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生理前&生理中は安全日? 避妊なし・中出しでも妊娠しないのか医師が解説

セックスの基礎知識

太田寛(産婦人科専門医)

及川夕子

安全日と危険日とはいつ? また、生理前や生理中は避妊しなくてもいい、中出ししても大丈夫という噂は本当? 産婦人科医の太田寛さんが安全日・危険日の考え方や生理前後の妊娠・リスクを詳しく解説します。

「生理中は安全日」「生理直前は妊娠しにくい」「排卵日=危険日なので、生理中は妊娠しない」など、色々なウワサを耳にしますよね。

でも、確実に妊娠しない「安全日」や妊娠しやすい「危険日」って本当にあるのでしょうか? また、あるとすれば、これらはいったいいつのことを指すのでしょうか?

安全で充実したセックスライフのためには、正しい避妊の知識が不可欠。産婦人科医の太田寛先生に詳しく教えてもらいました。

安全日と危険日とは?

「安全日」や「危険日」とはいつのことを想定しているのでしょうか。本当にそんな日が存在するかなどについても考えてみましょう。

安全日はいつ?

一般によくいわれている安全日とは、「避妊せずにセックスしても妊娠しない日」または「比較的妊娠しづらい日」を指すようです。

つまり、この場合の「安全」とは、妊娠の危険がないということ。

本当にそんな日はあるのでしょうか?

安全日について知るために、まずは排卵から妊娠までのメカニズムを見ていきましょう。

排卵から妊娠に至る仕組み

妊娠の仕組み(排卵~着床まで)

女性の体は、通常25~38日に一度、卵巣から卵子を排出します。その日を「排卵日」といい、卵子は卵管の先端から少し奥に入った卵管膨大部という場所で精子を待ちます。

女性が最も妊娠しやすいのは、排卵⽇の約2日前~排卵日までの間といわれています[*1]。

妊娠は、精子が子宮を経て卵管内に入り、そこで卵子と出会って受精した後、受精卵が子宮に向かって移動し、子宮内膜に着床することで成立します。

排卵日から考えた安全日

精子と卵子の寿命から考えた「安全日」

こうした妊娠の仕組みを考えると、妊娠しづらい日とは、精子と卵子の出会う確率が低い日ということになるでしょう。

そして、それは理屈の上では、排卵の翌日以降~次の排卵が起こる1週間前ぐらいまでの期間となります。

卵子の寿命は約1日、精子は性交後約3日間〜最長5日間、女性の体内で生存しているといわれているからです[*2]。

基礎体温から考えた安全日

基礎体温から考えた「安全日」

また、基礎体温を基に安全日がいつなのか考えることもできます。

その場合、高温期に入って4日目ぐらい~高温期が終わる(次の生理が始まる)までの間を安全日と呼ぶことが多いようです。

排卵は、基礎体温が低温期から高温期へ移行する2、3日の間に起こるといわれることが多く、さきほど説明した卵子の寿命から考えると、高温期の4日目くらいには受精する力がなくなっていると考えられます。

また、低温期の長さは個人差が大きいため、低温期に入ったあといつ排卵が起こるかわかりません。

そのため、高温期の終わりに安全日も終わると考えられているようです。

▶次のページでは、確実な安全日はあるのかを解説します。

確実に妊娠しない安全日はない

ここまでで、精子・卵子の寿命から考えた場合と、基礎体温から考えた場合の安全日を紹介してきましたが、避妊しなくても確実に妊娠しない安全日というものはありません。

さきほど紹介した2つの考え方では、いずれの場合も「いつ排卵するのか」を予測することが肝心です。しかし、排卵日を正確に予測するのはとても難しいことなのです。

生理周期が安定していて、基礎体温が低温期と高温期にはっきりと分かれている人であっても、毎日きちんと基礎体温を測定した場合でないと、いつから高温期に入ったのか知ることはできません。

基礎体温がきちんと低温期と高温期に分かれていない人の場合は、いつ高温期に入ったか見極めるのはとても難しいでしょう。

また、高温期に入ったことがわかったとしても、排卵が起こるのは低温期から高温期へ移行する数日の間ということしかいえないので、このうちのどこで実際排卵したかを基礎体温から特定することはできません。

さらに、排卵日は体調や環境のちょっとした変化から影響を受け、変動することが珍しくありません。

生理周期が乱れがちな人はもちろん、普段は規則的に生理が起こっている人であっても、なんらかの影響を受けて排卵日が通常より遅れる・早まるという変化は簡単に起こります。

つまり、確実に妊娠しない「安全日」と言い切れる日はない、と考えておいたほうが良いということなのです。

では、反対に「危険日」であればわかるのでしょうか?

危険日はいつ?

危険日とはいつ

危険日とは、一般に「妊娠しやすい日」のことをいいます。

女性が最も妊娠しやすいのは、排卵⽇の約2日前~排卵日までの間です。

また、卵子の寿命は約1日、精子は性交後約3日間〜最長5日間なので、排卵の5日程度前~排卵日の翌日までは、妊娠する可能性の高い日といえるでしょう。

しかし、さきほど「安全日」の項で説明したとおり、生理周期や基礎体温から推測する排卵日はあくまでも予測にすぎず、安全日や危険日が“予測通り”にくるとは限りません。

また、生理周期は常に一定というわけではなく、そもそも生理不順であったり基礎体温が低温期と高温期に分かれていない人では、排卵時期の予測も困難です。

生理周期や基礎体温から排卵日を確実に予測するのは、難しいことなのです。

妊娠を希望している場合に、基礎体温を測って「おおよその排卵日」を推定することは有効な方法の一つ。

ですが、うまく測れていなかったり、測り方を間違えたりすることもあるため、これを避妊方法として利用するのはおすすめできません。

結論としては、危険日についても、だいたいこのくらいとわかることはあっても、確実に特定するのは難しいということ。

妊娠を望まないなら、その間は常に避妊をすることが大切なのです。

▶次のページでは生理前や生理中のセックス・中出しで妊娠する可能性について解説します。

生理前や生理中のセックスや中出しでは妊娠しないの?

前述の通り、生理前や生理中だからといって、絶対に妊娠しないわけではありません。

「生理前&生理中のセックスでは妊娠しない」なんて耳にしたことがあるかもしれませんが、これは嘘。

続いては、その理由について考えてみましょう。

生理前&生理中のセックスでも妊娠する!

生理前や生理中のセックスでも妊娠する可能性があるのは、以下のような理由からです。

・生理周期は簡単に乱れる
・排卵日を正確に把握するのはそもそも難しい
・女性の体内に入った精子が、生理終了後、排卵日になるまで生存している可能性もある
・生理の終わりかけが排卵日と近い人もいる(とくに生理周期が短めの人)
・実は生理の出血ではないものを生理と勘違いしている可能性も(排卵期出血など)

また、生理の終わりごろにセックスをして、精子が生きているうちに排卵が起きれば、妊娠する可能性があります。

その他、排卵日の数日前から起こる排卵期出血を生理だと勘違いし、出血したタイミングでセックスすれば妊娠する可能性があります。

▶次のページでは、生理中のセックスにまつわるリスクを解説します。

生理中のセックスは妊娠以外のリスクもいっぱい

生理中のセックスは、ほかの理由からもあまりおすすめできません。

自分の体を守るためにも、どんな影響があるのか、どうしたらリスクを回避できるのかなどを正しく理解しておきましょう。

細菌やウイルスなどに感染しやすくなる

生理中のセックスは、血液と接触することになるため、HIVやその他の性感染症に感染するリスクがより高まります。血液を介して感染するC型肝炎などのリスクも高くなります。

感染を避けるためにも、生理中のセックスは控えたほうがベター。

また、避妊だけでなく性感染症の予防にもつながるので、生理中かどうかにかかわらず、オーラルセックスを含めて性交渉の際は、コンドームを使うようにしましょう。

行為の最初から最後までコンドームを正しく使うようにすると、感染のリスクを減らすことができます。

性感染症とは?

おもにセックスでうつる病気のこと。梅毒、クラミジア感染症、ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症などがあり、HIV感染症のもその一つです。口や喉、肛門から感染することもあります。

子宮内膜症のリスクを上げる可能性

生理中にセックスするとこの逆流を促し、子宮内膜症のリスクを上げる可能性がある

子宮内膜症は、子宮内膜の組織が、子宮以外の場所で増殖したり・はがれたりを繰り返す病気です。

通常、子宮内膜がはがれ落ち生理の出血となって排出されますが、これが卵管から逆流して腹腔に漏れだすことで、子宮内膜症を引き起こすと考えられています。

生理中にセックスするとこの逆流を促し、子宮内膜症のリスクを上げる可能性があるといわれています[*3]。

女性がオーガズムに達すると、子宮は精液を吸い上げるように収縮するため、逆流する量がさらに増えることは十分考えられます。

不妊の原因にもなる「子宮内膜症」とは?

本来子宮の内側だけにあるはずの子宮内膜組織が、卵巣や腹膜、子宮の裏側(ダグラス窩)など、子宮の内側以外の場所にも発生し、痛みや不妊などを引き起こす病気です。

通常とは違う場所にできていても、女性ホルモンの影響を受け増殖や出血を繰り返しますが、体外に排出できないために、炎症や癒着を引き起こしたりします。また、生理痛、排便痛、過多月経、不妊などの原因になります。子宮内膜症は、生殖年齢女性の約1割にみられます[*4]。

生理前&生理中は「安全日ではない」

このように、生理中やその前であっても妊娠の可能性はあり、生理前&生理中=安全日ということではありません。

また生理中のセックスには、妊娠以外にもさまざまなリスクがあることを忘れないでおきましょう。

パートナーと良好な関係を築くためにも、妊娠を望んでいないならコンドームなどの避妊をしっかり行い、必要なときには「ノー」と言える勇気を持ちましょう。

自分の体を守ることができるのは、自分自身なのですから。

(文:及川夕子/監修:太田寛先生)

※写真はイメージです

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

参考文献
[*1]日本生殖医学会 Q8.不妊症の治療にはどんな方法があり、どのように行うのですか? http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa08.html

[*2]アメリカ産科婦人科学会 Fertility Awareness-Based Methods of Family Planning
https://www.acog.org/Patients/FAQs/Fertility-Awareness-Based-Methods-of-Family-Planning?IsMobileSet=false

[*3]月経中の性的活動と子宮内膜症の関係, Int J Fertil Steril. 2019 Oct-Dec; 13(3): 230–235.

[*4]「病気がみえる」vol9 p123

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