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【漢方薬ビギナーQ&A】漢方薬はどこで買えるの? 病院・薬局・ドラッグストアの違い

岸本京子

伊藤康江

「漢方って体によさそう!」「ちょっと試してみようかな」と、漢方に興味を持ちはじめたものの、「一体、どこで買えるの?」と悩む方も多いはず。そんな漢方薬初心者さんに向けて、キホンを学ぶ連載「漢方ビギナーQ&A」がスタート! 第1回の今回は「漢方はどこで買えるの?」をテーマに、八丁堀石川クリニック院長で漢方専門医の古屋京子先生が解説します。

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そもそも漢方薬って何?

体によさそうなイメージはあるけれど、実際のところ、漢方薬と一般的な薬との違いってよくわかりませんよね。まずは“漢方とは何か?”について学んでいきましょう。

“漢方薬”と“一般的な薬”の違いとは?

一般的な薬(西洋薬)は、生薬の中のひとつの成分を抽出したもの、もしくは化学合成物で特定の症状に有効なもの、です。たとえば、発熱には解熱剤など、ピンポイントでその症状に効くため、即効性があるのが特徴。これが対処療法と呼ばれている所以でもあります。

それに対して、漢方薬は“生薬”と呼ばれる自然由来の成分を複数組み合わせたもの。生薬の8割が植物の茎や根、2割が牡蠣の殻や哺乳類の化石、鉱物などです。これらを刻んだり粉末状にしたものを複数組み合わせることにより、薬効が高まったり、複数の症状にひとつの薬で対応できたりする場合もあるのです。

また漢方医学では、まずその人の体質や体の状態、いわゆる「証」を診ます。そしてその証に合った漢方薬が処方されるため、“同じ症状でも違う薬が処方されたり(同病異治)”、“同じ薬でも、違う症状に処方されたりする(異病同治)”ことがあります。これが漢方薬の大きな特徴です。

漢方治療のメリットって?

即効性がある西洋薬はピンポイントで効きます。効きすぎて副作用があらわれやすいこともあります。また解熱剤に代表されるように“体を冷やす”のが得意です。

一方、漢方薬は自然の生薬を使っているため、副作用が出にくいのが特徴。複数の生薬が配合されているので、西洋薬よりも処方される薬が少ないのもメリットです。西洋薬とは逆で“体を温める”のも得意なので、女性に多い冷え症の改善には、漢方薬が断然おすすめです。

また漢方薬は、香りや味があり、これも薬効のひとつ。自然の“気(日光や空気、食物などから取り入れる、生命を営むためのエネルギー)”がたっぷりと入っているため、気持ちをコントロールするのにも効果を発揮してくれます。精神的に病んでいるときこそ、漢方薬の力を借りてみてください。

よく漢方薬は“即効性がない”と思われがちですが、葛根湯などの風邪薬は飲むタイミングを間違わなければ1包でも効果があらわれますし、慢性的な症状でも“証”が合えばすぐ効きます。診断できるものに対して治療をするのが西洋薬である一方、“未病”と言われる原因不明の体調不良などにも漢方薬は効果的。自律神経を整え、体のバランスを整えることで、自然治癒力が高まっていきます。

漢方薬はどこで買えるの?

では、実際に漢方薬はどこで買えるのでしょうか? 病院、ドラッグストアに売っているイメージだけど……。それぞれで手に入る漢方薬に違いはあるのか、先生にくわしく解説してもらいました。

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漢方薬はどこで売っているの?

大きく分けると、「病院や漢方専門クリニック」「漢方薬局」「ドラッグストア」の3つがあります。それぞれの特徴やメリットは以下のとおりです。

病院や漢方専門クリニックの場合

病院と漢方専門クリニックでは、いくつか違いがあります。薬が処方されるまでの大きな流れは「予約→診察→処方」と一緒なのですが、漢方専門クリニックは予約すれば受診できるのに対し、大学病院の多くは予約時に紹介状が必要になります。

また、漢方専門クリニックでは「四診」と呼ばれる漢方独特の診察をします。自覚症状や生活習慣を聞く「問診」、肌や舌の色、表情などを観察する「望診」、脈を測ったり、お腹を触ったり、直接患者に触れて状態をチェックする「切診」、口臭や声の大きさなどを診る「聞診」で、その人の“証”に合った漢方薬をその場で処方します。一方、病院は「四診」に加えさまざまな検査ができます。漢方専門クリニックでも一般的なスクリーニング検査は患者さまの体調管理のため行っていますが、病院ではさらに専門性の高い検査で西洋医学と漢方医学の両面から病態にアプローチできるのが、(病院の)最大のメリットです。

また病院やクリニックでは、保険が利く“保険診療”と保険が利かない“自由診療”があります。保険が適用されるのは147種類のエキス製剤(顆粒や粉末状にしたもの)と1種類の軟膏、242品目の生薬のみ。病気によっては、効果があると言われている生薬が保険適用外の場合もあります。その薬を使用したくても保険内と保険外の薬を併用することは“混合診療”となるため、法律で禁止されています。病院を受診する前に保険診療なのか、自由診療なのか必ず確認しましょう。

漢方薬局の場合

漢方薬局にいるのは、医師ではなく、薬剤師の方。したがって、患者に触れるほか、医療行為をすることができません。とはいえ、ていねいな問診と舌の色などをチェックして、その人に合った漢方薬をその場で処方するのが漢方薬局。品質のよい生薬を扱っていることが多い半面、費用が高くなりやすいです。

ドラッグストアの場合

一番のメリットは手軽さ。処方箋がなくても簡単に買えます。しかし、同じ症状でも“証”に合う漢方薬が違ったり、複数の漢方薬を併用したりする場合は、生薬を過剰摂取してしまうケースも。店頭の薬剤師に相談するようにしましょう。

それぞれ手に入る漢方薬に違いはあるの?

ひと言で漢方薬と言っても、それぞれで処方される薬に違いがあるのでしょうか? 価格や効果など、その違いについて教えていただきます。

病院の場合

保険診療の場合は薬代が割安ですが、前述のとおり使用できる漢方薬が147種類のエキス製剤と1種類の軟膏、242品目の生薬に制限されます。自由診療の場合は、保険適用外の漢方薬も使用できますが、その分高額に。1カ月の薬代の目安として、保険診療だと3,000円~、自由診療だと2万円以上になります。

漢方薬局の場合

病院や漢方専門クリニックが取り扱っているもの以外の生薬(保険適用外)も多数取り扱っているため、患者に合ったオーダーメイド処方が可能です。生薬の品質にこだわり、配合などの調整もできます。ただ保険が利かないため、薬代が高額になります。

ドラッグストアの場合

市販薬は、配合されている生薬の量が病院やクリニックで処方されるものに比べておよそ半分と少なく(ただし葛根湯と小青竜湯は処方薬と同量)、効果もゆるやかです。それを踏まえると、少々割高。また置いてある漢方薬の種類もドラッグストアにより異なります。

自分に合った漢方ライフをスタートさせよう!

“漢方薬”はひとまとめで考えがちですが、購入できる場所や価格など、さまざまな違いがあるようです。風邪のひきはじめ用の常備薬として持っていたい漢方薬はドラッグストアで、体調不良や体質改善などが目的の場合は、専門医に相談するなど、使い分けるのもよさそう。メリットとデメリットを考慮して、自分に合った漢方ライフをスタートさせましょう!

(取材協力:古屋京子、文:伊藤康江)

※画像はイメージです

※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.07.26)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

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