痛いニキビの治し方。大きく悪化する原因と正しい対処法
大きいニキビが痛い……。初めは小さなニキビだったのに、放置しているとだんだんと大きくなって痛みを感じるようになることってありますよね。そもそも、ニキビが悪化する理由は何でしょうか? また、赤くなったり痛みを感じたりするニキビはどうやって治せばいいのでしょうか? 皮膚科学会認定専門医・医学博士の横井彩先生に伺ってみました。
突然肌に現れる、ぷっくりとした小さなふくらみ。痛くもないので放置していると、しだいに赤みを帯びて痛みだし、そのうち黄色い膿(うみ)を出すようになってしまう……。これは、多くの方が経験したことのあるニキビの経過です。
「ニキビくらいでわざわざ医師に診てもらうまでもない」と思われがちですが、ニキビは、「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)」という、れっきとした皮膚疾患です。また時には、ニキビだと思っているものが実は別の皮膚疾患であることもあります。
ニキビのメカニズムやよく似た病変の特徴、治し方について解説します。
ニキビはどのようにできる? 発生から悪化までの経過
私たちが「ニキビ」と呼ぶものは、医学的には尋常性痤瘡という炎症性の皮膚疾患です。まずはニキビがどのようにできるのか、その後どのように悪化するのかについて見てみましょう。
そもそもニキビとは何なのか
ニキビの正体は、毛穴がふさがり、そこに皮脂が溜まったものです。
毛穴の内側には脂腺という、皮脂を分泌する器官が付いていて、脂腺から出た皮脂は通常であれば毛穴の入り口から表皮側に出てきます。ところが、何らかの理由で毛穴の入り口がふさがり、皮脂が外に出られなくなって毛穴の中にそのまま溜まってしまうことがあります。
こうしてふくれ上がったものが面皰(めんぽう/コメド)、いわゆる白ニキビ・黒ニキビと呼ばれるものです。
面皰に炎症が起きる理由
ふさがった毛穴の中に皮脂が溜まった状態(面皰)が続くと、ニキビの原因菌であるアクネ菌が増殖して炎症を引き起こします。
アクネ菌は、普段は常在菌として皮脂をエサにしながら皮膚の健康維持を助ける一面がある一方で、エサとなる皮脂が豊富に詰まっている面皰内では異常に増えてしまい、毛穴の炎症を引き起こす原因になってしまうのです。
アクネ菌によって面皰に炎症が起きて赤くなったものが赤ニキビ、膿が溜まってきたものが黄ニキビと呼ばれるものです。炎症が悪化して深い部分にまで及ぶと、硬くしこりのようになったりもします。ニキビが痛くなるのは、面皰に炎症が起きて悪化してしまったサインの一つといえます。
※以下、単に「ニキビ」と表記する場合には、白ニキビや赤ニキビなどすべての段階の「尋常性痤瘡」全般を指します。
ニキビができやすい場所とその原因
ニキビは詰まった毛穴に皮脂が溜まることで生じますが、特に発生しやすい場所(体の部位)は決まっています。
ニキビは脂腺が集まる部位に発生しやすい
人体には脂漏部位(しろうぶい)といって、脂腺が密集している場所があります。ニキビはこの脂漏部位にできやすいとされています。主な脂漏部位は次の通りです。
・頭部の髪の毛が生えているところ
・Tゾーン(おでこからこめかみ、眉間や鼻筋・鼻翼)
・Uゾーン(頬やあご、口のまわり)
・前胸部(デコルテからみぞおちあたり)
・背部(背中)特に肩甲骨間部
・へそのまわり
・外陰部(膣の外側=デリケートゾーン)
顔は最もニキビが自覚されやすい部位ですが、思春期にはおでこによく出る傾向がある一方で、歳を取るにつれてUゾーンから首などにかけて、より下の方へとに発生しやすい場所が移っていくといわれています [*1]。
鍵を握るのはホルモンバランス
ニキビは皮脂の過剰な分泌がきっかけとなって発生しますが、皮脂の過剰分泌には性ホルモンも関係していると考えられています。なかでも男性ホルモンのはたらきが強くなることによって、皮脂の分泌が増えます。
ニキビが思春期によくできるのは、この時期に男女とも男性ホルモンのはたらきが強まるからだといわれています。大人になってからも、ストレスや睡眠不足によるホルモンバランスの乱れや性周期に伴う女性ホルモンの変化などが皮脂の分泌に影響すると考えられています。
物理的な刺激がニキビの発生や悪化につながることも
なにげない物理的な刺激が、ニキビを悪化させる要因になっているかもしれません。
例えば、おでこやうなじ、頬やあごといった場所には要注意。これらの部位には髪の毛の先端や衣服が皮膚をチクチク刺激したり、頬杖をついたり無意識のうちについ手でいじってしまったりと、日ごろから多くの刺激が加えられており、こうした刺激がニキビを悪化させる要因でもあるのです。
痛いニキビの治し方。放置しないで皮膚科を受診
ニキビが痛むのは、面皰部分に起きた炎症が広がり始めているから。この状態のニキビに対して自分でできる対処は、ありません。無理に中身を出そうといじってしまうと、炎症がより広がったり悪化したりする可能性があります。そして、症状が悪化すればするほど、目立つ痕として残りやすくなってしまうのです。
また、ニキビには市販薬だけで対処するという人がほとんどのようです。しかし、ニキビ(尋常性痤瘡)治療では、今できているニキビを治す「急性期の治療」と、よくなった後も再発を防ぐために続ける「維持期の治療」と、両方の治療を組み合わせて行うことが重要です。
ここ十数年でニキビ治療が進歩して、医療機関ではニキビのさまざまな段階に合わせた治療ができるようになりました。保険適用で受けられる治療薬の種類も増えているので、早い段階で皮膚科へ行くことをおすすめします。
【ニキビができる前/できてから】ふだんの生活で気をつけたいこと
ニキビの発症や悪化を予防するために、ふだんの生活で気をつけたいのが肌の健康です。しかし、ニキビについては医学的に不確かな情報も多く出回っており、それらに惑わされないように注意する必要があります。
食事はバランス良く
例えば、「チョコレートを食べすぎるとニキビができる」といわれることがありますが、特定の食品がニキビの要因になることは証明されていません。ニキビができるから特定の食品を食べてはいけないということはなく、必要なのは皮膚をはじめ全身の健康を考えながらバランスの良い食生活を心がけることなのです。
1日2回の洗顔を
日常的なケアでおすすめしたいのは、適切な洗顔です。過剰な皮脂がアクネ菌の増殖につながるため、適度に顔を洗い、余分な皮脂を取り除き皮膚をきれいに保つのがよいと考えられます。とはいえ、ゴシゴシ洗いすぎはかえって皮膚を乾燥させて傷つけるおそれがあるため、1日2回のていねいな洗顔をおすすめします。
大きくて痛むのは、もしかしたらニキビではないかも?
ニキビだと思っていたら実は違うものだったということがあります。ここでは、ニキビのようでニキビではない別の疾患を紹介します。
しこりのあって大きいものは「粉瘤」かもしれない
最初はニキビかと思っていたものがどんどん大きくなり、やがてしこりや痛みを伴うことがあります。これはニキビ(尋常性痤瘡)ではなく、粉瘤(ふんりゅう/アテローム)という皮膚の腫瘍かもしれません。粉瘤はニキビと似ていますが、全く別の病態です。
粉瘤とは皮膚の内側に袋状のスペースができ、その中に垢(角質)や皮脂が溜まってしまったものをいいます。ニキビは数mm程度のものが多いのに対して、粉瘤は1~2cmかそれ以上の大きさにまでなることがあります。
粉瘤の中身は独特のにおいのある白くて脂っぽいカスのようなもので、その大きさやにおいにより、ニキビと区別できることがあります。
まぶたや目のまわりにできる小さなブツブツも粉瘤の一種
まぶたや目の周囲に白~黄白色の小さなブツブツができることがあります。白ニキビの状態にも似ていますが、これは稗粒腫(はいりゅうしゅ)という、とても小さな粉瘤です。
やはり皮膚の内側にできた袋状のスペースに垢と皮脂が溜まった状態ですが、炎症を起こすことは滅多にありません。稗粒腫は硬く、目のまわりと外陰部(デリケートゾーン)くらいにしかできません。
粉瘤を治すには
粉瘤は良性の腫瘍であるため放っておいても構いませんが、細菌によって化膿したり、中身が破裂して炎症を起こしたりすることがあります。大きくなったり炎症を繰り返したりする場合には治療した方がいいといえますが、粉瘤の治療は薬ではなく手術など外科的な治療です。
皮膚に傷をつける治療であり、大きさや部位によって行うべき治療法は異なります。治療の痕をできる限り目立たなく済ませるためにも、切除する時期や方法について皮膚科や形成外科の医師とよく相談しましょう。
痕を残さないためにもニキビには早めの対処をしよう
通常より大きくて痛いニキビは、炎症が皮膚の深い部分にまで広がっているか、時にはニキビとは別の病変である可能性もあります。いずれにしろ自己流の対処でよくなるものではありません。
また、小さくて痛みがない場合でも、ニキビは悪化すると痕が残りやすい疾患なので、早い段階から積極的な対処を心がけたいものです。
最近ではニキビ治療も進歩して治療法が増えたので、ニキビを治したいと思ったら皮膚科を受診するのが一番です。
また、ニキビではなく粉瘤だった場合には手術など外科的な処置が必要となることを考えると、ニキビかどうかの見分けが自分ではつきにくい場合もやはり皮膚科を受診してみるのが一番といえます。
ニキビを発症するきっかけとなる皮脂の分泌量については、ホルモンに左右されると考えられています。生理前によくニキビができるという人が多いですが、これも性周期に伴うホルモンの変化と関係しているとされています。
また、大きなニキビがたくさんできるとともに無月経が続いたり毛が濃くなったりといった症状を伴う場合には、ホルモン分泌の異常が隠れていることも考えられるため、皮膚科だけでなく婦人科に相談することも検討しましょう。
(監修:横井彩、構成・文:株式会社ジーエムジェイ)
※画像はイメージです
参考文献
日本皮膚科学会尋常性痤瘡治療ガイドライン改定委員会〔編〕:尋常性痤瘡治療ガイドライン2017.日本皮膚科学会誌127(6):1261-1302,2017.(https://doi.org/10.14924/dermatol.127.1261)
清水宏(北海道大学):あたらしい皮膚科学 第3版.中山書房,2018.
林伸和:日本香粧品学会誌40(1):12-19,2016. (https://doi.org/10.11469/koshohin.40.12)
皮膚科Q&A(日本皮膚科学会ホームページ) 2020年10月20日閲読
(https://www.dermatol.or.jp/qa/)
[*1] 林伸和, et al.:日本皮膚科学会雑誌111(9):1347-1355,2001.