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生理中のナプキンかぶれがつらい。原因とおすすめの対処法 #女の体と心の保健室

及川夕子

生理中、デリケートゾーンのかぶれやかゆみに悩まされる女性は少なくないようです。あまりにもかゆいと、何か病気かも? と不安になることもあるかもしれません。今回は、ナプキンかぶれやかゆみの原因とその対策について、婦人科医の高尾美穂先生に解説してもらいました。

生理中のナプキンかぶれがつらい。原因とおすすめの対処法

今回のお悩み
「もともと敏感肌でトラブルを繰り返しやすいので、生理中はデリケートゾーン全体だけでなくお尻のほうまでかゆみやかぶれが出ることがある」(30歳/その他/クリエイティブ職)

お話を伺ったのは……高尾美穂先生

イーク表参道の副院長・高尾美穂先生イーク表参道 副院長/産婦人科専門医・医学博士・婦人科スポーツドクター。
東京慈恵会医科大学大学院修了後、同大病院産婦人科助教、東京労災病院女性総合外来などを経て現職。大学病院では婦人科がん(特に卵巣がん)専門。西洋医学をベースに、ヨガ、アンチエイジング医学、漢方、栄養学、スポーツ医学を多角的に用い、女性の心身をさまざまな角度からサポートすることをライフワークとしている。

2人に1人はナプキンかぶれを経験

生理中、紙ナプキンで肌がかぶれたことはありますか?【意識調査】

生理中のナプキンかぶれについて、「毎回かぶれる」と答えた人は8.5%、「ときどきかぶれる」と答えた人まで含めると、2人に1人はナプキンかぶれを経験していました。

具体的な悩みとしては、

・「仕事が抜けられなくてトイレに行けないことが多々ありかぶれてしまう」(35歳/医療・福祉/専門職)

・「ムレにくいナプキンを使っているけれど、夏になるとどうしてもムレてしまう」(27歳/医療・福祉/専門職)

・「敏感肌なので、生理の量が多いときにかぶれて困っている」(34歳/運輸・倉庫/事務系専門職)

など、長時間つけていることからくるかぶれの悩み、敏感肌ゆえの悩みなどがあったほかに、特に夏にムレやすいという声も目立ちました。また、「まめに取り替えているのに、どうしてもかぶれて、かゆくなります」(29歳/その他/その他)と、かぶれだけでなくかゆみで悩んでいる人も。

一方、「デリケートゾーンがムレるのがいやなので、タンポンを使用している」(26歳/小売店/販売職・サービス系)など、何らかの対処をしている人もいました。

※マイナビウーマン調べ
調査日時:2019年5月31日~6月3日
調査人数:387人(25~39歳の働く未婚女性)

ナプキンかぶれはなぜ起こる? 原因と対策

ナプキンかぶれはなぜ起こる? 原因と対策

ナプキンかぶれの一番の原因はムレ

――今回、先生にお聞きしたいことはナプキンかぶれについてです。生理中に、ナプキンに触れる部分がかぶれてしまう、かゆくなってしまうという人は、約半数ぐらいいるようなのですが、原因はなんですか?

高尾先生一番の原因はムレですね。生理中はデリケートゾーンが湿った環境になりやすく、かぶれが起きやすい状態になっています。ナプキン表面の素材は、肌に優しいものでできていても、ナプキン自体が漏れないような設計になっているので、どうしても通気性が悪くなります。おりものシートを常に貼っている人も、かぶれやすくなりますね。

それ以外の原因としては、ナプキンやショーツが擦れて起こる摩擦によるものなどが考えられます。

――「仕事中はトイレに頻繁に行けない」「ナプキンを替えたくても替えられず、どうしても長時間ナプキンをしたままになってしまう」という声もありました。たとえば、布ナプキンに変えたら、かぶれませんか?

高尾先生:布ナプキンを試してみて、快適なら切り替えるのも手ですよね。ただ、布ナプキンにしてもすぐに取り替えられないと、経血を吸った濡れた状態で肌にしばらく密着するわけなので、肌への負担はないとはいえません。

働く女性は、ピターッとした生理ショーツの上にストッキングを履いて、デスクワーク中心の生活という人もいるでしょうから、それもムレの原因になっていると思います。仕事中は仕方がないにしても、帰宅したら生理ショーツを脱いで、普通のコットンショーツに着替えて過ごしてみたらどうでしょうか。家なら下着を汚してしまっても、こまめに取り替えることができますよね。できる範囲でいいので、通気性をよくする工夫を取り入れましょう。下着の素材や、生理ナプキンが肌に合っているかどうかも、もう一度見直してみるといいかもしれません。

タンポン、市販薬で対処するときの注意とは?

――デリケートゾーンのムレや摩擦が原因なのだとしたら、ナプキンではなくて、タンポンを使うというのはどうですか? 肌に触れる部分のムレは防げそうです。

高尾先生:そうですね。タンポンは腟内で経血を吸収してくれるので、ナプキンに比べるとムレは気になりにくいです。かぶれも少ないと思います。

ただし、タンポンも正しい使い方を守って使ってほしいですね。1回の使用は8時間を超えないこと。経血量に合わせてこまめに取り替えること。それから、製品の注意書きには「タンポンは連続使用せず、ナプキンと交互に使用してください」と書いてあるんです。知っていましたか? 非常に稀ではありますが、連続で長時間使用するとTSS(トキシックショック症候群。突然の高熱とともにめまいや吐き気などさまざまな症状が出る。発症したら直ちに治療が必要。タンポンの不適切な使用以外に、切り傷ややけどなどによってもかかることがある)が起こることがあるとされています。その予防のためにも、添付の説明書きに従って使用するようにしてくださいね。

――タンポンは連続使用しないほうがよいのですね。気をつけます。ところで、かぶれ、かゆみがあるときには、市販のかゆみ止めを使ってもよいでしょうか?

高尾先生:かゆくてなんとかしたいときには、ひとまず市販のデリケートゾーン用のかゆみ止めやステロイドクリームで様子を見てもよいかもしれません(使用する際は、説明書をよく読みましょう。なお、陰部の中のほうの粘膜部分にはこれらの薬は使用できません)。ただ、数日間使用しても症状がよくならない場合は、医療機関を受診しましょう。

かゆみ止めといっても、かゆみを抑えるもの、保湿するもの、感染症の治療薬など、いろいろな種類があります。よくあるのが、以前病院にかかったときにもらった薬を、再利用してしまうケース。以前と似たような症状でも、同じ原因・病気とは限らないので、注意してくださいね。

強いかゆみがある場合、カンジダ腟炎かも

強いかゆみがある場合、カンジダ腟炎かも

――かぶれやかゆみの原因が何か、ということを知って対処することが重要なんですね。

高尾先生:そうですね。デリケートゾーンのかゆみは、婦人科でもよく見られる症状。強いかゆみとともにおりものに異常があったり、外陰部のヒリヒリ感などがあったりする場合には、ナプキン由来ではなく、カンジダ・雑菌・トリコモナスといった、病原菌による症状とも考えられます。

カンジダ腟炎・外陰炎はとてもポピュラーな病気です。カンジダは、健康なときでも皮膚などにいる常在菌で、寝不足だったり、疲れていて体調が悪かったり、腟内の環境が変化したり、ムレやすい環境にあったりすると繁殖し、かゆみやヒリヒリ感などを引き起こします。ナプキンの長期使用や性交渉が原因になることもあります。

――デリケートゾーンのかゆみがひどいときに病院にかかるとすると、どのタイミングで受診すればよいですか?

高尾先生:カンジダの場合、症状が軽いうちは通気性をよくして、しっかり休むことで自然に治ることも多いです。一方、症状がつらくて我慢できないときや早く治療したいとき、性病かな? と不安なとき、おりものがいつもとちがうときなどは、婦人科を受診しましょう。

かゆみを出す性感染症は、よくあるカンジダ症のほかに、腟トリコモナス症、尖圭コンジローマの主に3つ。性感染症の場合は、専用の薬で治ることが多いです。生理中なら、出血がなくなってから受診してください。

デリケートゾーンにかゆみを引き起こす感染症

性器カンジダ症(カンジダ腟炎・外陰炎)
カンジダという真菌(カビの仲間)によって、外陰部や腟に炎症が起こります。多くの女性は一生に一度はかかるといわれるくらいポピュラーな病気です。主な症状は、外陰部の激しいかゆみ、カッテージチーズのような白くボロボロしたおりもの。ときに、外陰部が腫れて熱をもつように感じたり、性交時や排尿時に痛みを感じたりすることがあります。

カンジダは、もともと体に存在する常在菌ですが、病気やストレスなどで抵抗力が落ちたとき、抗生物質の服用などがきっかけとなって繁殖することがあり、炎症を起こします。

腟トリコモナス症
トリコモナス原虫の寄生によって起こる感染症です。悪臭のする泡状の黄色いおりものが増え、外陰部や腟が炎症を起こしてかゆくなりますが、とくに気になる症状が出ないこともあります。男性は症状が出ないケースが多く、感染に気づかないことが。ほとんどの場合はセックスで感染しますが、下着やタオルから感染することもあります。

尖圭コンジローマ
HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染して起こる感染症。セックスで感染し、3週間~8カ月間の潜伏期間を経て、性器周辺に先の尖ったイボができます。一般には自覚症状はほとんどありませんが、イボの大きさや部位により痛みやかゆみが見られることがあります。

参考資料:性感染症 診断・治療ガイドライン2016(日本性感染症学会)
http://jssti.umin.jp/guideline_c.html

――かゆみが強い場合に、おりものにも異常が出るなどいつもとちがった症状が見られるときには注意が必要なんですね。生理中のかぶれは身近な悩みですが、放っておいたり、なんとなくでケアするのではなく、正しい対処法を知っておくことがとても大事だと感じました。高尾先生、ありがとうございました!

生理中、ナプキンでかぶれる、かゆいときには

  • 1.デリケートゾーンのかぶれ・かゆみの原因は、大きく分けてムレによるかぶれと感染症によるものと2つがある
  • 2.長時間ナプキンをつけていたり、下着で締めつけたりすると、かぶれを起こしやすい。下着の素材を見直すなどして、デリケートゾーンの通気性をよくする工夫をしよう
  • 3.感染症は病原菌に感染することで起こる。かゆみが強かったり、おりものに異常があったりしたら、婦人科で検査を受けよう

(取材・文:及川夕子、監修:高尾美穂先生、イラスト:クー)

※画像はイメージです

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