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風邪薬とお酒の同時摂取が危険な理由~薬服用時の飲酒について~

宇井睦人

あなたは薬を服用する際に、きちんと用法・用量を守っていますか? 「ちょっとなら大丈夫だろう」「一回だけなら大丈夫だろう」と、薬を水以外で飲んだり、薬を飲んだ後、飲酒したりしていませんか? 今回は風邪薬とお酒の同時摂取の危険性について家庭医療専門医・宇井睦人先生の解説を紹介します。

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<目次>

風邪薬とお酒の飲み合わせが危険な理由

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そもそもなぜ、風邪薬とお酒の飲み合わせは危険なのでしょうか? 宇井先生に教えてもらいました。

(1)風邪薬とお酒の飲み合わせが危険な理由

多くの市販の風邪薬は、せき・鼻水・のどの痛みなどを抑える目的で、いくつかの成分が混合されている“総合感冒薬”として製造されています。総合感冒薬の成分の中には鼻水などを抑える目的で“抗ヒスタミン成分”が含まれていることが多く、眠気や集中力低下などの副作用があります。この成分はアルコール摂取によって増強することが指摘されており、眠気・判断力低下などの副作用が強く現れる可能性があります。

飛行機のパイロットは抗ヒスタミン成分を含んでいるお薬を内服すると航空業務に従事することができないことになっています(一部の抗ヒスタミン薬を除く)。アルコールを飲んだ時ももちろん航空業務に従事してはいけませんが、風邪薬を一粒飲んでも仕事ができないほど抗ヒスタミン薬は注意が必要とされている成分であり、アルコール飲酒下ではさらにその副作用が増強する可能性があるわけですから十分な注意が必要です。

風邪薬を内服……どのくらい時間をあければお酒を飲める?

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風邪薬とお酒の飲み合わせが危険だとわかりましたが、いつまで飲酒を避けるべきなのでしょうか? 続いて風邪薬を内服後、どのくらい時間をあければお酒を飲んでも問題ないのか、宇井先生に聞いてみました。

(1)最低6時間後(注:1日3回服用の風邪薬の場合)

風邪薬を飲んだ時は、1日の服用回数を確認して時間を逆算しましょう。1日3回服用のものはだいたい6時間くらい、1日2回服用のものは10時間くらい効果が続くとされているものが多いため、目安として1日3回飲むものであれば6時間、1日2回のものは10時間は間隔をあけてアルコールを飲むようにしてください。

しかし薬の成分による違いや個人差もありますので、一概には言い切れないのが悩ましいところです。特に腎臓の機能が良くない方や高齢な方(検査結果はそれほど悪くなくても、腎臓の機能が落ちていることが多い)は、風邪薬が体内に残る時間が健常者よりも長くなるため、薬を飲んだら長めに飲酒を控えたほうが無難です。

風邪薬だけじゃない! お酒との飲み合わせが危険な薬

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ここまで風邪薬とお酒の飲み合わせが危険な理由を紹介してきましたが、風邪薬でなければ大丈夫なわけではありません。むしろ薬によっては風邪薬より飲み合わせが悪いケースもあるのだとか。風邪薬以外で特にお酒との飲み合わせが危険な薬について教えてもらいました。

(1)花粉症の薬

抗ヒスタミン成分には上記の風邪薬の項目で解説したとおり、眠気や集中力・判断力の低下の副作用がアルコールで増強する可能性があるわけですが、いわゆる花粉症の治療に使う「抗アレルギー薬」や、鼻炎に伴う鼻水症状を止める薬の多くに抗ヒスタミン成分が含まれています。むしろ風邪薬よりも量が多く含まれていることが多いため、アルコールとの飲み合わせは特に危険です。

(2)解熱鎮痛薬

解熱鎮痛薬には多くの種類がありますが、たとえば胃粘膜を荒らす作用のあるアスピリンやロキソニンなどをアルコールと一緒に服用すると、相乗効果により胃が荒れて胃炎になることがあったり、ひどい場合には胃潰瘍ができてしまうことがあります。またアセトアミノフェンを含んだ解熱鎮痛薬ですと肝臓に毒性を持つ活性代謝物ができる可能性があり、肝機能障害を起こすことがあります。

(3)睡眠薬

現在では比較的手軽に服用されている方も少なくありませんが、その効果は中枢神経である脳の働きを抑制するものであり、アルコールの同時摂取では作用が増強します。副作用として、眠気・精神運動機能低下、筋肉が弛むことによる転倒・骨折、呼吸・循環抑制などが現れることがあります。作業能率などへの影響は薬剤の種類・用量、アルコールの摂取量、個人の体質などにより異なりますが、意識を失って大きな事故につながることもありますので注意が必要です。

(4)抗不安薬

実は不安を抑える作用を持つ抗不安薬と睡眠薬は、同じ“ベンゾジアゼピン系”というグループに分類されるものが多く、ほとんど同様の副作用(眠気・集中力の低下など)があります。当然、アルコール飲酒でその副作用も増強される可能性があるといわれています。さらに薬が切れる時間になると急に不安感が強くなってしまうことにより、「不安を抑える」という目的に対しても逆効果となってしまうこともあり、いっそうの注意が必要です。

(5)高血圧の薬

お酒を飲むと体の血管が広がり血圧が下がることがあり、高血圧の薬をお酒と一緒に飲むとより血圧を下げてしまうことがあります。その結果、脳に行き渡る血液が不足し、立ちくらみなどの症状が出る可能性があります。症状が強くなると失神して倒れてしまうことで大きな事故につながります。特に起立性低血圧が出やすい方や高齢な方では、高血圧の薬・アルコール・立つことによる脳の血流不足が重なり失神することで二次的な怪我を負ってしまうことは珍しくありませんので、十分な注意が必要です。

まとめ

風邪薬とお酒の同時摂取が危険な理由について紹介してきました。いかがでしたか? 「花粉症の薬ならば大丈夫だろう」「痛み止めを飲んだけどお酒を飲んじゃった」という言動がいかに危険かわかったのでは? これからは薬を飲んだらお酒は絶対に飲まない、どうしても飲みたいときは十分な間隔をあけて飲むようにしましょう。

(文:宇井睦人、構成:マイナビウーマン編集部)

※画像はイメージです

※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.05.24)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

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