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女子にセクハラする女子 #女子を困らせる人

#女子を困らせる人

アルテイシア

アラサー女子を困らせる人はこの世にたくさんいます。セクハラ、パワハラ、マウンティング、毒親……。「男は敷居を跨げば七人の敵あり」なんてことわざもありますが、女子のほうが敵多くない? そこでこの連載ではアルテイシアさんに、困らせてくる人々に立ち向かう知恵を授けてもらうことにしました!

風に舞う花吹雪が目に眩しい今日この頃。セクハラ・パワハラのセパ両リーグが盛り上がる日本の春、みなさんいかがお過ごしですか?

時候の挨拶はこのへんにして、新連載「#女子を困らせる人」、第一回目のテーマはセクハラである。

セクハラのスタンダードは「おじさん→女子」

セクハラは立場が上の者が下の者に行う場合が多く、「屋上に行こうぜ」と拳で決着をつけるのが難しい。女子アナが「触るなジジイ」とみのもんたを殴り殺せるかというと、無理だろう。

私も広告会社に勤めていた20代、上司や取引先のおじさんからセクハラを受けた。そのときに笑顔でかわしたことを、今でも後悔している。相手に「嫌がってないからOK」と誤解させ、新たな被害者を生んだと思うからだ。

男社会を生き延びるサバイバル術として「反射的に笑顔を作るクセ」が身についている女子は多い。だが、逆にそういう女子のほうがセクハラの標的になりやすい。

性的な行為についても、欧米では「明確なイエス以外はノー」だが、日本では「明確なノー以外はイエス」という価値観が根強い。弁護士の女友だちいわく、セクハラで裁判になった際も「相手は笑顔で喜んでたからセクハラじゃない」と主張する加害者が多いという。

なので自分を守るためにも、無駄な笑顔は封印しよう。そして、鏡の前で「プーチン顔」の練習をしてほしい。

セクハラは”プーチン顔”で撃退しよう

立場的に「それセクハラですよ!」と怒れない場面でも、「あまり私を怒らせないほうがいい」と顔で圧をかければ、相手はひるむはずだ。

プーチンが難しい場合は、「は?」「え?」と真顔で返す練習をしよう。「元号が変わろうというのにまだそんなことやってるんですか? 正気ですか?」という表情を浮かべれば、セクハラの抑止につながるだろう。

女性読者から「愛想笑いをやめて、プーチン顔と真顔返しをマスターしたら、ウザいおじさんが近寄ってこなくなりました!」と喜びの報告も寄せられた。

女性陣にヒアリングすると「おじさんからセクハラを受けた」という話が圧倒的に多い。権力を持つ立場にいるのが、圧倒的におじさんが多いからだろう。

大御所の男性芸能人が「セクハラは必要悪だ」と加害者目線で語っていたが、「昔は気軽にお尻に触られて、自由でよかったわ~」と回顧する女性は見たことがない。

女性は被害者になることが多いため「セクハラ野郎を一匹残らず駆逐してやる……!」と瞳孔が開きがちだ。私もエレンに負けないぐらい開いている。

無自覚に女子へセクハラする女子がいる

無自覚に女子へセクハラする女子がいる「子供を産むなら早いほうがいいよ」

その一方で「自分も加害者になるかもしれない」という意識に欠ける場合もある。以下は私自身も「セクハラ女子」にならないために、自戒を込めて書きたいと思う。

ヒアリングの結果、女性は「悪意なく、むしろ善意からの言動がハラスメントにつながる」ケースが多いようだ。

たとえば「子ども産むなら早いほうがいいよ」といった発言を、自身が不妊治療や高齢出産&子育てで苦労した経験から、よかれと思ってしてしまうとか。

また「子どもを産んで最高に幸せ! この幸せをみんなにも知ってほしい!」という熱意(または多幸感ホルモンの働き)から「子どもは産んだほうがいいよ!」と激推しするなど。

人にはさまざまな事情・考え方・生き方・セクシャリティがあり、プライベートな問題にむやみに立ち入るべきじゃない。私もそう「心のべからず帖」に刻んでいるが、相手が善意の人だとリアクションに困るもの。

「子どもの作り方教えてやろうか? ゲヘヘ」的なやつには「今すぐコンプライアンス室に出陣じゃい!!」と甲冑を着て法螺貝を吹くが、善意の人とは戦いたいわけじゃない。かといって「卵子は老化しますもんね」と笑顔で返すと、全然いらないアドバイスを聞かされたり、全然いらない妊活本を貸されるはめになったりする。

セクハラ女子は3つの「○○返し」で対処しよう

善意ハラスメントには、3つの「○○返し」がおすすめだ。

ビックリ返し

1つめは、ビックリ返し。「えっ、こういう発言しちゃう人だったの(ビックリ)」という表情で「あ、ああ~そうですか~」と戸惑った反応をしよう。ビックリされると相手もビックリして「自分の発言、マズかったかな?」と考えるキッカケになる。

明菜返し

2つめは、明菜返し。ベストテンの中森明菜(または友近のモノマネ)を意識して、小声&伏し目がちで「いろいろあって……」と返そう。すると相手は「この人に出産の話は地雷だ」と思うし、うまくいけば「人にはいろんな事情があるんだから、むやみに立ち入るべきじゃない」と気づかせられる。

bot返し

3つめは、bot返し。「子どもは産んだほうがいいよ」「へ~○○さんはそういう考えなんですね」「産まないと後悔するよ」「へ~○○さんはそういう考えなんですか」とひたすら返せば、さすがに相手は黙る。また、うまくいけば「自分と相手はちがう人間なんだから、考え方もちがって当然」と気づかせられる。

セクハラ女子亜種「お見合いおばさん」撃退法

セクハラ女子亜種「お見合いおばさん」

善意ハラスメントとして「やたらとくっつけたがる、お見合いおばさん的な女性」の例も寄せられた。

フリーの男女がいると「2人、付き合っちゃえば?」とけしかけたり、「独身の男の子、紹介しようか?」と斡旋してきたり、「この子、彼氏いないんだけどどう?」と勝手に推薦されたり。

これも先方はよかれと思ってやっているので、「余計なお世話ですよ」とは言いづらい。しかも普段は面倒見のいいやさしい先輩だったりもする。

この場合も、ビックリ返しや明菜返しが応用できる。
または「私、恋心の導火線がしけってて」と返すのもアリだ。「めったに人を好きにならないし、恋愛欲求が低いんですよ」と説明して「だから余計な世話は焼くな」と言外にアピールしよう。

それでも「一生ひとりは寂しいでしょ? 結婚したほうがいいわよ」とかぶせてくるのは、さすがにお節介が過ぎる。

そんな相手には「彼氏いますよ、別の次元に」と推しについて強火で語ろう。「どこがそんなに好きなの?」と聞かれたら「オウフwww いわゆるストレートな質問キタコレですねwww」とカレー沢返し(※)を華麗にキメてほしい。

(※カレー沢返し/『非リア王』等の著作で大人気の作家、カレー沢薫先生のお得意のセリフ)

おっさんのフリ見て我がフリなおせ

ゲイの知人男性は、男の上司から「あとは嫁さんもらうだけだな」と圧をかけられ、女の先輩から「彼女いないの? イケメンなのにもったいない」「普通に彼女いそうなのに、なんで? 誰か紹介しようか?」とやいやい言われて「マジでウザい」と嘆いていた。

目の前の相手が異性愛者とは限らないし、恋愛や結婚を求めているとも限らない。ひとりでも楽しく生きていける、完全生命体タイプもいる。そういう多様性を無視して「○○が普通」「○○するべき」と型を押しつけることから、ハラスメントは生まれる。

私は「おっさんのフリ見て我がフリなおせ」を標語にしているが、女だからこそやらかしがちな例もある。

「職場で女性の同僚がマッチョバーに行った話をして、『ムッキムキの乳を揉めるのよ!!』と大声で叫んでいた」という話を聞いて「それはやっちまうな、私も」と自戒した。

男がやったらアウトなことは、女がやってもダメなのだ。でもついうっかり「女だから、女同士だからOK」と気がゆるむときがある。そんなときは「今仕事中だから、その話はあとで」と注意して、正気に戻してあげよう。

腐女子の友人は「私も『ドSな年下攻めの結腸開発によるヤンチャ受け快楽堕ちシチュがどちゃシコ!』とかつい言っちゃいます」と反省していた。

それをツイッターや女子会で開陳するのはOKだが、オフィスのど真ん中で「どちゃシコ!」と叫ぶのはNGである。下ネタが悪いわけではなく、「TPOをわきまえろ」「公道をフリチンで歩くな」という話なのだ。

と、過去の自分に説教したい(砂浜に首だけ出して縦に埋めながら)

「名誉男性」によるセクハラの助長

20代の私は呼吸するように下ネタを吐いていた。「下ネタで盛り上げる役」として接待に呼ばれ、おじさんたちの期待に応えねばと思っていたが、結果的にセクハラを容認・助長させ、後輩女子にも悪影響を与えたと思う。

「こいつは中身おっさんだから」と褒め言葉のように言う男性がいるが、それは「名誉男性」という意味である。

(※名誉男性/男社会で成功して、男性優位な価値観やミソジニー(女性蔑視)を内面化している女性)

男社会で生き残るには「姫」になってチヤホヤされるか、「おっさん」になって同化するかの二択を迫られがちだ。そうやって地位を得た女性は、下手するとクインビー(女王蜂)になってしまう。

(※クインビー症候群/男社会で成功した名誉男性的な女性が、ほかの女性に厳しくあたることを表す言葉)

彼女らは「私が若いときはもっと大変だった」「これぐらい耐えられなくてどうする」「そんなんじゃやっていけない」と部活のしごき的なマインドで生きている。

そのため、後輩からセクハラ相談されても「気にしすぎじゃない?」「笑顔でスルーすればいいのよ」「おじさんは手のひらで転がすのが一番」などと返して、困っている女子をさらに追いつめる。こうして被害者が声をあげられない空気ができていく。

「人間よ、もう止せ、こんな事は」と私は高村光太郎顔で言いたい。男社会で女が分断されるのは、もう終わりにしようぢゃないか。

女王蜂も男社会でぼろぼろに傷ついてきたのだろう。傷ついた自分を認めたくなくて「こんなの大したことじゃない」と言い聞かせているのかもしれない。

でも、理不尽に傷つけられても耐えなきゃいけない社会が間違っている。そんな社会を変えるために、過去の傷つきをシェアしていこう。

そして「あらゆるハラスメント、人の尊厳を傷つける行為を許さない」と女たちが連帯すれば、すべての人が生きやすい社会になるだろう。

女子たちよ「空気読めない奴」になろう

元号が変わろうが、国の中身は変わらない。言いたいことも言えないポイズンみの強い日本で、私は姫でもおっさんでもなく「空気読めない奴」になりたい。

たとえば、接待の席で後輩女子がセクハラを受けていたら。取引先の偉い人を「汚物は消毒だー!!」と燃やすのは無理だし、「それセクハラですよ」と注意するのも難しい。でも「いやー御社の商品は最高ですね! ファビュラス!」と割り込むことならできそうだ。

そうやって空気をぶち壊して奇行種扱いされても、セクハラを黙認するよりマシだし、自分も後悔が少ないだろう。

世の中には女子を困らせる人がいっぱいいる。でも、そんな人と戦う強さや知恵が女子にはある。困っている人がいたら手を差し伸べるやさしさも。

そんな女子たちに向けて「困らせる人」対策を書いていくので、みなさんもおすすめのテクがあれば教えてください。

(文:アルテイシア、イラスト:若林夏)

※この記事は2019年04月22日に公開されたものです

アルテイシア (コラムニスト)

作家。神戸生まれ。著書『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった 』『アルテイシアの夜の女子会』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『59番目のプロポーズ』ほか、多数。

●Twitter:@artesia59

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オタク格闘家と友情結婚した後も、母の変死、父の自殺、弟の失踪、借金騒動、子宮摘出と波乱だらけ。でも変人だけどタフで優しい夫のおかげで、毒親の呪いから脱出。楽しく生きられるようになった著者による、不謹慎だけど大爆笑の人生賛歌エッセイ!

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