◆今回のお悩み
相談者:パーちゃんさん
「給料もなかなか増えず、お金が貯まる傾向がありません。将来への不安を非常に感じています」
■首都圏ひとり暮らしの家賃は手取りの何%?
編集部 パーちゃんさんは、手取り月収が約14万円にもかかわらず、月々の支出が18万円と、4万円もオーバーしています。おそらくボーナスで補っていると考えられますが、ボーナス額も32万円と、まかないきれていない状態です。家計簿を見る限り、家賃が6万円なので手取り収入に対する比率が高すぎるような気がするのですが……。そもそも一般的に、首都圏でひとり暮らしをする場合、家賃は月収の何%に抑えるべきなのでしょうか。
風呂内亜矢(以下、風呂内) 単身女性の平均値は25%という統計データがあります。ただ首都圏に住む場合、なかなか難しい側面はあります。それでも、家賃は手取り月収の3割以内に収めたいですね。パーちゃんさんの場合は、手取り月収約14万円で家賃は6万円とのことですので、比率は42%と、かなりオーバーしています。
編集部 そう考えると、彼女は引っ越しをしたほうがいいのでしょうか?
風呂内 単純にそうとは言い切れません。というのも、家賃が通信費や交通費に影響するケースがあるからです。彼女の場合、交通費が1万円とのことですので、もしかすると保険の営業をする際の移動代は自腹の可能性があります。そう想定すると、遠い場所へ引っ越しすることで家賃は安くなったとしても、交通費がアップすれば、引っ越す意味がありません。また、インターネット導入済みの物件から導入していない物件に引っ越してしまうと、通信費が増えてしまう可能性もあります。
逆に言えば、今と同じ家賃でも今より通信費や交通費が抑えられる物件であれば、引っ越したほうがいいと思います。
編集部 なるほど。理論上は3割以内に抑えたいけれど、抑えたために家賃以外に余計な費用がかかるのならば意味がないですもんね。
●首都圏ひとり暮らし家賃の目安と注意
・手取り月収の3割以内
・家賃を下げるために引っ越しを検討する際は、家賃以外の支出が増えないか注意する
★パーちゃんさんプロフィール
生保・損保関連企業で営業職の正社員として働く、社会人10年目以上の33歳。神奈川県でひとり暮らしをしている。手取り年収は約200万円、手取り月収は約14万円。毎月の貯蓄額は設定せず、月々の家計やボーナスの中から余った分を貯蓄に回しているが、月々の家計は赤字続きで、現在はまったく貯蓄ができていない状態。自分名義の貯蓄額も把握できていない。こだわり出費は、月に1度のエステ(1回につき1万円~)で、ムダな出費だと自覚しつつも、どうしても痩せたくてつい契約してしまう。
(ヨダヒロコ/六識)
■家賃を安く済ませるコツ
編集部 やっぱり引っ越しを検討したほうがいいとなった際に、家賃を安く済ませるコツがあれば教えてください。
風呂内 引っ越す前に、今住んでいる賃貸物件の管理会社に家賃の交渉をしてみるのは一案です。賃貸の検索サイトなどで類似物件の相場をチェックして、今の家賃より安ければ、交渉する余地はあります。「エリア」「広さ」「オートロックの有無」「ユニットバスorバス・トイレ別」くらいまで条件が揃えば、ほぼ類似物件だと思っていいでしょう。それで交渉が成功したという声もちょこちょこ聞きますよ。
周辺の自治体で家賃の補助をしてくれる自治体があれば、そこに引っ越すのもアリです。単身者への家賃補助がある自治体は少ないですが、もしかしたら自分が住んでいるエリアの近くにあるかもしれないと思って探してみてはいかがでしょうか。
また、神奈川県には単身者向けのUR賃貸もありますので、収入の下限・上限に引っかからなければ、申し込んでみるのも手ですね。
編集部 いろいろとできることはありそうですね。ちなみに、パーちゃんさんに限らず、これから引っ越しを考えている人が家賃をなるべく抑えるためにできる物件探しのコツみたいなものはあるのでしょうか?
風呂内 勤務先と自宅を結んで同心円上にあるエリアの中から、家賃相場の安いエリアを選ぶといいですね。そうすれば、通勤時間も変えることなく家賃を抑えることができます。
また、家賃が上がる要因のうち、何かを妥協することも大きなポイントに。家賃に大きく影響するのは、「アパートorマンション」「駅からの距離」「部屋の広さ」「オートロックの有無」「ユニットバスorバス・トイレ別」くらいでしょうか。それらのオーソドックスな条件のうち、自分が妥協できる部分があるなら、相場よりも安い家賃の物件は探しやすいですよ。
編集部 部屋の条件に優先順位をつけることが大事なんですね。
●家賃を下げるコツ
・今住んでいる家の管理会社に家賃交渉をするのも一案
・家賃の補助をしてくれる自治体へ引っ越す
・単身者向けUR賃貸に申し込む
・勤務先と自宅の同心円上にある安いエリアを狙う
・妥協できる部分は妥協する
(ヨダヒロコ/六識)
■パーちゃんさんの家計簿チェック
編集部 一方で、引っ越しをしようにも、パーちゃんさんは毎月の家計が赤字&まったく貯金ができていないため、引っ越し代が捻出できるのかという問題もあります。家賃を抑える方法を模索するのと同時に、家計簿の見直しも必須かと思われます。家賃以外の出費で見直すべき点はあれば、ぜひアドバイスをください。
風呂内 もっとも気になるのは、「美容費(エステ)」ですね。パーちゃんさんにとっては、どうしてもやめられないこだわり出費のようですが、美容費はあくまでも贅沢代。本来は優先度を下げたい費目です。収支が大きくマイナスになっている今はがまんを。痩せたくて通っているのであれば、お金をかけない方法でダイエットをがんばりたいものです。
次に、すぐに下げられそうなのは、「携帯料金」。もし古いプランのまま契約しているなら、見直しをするだけで、1万円から7,000円にまで下げられると思います。ここ1、2年以内に機種やプランを変更したのであれば、おそらく自動的に通話し放題+データ通信量を選ぶ形になっているはずです。このとき、標準の5GBを選ぶ人は多いのですが、そこまで必要ない場合も。本当に自分にとって適正なのか、実際の通信量を意識し、必要なければ容量を下げることも検討しましょう。
またパーちゃんさんの場合は、携帯電話以外の「通信費」も5,000円かかっています。家に固定のインターネット回線を引いているのかもしれませんね。仕事で必要ないのであれば、いったんやめてみることも選択肢の1つです。
編集部 確かに、今はインターネットやメールなどはスマホで事足りますからね。ほかにも、見直せそうな費目はありますか?
風呂内 「食費」「外食費」「交際費」の合計が3万5,000円は高いかもしれません。外食も交際の一貫だと考えると、少なくとも2回は飲みに行けているわけですから、せめて交際費は、半分の5,000円までに抑えたいですね。
あとは、「その他」が1万円なのも気になります。自分が把握できていないお金は、5,000円以内に収めましょう。
編集部 先生のアドバイスをすべて実行すると、2万8,000円が浮く計算になります。それでも、毎月2,000円は赤字になってしまいますね。ボーナスでは補填できそうですが……。
風呂内 今のままでは貯蓄もできませんし、ちょっとしたきっかけで破綻しかねません。彼女の場合は、支出を減らすことも大事ですが、収入を上げる方法を模索したり、あるいは実家に帰ることも視野に入れたりと、生活の仕方そのものを見直す必要もあるかもしれませんね。
●パーちゃんさんの家賃以外の家計見直しポイント
・エステ(美容代)は収支がマイナスの間は我慢
・携帯料金の見直し(旧プランなら下げられる可能性も)
・インターネット回線もスマホで済むのなら一旦契約解除
・交際費は半額に
・自分が把握できていないお金は5,000円以内に
◆今回のおさらい・家賃は手取り月収の3割以内に! 家賃交渉やUR賃貸への引っ越しも検討を
なにかとお金のかかる首都圏でのひとり暮らし。家賃は、手取り月収の3割以内に収めるようにしましょう。ただし、家賃が安いからといって安易に引っ越しをするのは避けること。引っ越すことで通信費や交通費などがアップしないかどうかも考慮を。今住んでいる部屋が気に入っているのであれば、類似物件の相場を調べて、それらより高いようなら管理会社に家賃交渉をしても。また近隣エリアに、家賃補助をしてくれる自治体や単身者向けのUR賃貸があれば、引っ越すのも一案です。
(ヨダヒロコ/六識)