事実婚の手続きの方法。解消の際はどうする?
夫の希望で事実婚したのが2017年の9月。
そこからたった5カ月後に事実婚を解消して入籍することになるなんて……。
この記事ではそんな私たちの経験を紹介しながら、事実婚の手続きの仕方や解消方法について紹介します。
さらに、法律的なアドバイスを刈谷龍太弁護士にももらいました。
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事実婚について
まずは事実婚とは何か、どうやって手続きすればいいのかについて解説します。
事実婚はひとつの「自己主張」
事実婚を簡単に説明すると、「本人たちの意思で入籍していないカップル」のことです。
法律上夫婦と認められない点では「内縁」も「事実婚」も同じですが、入籍できない事情があって婚姻届けを出さないカップルを「内縁」、入籍できるがポリシーから婚姻届を出さないカップルは「事実婚」と区別されています。
事実婚した人に理由を聞くと、「結婚は個人の自由であり、国家は関係ない」「戸籍制度や婚姻制度に縛られたくない」「夫婦別姓にしたい」などさまざまですが、事実婚を選択することで“自己主張”をしている人が多いように感じます。
そういえば私たちが事実婚したのも、夫が「僕たちが夫婦かどうかをわざわざ国に報告するのは変だ」と言うからでした。がっつり自分の生き方を主張していますね(笑)。
手続きは特になし。ただし住民票にひと工夫!
気になる手続き方法ですが、届け出は特に必要なし。
ただし、遺族年金を受け取る際になど、対外的に認められるには、
・「2人に婚姻意思があること(あったこと)」
・「婚姻意思に基づいた共同生活があること(あったこと)」
の2点が確認できる必要があります。
「2人の婚姻意思」とは、
・両親へ結婚のあいさつがすんでいる
・結納・結婚式を行っている
・周囲に夫婦として認識されているなどの客観的な事実があった
といったことで確認できます。
その上で、一緒に住んでいれば「事実婚」として世間的にも認められるのです。
逆に何年一緒に住んでいようと、どちらかに結婚の意思がない場合はただの同棲。事実婚とは認められません。
事実婚の住民票の書き方
ひとつ事実婚経験者からのアドバイスとして、住民票に登録するときは続柄の欄に「夫(未届)」または「妻(未届)」と記載して提出することをオススメします。
この手続きをしていれば「事実婚」の証明になり、法的手続きをする際や社会的なサービスを受ける際に便利だからです。
遺族年金をもらう際の審査書類として証明力が高く、受給しやすくなります。
夫婦2人だけならメリットが多い事実婚
私が事実婚をしていて感じたのは、若くて夫婦2人のうちはメリットが多いな、ということです。
たとえば、名字を変えなくてすむとか、名字変更による事務手続きの必要がないとか、精神的に自由でいられるなどです。
しかし、法律上はあくまで他人のため,たとえば税金関係では「配偶者控除」や「扶養控除」が受けられない デメリットもあります。
夫婦2人が若くて元気に稼げるうちはいいですが、年をとってどちらかが稼げなくなった場合、控除が受けられないのはとても困るなと感じました。
子どもを持つとデメリット増
私たちが事実婚から法律婚へ切り替えた理由は、ズバリ「子ども」でした。
事実婚カップルの間に生まれた子どもは婚外子となり、認知されない限り父親から扶養や遺産を受け継ぐことができません。戸籍の父親の欄も、認知されなければ空欄のままです。
幸い、認知さえされれば相続分は法律婚の子どもと同じ割合が貰えるように法律が変更されたみたいです。それでも事実婚の場合は共同で親権者になれなかったり と不都合が多く……。そういったことが、法律婚へと踏み切るキッカケになりました。
私たちのように、妊娠・出産を機に法律婚する事実婚カップルは少なくありません。
このほかにも、生命保険の受取人になれなかったり、パートナーが入院や手術する際に家族として認められず同意書にサインできない可能性も。
解決策として事実婚に関する契約書を「公正証書」にしておけばそういった手続きがスムーズになるそうですが、必要な書類が増えて面倒だなと私は思いました。
☆刈谷弁護士による! 公正証書の作り方
公正証書とは、公正な第三者である公証人がその権限において作成する公文書のことです。
作成の流れとしては、公証役場に出向き、公証人に作成を依頼します。その際、事実婚に関する契約書に加え、印鑑や本人確認書類などが必要になります。
公正証書の内容としては、以下のようなことを盛り込むといいかもしれません。
・家事や仕事といった、日々の生活に関すること
・別れた際、死亡した際の、財産に関すること
・病気、入院の際の、同意に関すること
・年金分割について
なお、事前に出向く予定の公証役場に問い合わせると、スムーズに作成できると思われます。
事実婚できるカップルの条件
上記のメリット・デメリットを考慮した上で、事実婚できるカップルの条件を挙げると、
(1)夫婦2人とも経済力がある
(2)子どもを作る予定がない
(3)個人の生き方を重視したい
の3つでしょうか。
とはいえ私たちのようにライフプランに応じて法律婚に切り替えてもいいと思うので、若いうちは事実婚、子どもが出来たら法律婚でもいいと思いますよ。
事実婚を解消するには?
法律婚の場合、パートナーを解消するには「離婚届」を出す必要がありますね。
では、事実婚の場合はどのようにしたらいいのでしょうか?
自分たちの経験を交えて、そのあたりのことを解説します。
2人の「合意」が必要
子どもができたことで、私たちにとってメリットよりもデメリットの増えた事実婚。
そこで事実婚を解消し、法律婚することになったのですが、解消するにあたり何をしたのか。
……特に何もしませんでした。しいて言うなら、事実婚をやめるという「意思」があっただけ。
そう、双方の同意のもと「離婚届」の提出がない限り「離婚」できない法律婚とちがい、どちらか一方が関係を破棄した時点(たとえば同居の解消など)で、事実婚は解消されてしまうのです(私たちの場合は事実婚から法律婚への切り替え……という形でしたが)。
とはいえ、正当な理由もなしに一方的に別れを告げると、相手に対して慰謝料を支払う必要が出てくる可能性もあります。
結果として別れを告げた側に落ち度がある場合,慰謝料を支払う必要が出てくる可能性があるのは法律婚も事実婚も同じです。
2人の意思だけで成立する「事実婚」ゆえ、パートナーに裏切られたら泣き寝入りするしかないと思われるかもしれませんが、それは大まちがい。
社会的には婚姻関係のある夫婦として、一定の法的保護が事実婚にも与えられているので覚えておきましょう。
揉めたら、内縁関係調整調停へ
事実婚を解消する際、当事者で解決できないほど揉めてしまった場合は、家庭裁判所に「内縁関係調整調停」の申し立てができます。
法律婚の場合は「夫婦関係調整調停」ですが、区別するために名前がちがうだけで、内容は同じです。
別れる際、正当性が認められるケースとは
ちなみに、以下のいずれかに該当した場合は相手に慰謝料を請求できます。
(1)配偶者が不貞行為をした
(2)配偶者から悪意に遺棄された(同居、強力、扶助義務の不履行)
(3)配偶者の生死が3年以上不明
(4)配偶者が回復不能な精神病を患った
(5)その他、関係を継続しがたい重大な理由がある(暴力・虐待(DV)、性格の不一致・価値観の相違など)
慰謝料を請求できる要件としては法律婚と同じですね。
財産分与は認められる
事実婚解消時、2人で協力して築いた「共有財産」がある場合、名義関係なく財産分与の対象になります。
気になる配分割合は、原則折半ですが、話し合いで決めることができます。
「認知」されていれば養育費の請求もできる
子どもがいる場合、養育費も請求できます。
ただし、請求するには、法律上の親子関係を生じさせる「認知」がなされている必要があります。
事実婚をするのは2人の自由ですが、それによって子どもにデメリットが生じないよう「認知」は必ずしておきたいですね。
☆刈谷弁護士に聞く! 事実婚の子どもを認知する方法
認知の仕方には「任意認知」と「強制認知」があります。
任意認知とは、言葉どおり、子の父が自ら進んでする認知のことです。
それに対して、「強制認知」とは、父が認知に応じない場合に、子やその法定代理人(母等)からの請求により裁判によってなされる認知のことをいいます。
以下、認知する方法です。
任意認知は、父が、自分の子である旨を、子または父の本籍地、父の所在地のいずれかの役場に届け出ることで行うことができます。
強制認知は、まず家庭裁判所に「認知調停」を申し立てることが必要です。
調停は、いわば裁判所を通じた話し合いの場です。
子がその男性の子であるとの合意が成立した場合、裁判所の必要な調査を経て問題なければ、裁判所が合意に相当する審判決定を出し、認知されることになります。
一方、合意が成立しない場合には、認知訴訟を提起して、認知を認める判決が下れば認知されることになります。
また、子どもが生まれる前、つまり「胎児」の段階でも、母の承諾があれば父は「任意認知」することが可能です。この場合は、母の本籍地の役場に届け出ます。
事実婚の場合は、この「胎児認知」が多いかもしれませんね。
<胎児認知の手続き方法>
(1)書式
役所で届出書の用紙をもらいます。届出先は母の本籍地の市区町村役場です。
(2)記載
子の氏名欄には「胎児」と記入し、それ以外は空白です。その他の欄には「胎児を認知する」を選択します。
(3)母親の承諾について
母親の認知については届出の際に認知するかを予め決めておかなければなりません。
届出書のその他の欄に「この認知届の届出を承諾します」と記入して署名・捺印でも構いません。
(4)死産の場合
妊娠第12週以降で死産した場合は、死産した日から7日以内に届出人の所在地、死産のあった場所のいずれかに「死産届」を提出します。
なお、胎児認知がされている場合には上記のほかに認知の届出先にも14日以内に死産届を提出します。
自由な「事実婚」。でも法的に守られる部分もちゃんとある
法律ではなく、2人の気持ちで繋がる「事実婚」。
自由な婚姻スタイルゆえ、何かあってもすべて自己責任だと勘違いされがちですが、一定の部分はきちんと法律に守られているんですね。
あなたの結婚が、あなたらしいカタチでできますように!
(文:パンジー薫、監修:刈谷龍太/グラディアトル法律事務所)
※画像はイメージです
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