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徹底的に寄り添う「共感キャリ」。大丸梅田店 高橋知世さんの働き方

#働くわたしの選択肢

マイナビウーマン編集部

「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。

取材・文:照井絵梨奈/マイナビウーマン編集部
撮影:永田洋輔

吸水ショーツや月経カップなど、いわゆる「フェムテック」について耳にする機会が増えた2021年。新語・流行語大賞にもノミネートされ、世の女性たちの関心が高まっていることも伺えます。

そんなフェムテックですが、大阪の大丸梅田店では今のように広く認知される前の2019年から、フェムテックグッズなどを扱うコンセプトエリア「ミチカケ」を展開していました。

なぜそんな早くから? そもそも、どうして百貨店でフェムテックグッズ? 「ミチカケ」をゼロからつくりあげた高橋知世さんにお話を伺いました。

やろうとしたことの先にフェムテックがあった

照井
高橋さんは「ミチカケ」担当になるまで婦人靴、婦人洋品のような、百貨店でもメインの分野を担当されてきたんですよね。なぜここにきて「フェムテックグッズを扱おう!」と思ったのでしょう?
高橋さん

もともとは今までやってこなかった婦人服をやりたいと思っていたんですよね。大丸梅田店って、5階から7階が婦人服エリアになっているんです。5階の担当になった時は希望通りに婦人服を担当できると思っていたのですが、ちょうどその頃5階エリアに改装が計画されており……。

大丸梅田店って地下2階~4階、6階はJR大阪駅駅直通の出入り口があるのですが、5階は繋がっていなくてお客様を呼び込みにくい構造なんですよ。

照井
そこで新しい分野としてフェムテックに注目されたのですか?

高橋さん

結果的にフェムテックグッズも扱っているのですが、「ミチカケ」の構想がスタートした時にはフェムテックをメインにしようと思っていたわけではないんです。

実際に店舗に立つ中で「ネガティブな感情も受け止めてくれる売り場にしたい」という思いがありました。今って「商業施設も売られている物もありすぎて選べない……」となってしまうこともあると思うんです。

でも、そんなネガティブな姿もありのままの自分なんですよね。それを受け止めてくれる売り場があれば良いなという話を当時のプロジェクトメンバーとしていて。それが「ミチカケ」の指針になりました。

やろうとしたことが先にあって、その結果としてフェムテックの要素が入ってきたという流れです。

照井
なるほど。ネガティブな感情に応えてくれる売り場って新しいですね。
高橋さん

今はいろいろな働き方があるけれど、例えばうまくいかないことがあっても自分のせいじゃない時ってあるじゃないですか。そういったネガティブなものの根源には何があるんだろう? と考えた時に女性のバイオリズムが浮かんできました。

百貨店として今までキラキラしたものには応えてきましたが、今まで取り扱えなかったモヤモヤにも応えることが「ミチカケ」の基礎になったんです。

物を売るだけではなく、お客様に寄り添えるのが百貨店の価値

照井
「ミチカケ」って扱う物だけではなく、「月のみちかけのように、あなたのリズムに寄り添う」というコンセプトも百貨店の売り場として斬新ですよね。新しいプロジェクトを進めるにあたって、大変だったことは何ですか?
高橋さん
ポップ作りですかね……。会社としてフェムテックグッズを扱ったことがなかったというのもそうですし、百貨店として担保すべき信頼性と、取引先の要求、お客様目線、そして「ミチカケ」らしさ。その全てを調整してポップを作り上げるのが大変です。

照井
ブロックリーダーとして外部の方との調整もされていますもんね。そんな大変な中で「ミチカケ」らしさを見失わないために強く意識されていることはありますか?
高橋さん

お客様目線ですかね。「ミチカケ」の場合は特に、お客様がご自身の悩みや問題に気づいていないことが多いんです。

例えば、これが婦人靴エリアだったら、靴を履くと足が痛くなることに悩んだお客様が来店される。でも、「ミチカケ」の場合は「生理痛があることは当たり前」「生理痛がひどかったら薬を飲むしかない」みたいに、他にも選択肢があることすら知らないこともあるんですよね。

担当者として、「じゃあ、どうしたら悩みに気づいてもらえるんだろう?」と考えてイベントや販促の内容を考えています。

照井
「生理=つらいもの」と多くの人が思っている状況を変えることから始めないといけないですもんね、大変すぎる……。
高橋さん
フェムテックグッズって未知な商品だからこそ、実際に使ったり、使った人の話を聞いたりしたいと思っている人は多いと思うんです。それをできるのが百貨店の強みなので、「気づき」から提案している最中です。
照井
百貨店って物を売る、買うだけじゃないんですね……! 今までお客様に寄り添ってきた経験が「ミチカケ」の売り場に反映されているんですね。
高橋さん
接客はもちろん、売り場作りでもお客様に寄り添うことは特に意識していますね。「ミチカケ」で扱う物はまだ広く知られていない物が多いので、身近に感じてもらえるよう、お客様に寄り添うんです。

うまくいかなかった時に支えてくれた人たちへ恩返しをしたい

照井
高橋さんは婦人靴担当だった時に婦人靴売り場内の個人売上No.1を達成したんですよね。セクションリーダーやフロアのサブマネージャーを経て、今はブロックリーダー。順調にキャリアを積み重ねていらっしゃる印象ですが、ご自身が以前から抱いていたキャリア像と今の姿は一致していますか?
高橋さん
元々、契約社員から正社員になりたいとは思っていたので、その夢はかなっていますね。でも、実は1回の試験で社員になれたわけではないんですよ。最初の試験では売り上げ実績もあったので自信があったのですが、結果として落ちてしまった。今では落ちた理由も分かるんですけど(笑)。
照井
とんとん拍子でキャリアアップしたわけではなかったのですね。
高橋さん

売り上げだけではなく、百貨店全体で考える視点が必要だったんだと思います。

試験に落ちてしまった時に周りの人たちが支えてくれて、その人たちに恩返ししたい気持ちからマネジメントに携わりたいと思いました。今はその立場にいるので、目標は達成しているかなと思います。

照井
もともといろいろな売り場を経験したいと考えていましたか?
高橋さん

そうですね。ただ、やっぱりフェムテックに携わるとは思っていませんでした。フロアの改装も百貨店としてなかなかないことですし……。でも、その時も先輩に「本当に限られた人しか経験できないことだから頑張りや!」と言ってもらえて頑張れました。

「ミチカケ」をオープンしたことで、物を売ることってやっぱり「寄り添う」ことが大切なんだなと気づけたのが良かったです。お客様はもちろん、取引先や売り場のメンバーにもそうですね。

いろいろな立場の人に寄り添っていくと矛盾が生じることも多くて大変なんですけど、それでも諦めずにヒアリングするなどしてうまく調整しています。

照井
百貨店の中でもメインの分野から、フェムテックという新しい分野にチャレンジされていますが、今後のビジョンなどはありますか?
高橋さん

まずは今やっていることを愚直に続けることですかね。フェムテックは今、ブームのようになっていますが、女性の健康課題を解決することという根幹の部分は一過性のものではなく、定着させなければと思います。

「ミチカケ」を通してSNSのライブ配信やイベント登壇のような情報発信もさせてもらえるようになったので、女性の健康課題を解決するためにも、そこはどんどん拡大して取り組んでいけたら良いですね。

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