朝型シフトってなに?「残業代半減の可能性も」

2014年、日本では6月21日に、日照時間がもっとも長くなる夏至(げし)を迎える。海外ではサマータイム制により、夏は30分~1時間ほど繰り上げた時刻になる国も多い。
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サマータイムがない日本でも、ファストフード店やコーヒーショップで早朝営業をおこなう「朝型シフト」が始まっている。「朝残業」だけを許可する企業も増え、頭が冴えている朝なら効率もアップ!などと言われているが、際限なく続けられる夜の残業禁止は、残業代カットの意味でもあるのだ。
早起きは三文の得?
早朝を有効に使う「朝型シフト」は、人間の睡眠を考えると、非常に合理的だ。
明るさを感じると眠気が覚めるのは、睡眠をコントロールするホルモン・メラトニンの分泌量が減るからだ。個人差はあるものの、光を感じなくてもメラトニンはAM6時頃から分泌量が減り、21時ごろから再び増加する。
これに頭やからだの疲れを加味すると、夜間よりも早朝のほうがはるかに効率良く活動できるのだ。
夜の残業を禁止し、代わりに早朝残業を推奨する企業が増えてきた。より計画的に、冴えた頭で仕事に臨めるため、効率が上がるのが理由だ。それに合わせてか、スーパーやファストフード店でも開店時間を繰り上げるケースが多く、
・スーパー … AM8時
・ファストフード店 … AM6時
・コーヒーショップ … AM7時
から営業している店舗が目立つ。近所のスーパーの食品売り場を、開店時間・8時に見にいったところ、夕方よりも少ないながらも、まずまずの客入りだった。牛丼チェーン店の朝メニューもAM4~5時からスタートしているように、早朝に活動しているひとが増えているのだ。
朝型シフトで残業代が半額に?
早朝残業は、サラリーマンにとってお得なのか? 夜の残業がなくなれば、家族と一緒に夕食がとれる、趣味の時間を増やせるなどのメリットはある。だが仕事の面では、今までよりも高い効率が求められることになるのだ。
従来の夜型残業と朝型シフトを、
・就業時間 … AM9時~PM6時
・始発時刻 … AM4時30分
・終電時刻 … AM0時30分
・通勤時間 … 1時間
で、「必ず帰宅」を前提にシミュレーションしてみよう。従来式ならPM6時~AM0時の最大6時間、残業できることになる。対して夜残業禁止の朝型シフトになると、会社に着くのがAM5時30分として、始業時間までの3.5時間しかないため、じつに1.71倍の速度で仕事をこなさなければならない。
理論上、残業代も58%に減ってしまうのだ。
さらには労働基準法で定められた「深夜割増」の問題も発生する。PM10時~翌AM5時までは深夜と定義され、
・PM10時までの残業 … 就業時間の賃金の25%以上
・PM10時以降の「深夜」残業 … 就業時間の賃金の50%以上
を上乗せしなければならないのだが、朝型シフトの場合はAM5時前から開始できる可能性はほとんどないので、深夜割増は事実上・消滅するのだ。
1か月の就業日数を20日間とし、法的制限や会社の就業規則を抜きにして、さきの例で毎日残業した場合、
・現行 … (通常残業:80時間)+(深夜残業:40時間)=(通常残業:140時間)
・朝型シフト … (通常残業:70時間)
となり、どんなに仕事が多くても、残業代は半減することになる。「付き合い」や「ダラダラ残業」はもってのほかだが、忙し過ぎる会社では「割に合わない」制度になりかねないのだ。
まとめ
・早朝を有効に使う、「朝型シフト」が増加中
・スーパーやコーヒーショップも、早朝営業が目立つ
・「朝残業」のみOK、の企業も登場
・目いっぱい残業しても、残業代が半分になる可能性も…
何時間働いたかではなく、効率良く進めることには賛成だが、業種や仕事の量によっては、無理難題を押し付けられるに等しい。
もし勤め先が「朝残業」に切り替えたら、目的や制度を、具体的に確認したほうが良いだろう。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年06月12日に公開されたものです