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交渉力を高める方法は? 仕事で使える交渉スキルの鍛え方

中谷充宏(キャリアカウンセラー)

交渉力は、ビジネスシーンなどさまざまなところで生かせるコミュニケーションスキルの一つです。そんな交渉力を高めるためには、どのようなトレーニングをすれば良いのでしょうか。キャリアカウンセラーの中谷充宏さんが、交渉力の身につけ方を解説します。

ビジネスシーンで「交渉力」の必要性を実感したことがある人は多いのではないでしょうか。特に営業や販売、購買といった職種に就いている方は、より一層実感していると思います。

この、交渉力があるかどうかで、その後のビジネス展開が大きく変わりますから、重要性は誰もが認識しているはず。

では、交渉力を高めていくには、どうすればいいのでしょうか? 今回はこのテーマを解説していきます。

本当の「交渉力」とは何か

自分の要求を相手に飲ませる力が「交渉力」と考えている人が多いと思います。

ただ、これだと場当たり的で、例えばあなたが大幅に値切り交渉をした相手が、次回、報復に打って出ることも。つまり無理やり交渉しても、結果的に損害を被ることだってあるのです。

双方にとってWin-Winな関係を目指しながらも、自分の利益の最大化を導き出せること。これが本当の「交渉力」です。

この力が高ければ、双方間の信頼関係を築きつつも、自分にとって優位にビジネスを進められるのです。

「交渉力」の定義

ここで改めて、「交渉力」の定義について振り返っておきましょう。「交渉」を辞書で引いてみると、以下のような言葉が出てきます。

こう‐しょう〔カウセフ〕【交渉】

[名](スル)

 特定の問題について相手と話し合うこと。掛け合うこと。「労働条件について交渉する」

 交際や接触によって生じる関係。かかわり合い。関係。「悪い仲間との交渉を絶つ」「異性と交渉をもつ」「没交渉」

(『デジタル大辞泉』小学館)

今回紹介するのは、前者の意味での交渉力について。辞書を見ても、相手を一方的に説き伏せるのではなく、話し合うことが本当の交渉力であることがうかがえます。

交渉力がある人の特徴

交渉力が高い人はあなたの周りに必ず1人や2人いるはずです。ではそうした人達には、どういった特徴があるのでしょうか?

ここでは特徴的な3つに絞って、解説していきます。

(1)状況把握に優れている

交渉力が高い人は、「今のこの交渉は、どういった位置づけなのか」「今後どういった意味を持つのか」を俯瞰的な視点で把握できます。

時間を掛けてじっくり取り組むべきなのか、もしくは早期決着が必須なのか、状況によって取るべき戦略も変わってきます。

その場の状況を瞬時に把握できるため、適切な交渉ができるのです。

(2)臨機応変な対応ができる

一方的に自分の主張を繰り返すだけでは、交渉はなかなか成立しません。

「A案がダメならB案で」といったように、いかに具体的な代替案を複数考案して相手に提案できるかが交渉力を左右します。

交渉力が高い人は、そういった柔軟な対応力を保有しています。

(3)冷静さと情熱を併せ持つ

交渉シーンにおいては、データ分析に基づいて理路整然と自分の主張を説いていく冷静さが必要なのは言うまでもありません。ですが、それだけでは前に進まないケースもあります。

交渉力が高い人は、データやエビデンス一辺倒ではなく、人の感情に訴える情熱も保有しているのが特徴です。

論理的に意見を述べる冷静さと、相手の感情に訴えかける情熱をバランスよく使い分けることが大切です。

(4)根回しを怠らない

交渉力がある人は、根回しを怠らないのも特徴です。

ぶっつけ本番で交渉に挑むのではなく、事前に意見が対立しそうな人に話を通しておくなど、交渉がうまくいかなくなりそうな原因をつぶしておくといった工夫をしています。

(5)相手の話をよく聞く

交渉力がある人は、普段から人の話をよく聞く傾向にあるでしょう。

交渉の場でも、自分の意見や考えを一方的に押しつけることはありません。相手に質問をしたり話を振ったりできる、聞き上手な一面を持っています。

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交渉力がある人の特徴を、外資系OLコラムニストのぱぴこさんが解説しています。

交渉力を向上させるためにやるべきこと

交渉力を向上させるために、普段から取り組めることが3つあります。

(1)「DESC法」を意識して使う

DESC法とは、以下のような話法を指します。

Describe(現状を相手に伝えて)

Express(その問題点を表現し)

Suggest(自分の提案をして)

Consequence(そのもたらす結果を伝える)

結論から主張する「PREP法」と違って、相手の承認を取るための話法といわれています。最初に事実の確認から入るため説得力が増す点や、交渉相手に威圧感を抱かせないのがメリット。

交渉シーンで使える話法なので、会議や打ち合わせなど、人前でプレゼンテーションをする際などにこのプロセスに沿って話すように意識してみてください。

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PREP法を含むビジネスコミュニケーションの方法を詳しく解説しています。

(2)調査する癖をつける

情報戦で有利に立つためには、相手の情報が必須。商談に臨む際に、相手はどういった人なのか、ネット上はもちろん、社内・社外を含め、有益な情報収集ができれば、共通の話題や共感ポイントなどが見つかって、こちらの有利な展開に進む場合があります。

そのため、普段から気になる情報についてネットサーフィンしてみたり、たくさんの人とコミュニケーションを取ったりして、物事を調査する癖をつけておきましょう。

(3)壁打ち役を担ってみる

これはいわゆるコーチングのテクニックの一つで、テニスのボールを打ち返すごとく、相手に気づきを持たせるために質問を打ち返していく役割です。

例えば、あいまいな発言がされた際に「あなたはどうしたいのですか?」「なぜ今、それをやる必要がありますか?」などの質問を通して相手の主訴を引き出すことで、自分が優位に立つことができます。

交渉シーンだけでなく、普段誰かと会話をする時に壁打ち役を担うことを意識してみてください。

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コーチングの手法について詳しく解説しています。

交渉を成功に導く3ステップ

では、実際に交渉を有利に進めるにはどんなことを意識すれば良いのでしょうか。ここでは、交渉を成功に導く3つのステップを、具体的に解説していきます。

ステップ1:事前準備

何の対策もなしにノーガードで臨んでも、打ちのめされるだけです。有名な孫子の一節「敵を知り己を知れば百戦危うからず」の通り、まず相手を知ることが大事です。

(1)今回の交渉の意義を理解する

「今回の交渉は何のために行うのか?」「こちらが主張すべきポイントは何か?」「最終的なゴールはどこにあるのか?」といった今回の交渉の意義をきちんと理解した上で臨まないと、意図しない結果になってしまいます。

そのためまずは、交渉の意義を事前に整理しておきましょう。

(2)相手を知る

続いては、過去にどういった取引や交渉があったか記録を調べる、交渉相手の特徴や性格を調べるなど、相手に関しての情報を集めておきましょう。

ここで調べた情報を元に、相手の出方を想定しておくことが大切です。

(3)いくつかのストーリーを作っておく

相手の出方をいくつか想定しておいて、それに対してどう返していくのか、その流れをストーリーに落とし込んでおきます。

また、妥協するならばどこまで譲歩できるのか? レッドラインも決めておくと良いでしょう。

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交渉のストーリーを作るのに役立つ、ロジカルシンキングについて詳しく解説しています。

ステップ2:交渉中

続いては、実際に交渉をする時にどのようなことを意識するべきかのポイントをご紹介します。

(1)事前に準備したストーリーを展開する

出たとこ勝負でうまく対処しようというのは、ハイレベルなコミュニケーション力があるごく一部の人でないと難しいもの。

型にはめて交渉を進めるのが、一番効率的で効果的。そこで、交渉中は事前に作ったストーリーにはめこむように意識しましょう。

(2)相手に話させる

交渉で最も手ごわいのは、手の内を見せない相手。沈黙や無反応だったら、打つ手がなくお手上げでしょう。

そこで、先に相手にできる限りの情報を出させるようにします。そうすると相手のウィークポイントや交渉成功のヒントを得られる可能性が高まります。

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傾聴のやり方を、心理カウンセラーが分かりやすく解説しています。

(3)感情に訴える

ビジネスとはいえ、相手は感情を持つ人間です。機械のように全てに合理的な判断ができるわけではありません。

そこで「この条件じゃないと、私は会社に帰れないんです」と涙ながらに訴えるなどの芝居がかった作戦も、時には「あり」です。

もちろんやりすぎは禁物ですが、このようにユーモアを交えた方が交渉を有利に進められることも。

(4)想定外のことが起こったらリスケする

いくらストーリーを複数作っても、当日の交渉ではこちらの想定外の提案や主張がなされることもあります。

そうした場合は冷静な判断が下せないことが多いですので、即断即決せずに、「そのご提案については初耳ですので、一旦社内に持ち帰り、よく検討させてください」とリスケ(再スケジュール設定)しましょう。

ステップ3:交渉終了後

交渉終了後は、記憶が新しいうちに、その内容を議事録にまとめて、なるべく早く相手に送ります。

これにより交渉テーブルで決めた内容は確定します。また特に日本語はグレーな表現が多いために、文書化によって今後の争点を明らかにする役割もあります。

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議事録の書き方とコツを詳しく解説しています。

交渉力を身に付けるのにおすすめの書籍

最後に、交渉力を身に付けるノウハウやおすすめの思考法が解説されている書籍を3つ紹介します。

『交渉力 結果が変わる伝え方・考え方』(橋下徹)

橋下徹さんが弁護士時代から培われた類まれなる「交渉力」をまとめた本です。

誰でも実践できる具体的な交渉ノウハウがたっぷり紹介されています。橋下徹さんならではの交渉スキルを学べる1冊です。

『話す技術・聞く技術』

アメリカでは1999年に刊行され、既に70万部以上を売り上げているという長い人気を誇る1冊。

「何があったかをめぐる会話」「感情をめぐる会話」「アイデンティティをめぐる会話」という、交渉で成果を引き出す3つの会話をKWに解説されています。

『ビジネスパーソンのための超実践的交渉術 日本人の交渉のやり方』(松永隆)

交渉術の「基本技」を分かりやすく解説してくれる本です。

WEB会議やメールなど、さまざまなコミュニケーションツールを活用した交渉術を解説。交渉に苦手意識を持つ人におすすめの1冊です。

事前準備が交渉力を左右する

どんなスキルもそうですが、この「交渉力」も一朝一夕で身につくものではありません。

交渉がうまくいかないケースは、事前準備が足りていないことに大きく起因します。交渉は、社内でも社外でも、プライベートだって数多く存在しますから、今まで以上に周到に準備して臨んでみてください。

そうすれば、確実にこの「交渉力」が向上していきますよ。

(中谷充宏)

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※画像はイメージです

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