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デリケートゾーンがヒリヒリして痛い。痛みの原因と対処法とは

宋美玄(産婦人科医・医学博士)

デリケートゾーンがヒリヒリと痛い……なんてことありませんか? 痛みを感じる原因とは何なのでしょうか? また、痛いままだと病院に行くべきなのでしょうか? 産婦人科医・医学博士の宋美玄先生に痛みの原因と対処法を伺ってみました。

デリケートゾーンがヒリヒリして、下着とこすれて痛かったり、排尿のときに痛みを感じたりした経験はありませんか?

かゆみや痛みは、デリケートゾーンのメジャーな悩みだといわれています。なぜかゆみが出るのか、どの部分に痛みが出やすいのかなど、ヒリヒリの原因や対処法を紹介します。

そもそもデリケートゾーンとは?

そもそも「“デリケートゾーン”がどこを指すのか、よくわかっていない」という人も、少なくないかもしれません。かゆみや痛みの原因を話す前に、まずはデリケートゾーンについて簡単に説明しておきましょう。

一般的にデリケートゾーンとは、女性器のうちの「外性器」と呼ばれる器官のことを指す言葉です。女性器は腟、子宮、卵管、卵巣など体の中にある内性器と、恥丘、大陰唇、小陰唇、陰核(クリトリス)など体の外にある外性器とに大きく分けられます。このうち、外性器のことを通称、デリケートゾーンと呼んでいます。

女性の内性器と外性器

女性の内性器

女性の外性器

女性の内性器と外性器をイラストにしたのがこちらです。「女性器」というと、一般的には外性器を思い浮かべるかもしれませんが、体の中にあって普段は見えない子宮や卵巣も大切な女性器の一部です。

デリケートゾーンがヒリヒリ痛む原因

さて、外性器であるデリケートゾーンは、じつはかゆみや痛みが生じやすい場所でもあります。なかでもヒリヒリとした痛みを感じる場合、以下のようなことが影響しているかもしれません。

性感染症にかかっている

性感染症(STI)には、デリケートゾーンにかゆみや痛みを生じる病気もあります。代表的なものをあげてみました。

(1)性器ヘルペス

性器ヘルペスは、性器に小さな水ぶくれやただれができる病気です。単純ヘルペスウイルスというウイルスに感染することで発症します。無症状のこともありますが、なかにはヒリヒリ、ジンジンとした強い痛みで排尿困難や歩行困難を生じる人もいます。

一度感染すると、治療してもウイルスを体から完全に除去することはできず、疲労などで体の免疫が低下すると何度でも再発します。

(2)腟トリコモナス症

トリコモナス症はトリコモナス原虫によって引き起こされる病気です。一般的に男性よりも女性に強い症状が出る傾向があり、腟や外性器を中心に症状が現れて、強い悪臭がする白や黄色っぽい泡状のおりものが大量に出たり、デリケートゾーンにかゆみや痛みが生じたりします。

一方、男性は無症状のことが多く、あっても軽い排尿痛や頻尿がある程度といわれています。

(3)尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマの原因は、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスです。HPVは子宮頸がんを引き起こすことで知られるウイルスですが、尖圭コンジローマと子宮頸がんでは、同じHPVでも型が異なります。外性器周辺に小さな尖ったイボが生じるのがおもな症状で、痛みやかゆみが現れることもあります。

子宮頸がんワクチンのうち、4価(4種類のHPV感染を予防できる)と9価(9種類のHPV感染を予防できる)のワクチンを接種すると、尖圭コンジローマの予防にもつながります。

バルトリン腺に炎症が起きている

バルトリン腺とは腟口のおしり側に近い部分の両側にある、分泌液を出す部分のことです。通常は見たり触ったりしても、その存在はわかりません。バルトリン腺にはセックスの際に必要な潤滑液などを分泌する役割がありますが、何らかの原因で管が詰まって炎症を起こし、痛みが生じることがあります(バルトリン腺嚢胞)。

腟炎や外陰炎が起きている

腟炎とは、腟の粘膜に起こる炎症のこと。これにかかるとデリケートゾーンに痛みやかゆみを生じることがあります。若い女性の場合、主に雑菌が腟に入り込むことで炎症が起こります。雑菌による感染の経路はさまざまですが、セックスでの感染や、トイレで排泄物をきちんと拭き取らなかったりすることが多いようです。

一方、外陰炎とはデリケートゾーンの皮膚が炎症を起こすことです。腟炎と同じく、新たな感染が原因である場合と、外陰部や腟にもともといる常在菌が何らかの原因で異常繁殖して起こる場合とがあります。

おもな症状は腟炎同様、おりものの異常や外陰部の痛み、かゆみです。外陰炎が単独で生じることもあれば、腟炎と一緒に発症することもあります。おもな腟炎、外陰炎には、以下のようなものがあります。

(1)カンジダ外陰腟炎

腟の常在菌であるカンジダ菌が、何らかの原因で異常繁殖することで起こる、腟や外陰部の炎症です。抗菌薬を服用して、ほかの菌が減少した時や、妊娠中など一時的に免疫が下がったときに発症することがあります。発症するとデリケートゾーンにかゆみが生じたり、白くてポロポロしたおりものが出たりします。腟の洗浄や抗真菌薬によって治療を行います。

(2)おりものシート、生理用品などによる外的刺激を原因とした炎症

おりものシートや生理用ナプキンなどを、交換せずに長時間付けっぱなしにすると、おりものや経血、排泄物などが外陰部に付着した状態になり、それが原因で炎症が起こることがあります。また、おりものシートや生理用ナプキンそのものが刺激となって、炎症を起こし、ヒリヒリとした痛みを生じることもあります。

(3)セックスによる摩擦で小さな傷ができている

外陰部の皮膚や粘膜はデリケートで、セックスによる摩擦などで小さな傷ができ、痛みやヒリヒリした感覚が生じることがあります。「セックスの後、デリケートゾーンがヒリヒリする」と婦人科を受診する人は少なくありません。

(4)肌荒れが起きている

広い意味では肌荒れも炎症の一種ですが、アンダーヘアの処理方法の影響などが原因で肌荒れが起き、ヒリヒリとした痛みを感じることもあります。使っているデリケートゾーン用のソープが合わなかったり、ボディソープなど刺激の強いソープで洗ったりしている場合も同様です。

病院に行く目安は? 何科に行けばいい?

デリケートゾーンにかゆみや痛みがある場合、まずは病院(医療機関)を受診し、原因を明らかにするとともに治療法を提示してもらえると安心です。何科を受診するのかは、異常が起きている部位によって異なります。V・I・Oゾーンの内側であれば婦人科がよいでしょう。それよりも外側、すなわち太ももや内股部分であれば皮膚科を受診しましょう。

受診の際、デリケートゾーンにかゆみや痛みがあることを伝えるのが恥ずかしいかもしれませんが、医師からすればよくあることです。恥ずかしく思うことはありません。それよりも、不快な症状を早く治すことのほうが大切です。

「いつもと違う」が受診の目安

受診の目安としては、まず自分でデリケートゾーンや患部を見てみて、異常だと感じるかどうかがひとつの基準になります。自分の目で見て、「いつもと違う」と感じるような赤みや湿疹がある場合は、迷わず受診しましょう。

多くの場合、炎症があればかゆみや痛みとともに外性器が赤くなったり、熱をもったりします。このような症状があれば、なるべく早めに診察を受けることをおすすめします。

そして、その「いつもと違う」状態を感じるためにも、できれば普段から自分の外陰部を確認しておき、通常の状態を把握しておくことが大切です。

自分でできる痛みの対処法

デリケートゾーンのかゆみや痛みは自己判断せず、医療機関で診てもらうのが一番ですが、セルフケアで改善できる場合もあります。自分でできる対処法の一部を紹介します。

(1)おりものシートや生理用ナプキンをこまめに変える

長時間同じおりものシートや生理用ナプキンをつけっぱなしにすると、デリケートゾーンが蒸れて、かゆみや痛みの原因になることがあります。これらをこまめに変えることで、症状の改善につながる可能性は少なくありません。

(2)市販薬を使う

症状が軽い場合は、薬局で売られているデリケートゾーン用のかゆみ止め薬で治ってしまうこともあります。肌荒れしやすく、おりものシートや生理用ナプキンなどでかぶれることが多い人などは、こうした市販薬を使うのもよいでしょう。

ただし、性感染症によるかゆみや痛みの場合、市販のデリケートゾーン用かゆみ止めでは治らず、その間に症状が進行してしまうことがあるので要注意です。塗ってから明らかに症状が悪化したり、5日程度たっても症状が改善しなかったりする場合は、医療機関への受診が必要です。商品の説明書きをよく読んで、使いましょう。

(3)肌荒れしにくいデリケートゾーン専用ソープを使う

デリケートゾーンは、体のほかの部位でいうと目や鼻、のどと同じく、皮膚とは違う粘膜が露出している部位です。加えて、健康な成人女性の腟内は、常在菌である善玉菌により、pH3.8~4.5の弱酸性に保たれています[*1]。

これらのことから、皮膚を洗うためのボディソープをデリケートゾーンに使うと刺激が強すぎたり、腟を清潔に保つために必要な常在菌まで洗い流してしまったりして、ヒリヒリしたり、かゆみが生じたりすることがあります。

ボディソープであっても弱酸性のものならばデリケートゾーンに使ってもよいですが、専用のソープと比べると「洗った後にヒリヒリする感じがある」という人も少なくありません。腟内のpH値にできるだけ近い、弱酸性のデリケートゾーン専用ソープを選ぶのがおすすめです。

そのほか、アンダーヘアの量が多く、そこに付着した汚れが原因で痛みやかゆみが生じている人の場合、アンダーヘアの脱毛をするのも有効なセルフケアのひとつです。ただし、デリケートゾーンに炎症が起きているときにアンダーヘアの処理をするのはNGです。必ず症状が改善してから行うようにしましょう。

症状がひどくなる前に受診を

デリケートゾーンのヒリヒリ感は、決して恥ずかしいことではありません。かゆみや痛みを感じた場合、まずは医療機関=婦人科を受診することを考えましょう。早めに対処することで、治療が長引かずに済むこともあります。

我慢して症状がひどくなる前に医療機関を受診し、その後の再発防止のためにセルフケアを活用するのが、スマートな対処法かもしれません。

(監修:宋美玄、取材・文:山本尚恵)

※画像はイメージです

※記事内の「病院」とは診療所を含めた医療機関を指します

参考文献

[*1] 「病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科」(メディックメディア)p.79

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