてみましょう。先ほど紹介した男性が行う前戯同様「できるだけ性感帯と遠いところから」「弱い刺激で」触れ始める、というのは女性から男性を刺激する場合にも当てはまります。

自分が「こんなところを触れられたい」「触れたら気持ちいいんじゃないか」と思う部分を愛撫するのもいいでしょう。その時、「くすぐったいだけ」と言われたらしつこくしないなど、相手のことを気遣った触れ方を意識してみてください。

意外な性感帯の発見になるかもしれませんし、その後でペニスに触れれば快感をより強く感じられるでしょう。

(2)睾丸に触れる際は相手の様子を確認

睾丸は、強い快感を得られるという人がいる一方で、くすぐったいだけという人もいる部位です。

触れるとくすぐったがるだけで、性感にはつながらない場合もあるので、相手に聞いたり様子をよく観察したりしながら、気持ちいいのかどうかを確認してください。

(3)手で男性器を刺激する場合は長い爪に注意

男性器を手で刺激する場合、長い爪だとそれが当たって男性が痛みを感じてしまう場合があります。従って、行為の前は爪の手入れをしておくと安心です。

また、伸びたネイルをしているようであれば、指の腹で刺激しましょう。

女性器と同じで強い刺激を痛いと感じる人もいるので、まずは優しく触れることが大切です。

(4)フェラチオは歯を立てずに優しい刺激から

男性器を唇や舌で刺激するフェラチオについて、「する・しない」で迷う女性も多いことでしょう。

どの行為にも言えることですが、やはり「自分がしたくないのであればしなくていい」というのが結論です。そして、相手も望んでいるか、お互いが「性的同意」を取ることは忘れずに。

実際にフェラチオを行う際は、男性器を傷つけてしまうのを防ぐため、歯を立てないようにしましょう。強い刺激を加えると粘膜部分が傷つくことがあるので、最初は優しい刺激から始めてみてください。

参考記事はこちら▼

男性の性感帯とはどこにあるのでしょうか? 場所と気持ち良くさせる触り方を解説します。

前戯から挿入へ移るタイミングの見極め方

性器の挿入には、お互いの同意が必要です。

前戯までの行為をしたのだから挿入もOKと単純に考えず、「そろそろ挿れても大丈夫?」などとコミュニケーションを取りましょう。

「自分の感覚」がタイミングを探るヒント

タイミングとしては、前述の通り、指を女性の腟に挿入して刺激した後に挿入を行うカップルが多いかもしれません。ただし、正解はないので、お互いに気持ち良くなり、「挿入しても大丈夫」「挿入したい」と思えた時がタイミングです。

では、具体的に見極める体のサインはあるのでしょうか。

前戯で十分気持ち良くなっていれば女性器は充血し、赤みを帯びて見えますが、それを目で見て判断するのは難しいことです。そんな時は、女性が「挿れても大丈夫」と思った、その感覚を頼りにしましょう。

挿入によって痛みを感じやすいのは女性であるため、女性自身が「大丈夫」と思えるまで、愛撫を続けてもらってください。

なお、挿れてすぐは異物感や痛みがあるけれど、挿入したまましばらくじっとしていればお互いに馴染んで激しいピストンを受け止められるようになるという場合も。

経験を重ねることで、男女共に自分の体にはどんなタイミングや方法が適切なのかが分かってくるはずです。

参考記事はこちら▼

いざ挿入しようとすると痛みを感じる。痛くなるのは膣が小さいから? 原因と対処法を医師が教えます。

セルフプレジャーで「自分のタイミング」を探ろう

先ほど、経験を重ねることで適切なタイミングや方法が分かってくると説明しましたが、実際のセックスだけが経験ではありません。1人で行うセルフプレジャーも、自分の体を知るのに有効な手段です。

セルフプレジャーとは、自分1人で快感を得る行為のこと。マスターベーションやオナニーという言葉で聞いたことがある人もいるでしょう。

特別なことでも後ろめたいことでもなく、欲求にしたがって自分自身を気持ち良くするのは、とても健全かつ前向きな行為。パートナーとのセックスがより良いものになる可能性も、秘めています。

経験が少ないうちは、自分が好きな刺激はどんなものか、あるいはどのタイミングで挿入するべきなのかが分かりにくいものです。

お互いにいろいろと工夫しながら試し、そして伝え合うことで徐々につかめていくものではありますが、セルフプレジャーを日常的に行って自身の体を探求するのも1つの手です。

自分が性的に快感を得られるのかどうかを確認する意味もあるので、自分はどうしたいのか、何が嫌なのかを伝えるためにも、セルフプレジャーで経験を重ねておくと、適切なタイミングが見えてくるかもしれません。

参考記事はこちら▼

セルフプレジャーとは? やり方やおすすめグッズについて解説します。

前戯だけで終わる夜があってもいい

前戯は挿入のための準備ではありますが、それ自体が豊かな行為です。

触れ合うことで、お互いに満たされ、「今夜は挿入がなくてもいい」とそのまま眠りにつく夜もあっていいでしょう。

お互いを思いやり、2人で気持ち良くなることができれば、形は何であれ満足感が高いセックスと言えます。

それを実現する方法の1つとして、前戯に関する知識を正しく持っておきましょう。

(監修:高橋怜奈、取材・文:三浦ゆえ)

※画像はイメージです

SHARE