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親好みの相手と結婚したい女 #振り回される女

ぱぷりこ(恋愛コラムニスト)

親、世間、彼、友人……「自分以外の誰か」を主語にして、恋愛や結婚を選ぶ女性たち。そんな「自分以外の誰か」を主語にした恋愛をする女性の特徴をぱぷりこさんが解体&分析します。

「大卒で年収600万はないとダメって両親が言うんだよね」
「ITベンチャー勤め? うーん、でも親がいい顔をしないと思う。やっぱりもっとちゃんとしたところの人じゃないと」
「彼、一緒にいてすごく楽なんだけど、親が彼のことを反対してるんだよね。離婚家庭育ちだと離婚する心配があるって」
「お姉ちゃんが両親と仲が悪くて家を出てって絶縁状態だから、両親は私の結婚は絶対に失敗させたくないみたいで」

このような発言をしている人がいたら、「親好みの相手と結婚したい女」かもしれません。

親好みの相手と結婚したい女の特徴

親好みの相手と結婚したい女は、下記の特徴があります。

・ひとりっ子、あるいは親に一番かわいがられている
・親と仲がよく、一緒に出かけたり旅行に行ったりする
・学生のころは「優等生」「いい子」と褒められてきた
・何かあればすぐ親に相談する
・「親の期待に応えられるかどうか」で大学や勤め先を決めてきた
・「親が~って言ってた」と言いがち
・友だちから「お嬢様」「箱入り娘」と呼ばれたことがある
・「何が好き?」と聞かれるとすぐに答えられない
・モヤモヤがあっても「でもみんなが言ってるし」「気のせいだろう」とスルーしがち

彼女たちは、「とても聞き分けがいい子」として育ってきています。10代のころから、習い事や友だち付き合い、受験や就職活動など、普段の小さなことから大きなイベントまで親の意見を聞き、親の言うとおりに選択してきました。また、それほど大きな失敗もしてきていないので、不満も持っていません。

そのため、親以外との日常会話でも「親」が頻出します。「親がいいっていうかわからないから、ちょっと返事を待ってもらっていい?」「親がダメって言ったから」など、「親に確認する」作業が日常でよく発生します。門限は当たり前、旅行もバイトも事前許可が必須。周囲からは「お嬢様」「箱入り娘」と呼ばれることも。

さすがに20歳を超えると、親の口出しや許可制は少なくなってくるため、20代前半での恋愛は、そこそこ自由に楽しむ人が多いです(変わらず厳しい家庭ももちろんあります)。親側も「若いうちに多少の失敗をして経験すればいい」と軟化するようです。

しかし、25歳を過ぎると状況は変わります。なぜなら「結婚」を考えるようになるからです。「25歳で結婚? 早くない?」と若い世代は思うかもしれませんが、親世代にとっては「もう25歳」です(ちなみに2015年の厚生労働省統計情報部「人口動態統計」によれば、女性の初婚年齢平均は29.4歳。1970年は、女性の初婚平均年齢は24.2歳です)。そのため、25歳ごろになると「結婚を前提にしたお付き合い」になるため、親の干渉が激しくなります。「結婚」は「失敗してはならない人生の一大イベント」であり、しかも「義理の息子」としての関係になるので、選定が厳しくなるのは当然です。

娘たちはこれまでイベント時には親の言うことを聞いてきたので、「結婚」に関しても、親の意向を反映し、実現しようと努めます。

親好みの相手と結婚したい女が望む男性像

親好みの相手と結婚したい女は、恋愛・結婚候補の男性に下記のような条件を求めます。

・見た目が清潔で、親と仲よくできるコミュニケーション能力を持っている
・親が知っている大学を卒業し、親が知っている企業に勤めている
・医者・弁護士など「士業」がベストで、20世紀から続く大手メーカー・インフラ・公務員はベター
・IT企業、ベンチャー企業勤めはNG
・離婚家庭育ち、バツイチはNG
・趣味はスポーツなどアウトドア派か、芸術関連が好ましく、ゲーム、インターネットなどインドア派はNG
・きちんとした「自然な出会い」で出会うことが理想で、アプリはNG

これらの条件が当てはまるのは「親が知っているもので構成された、親が好む男性像」です。大学や企業名は親がよく知っている=20世紀から続いていることが前提になるので、IT企業やベンチャー企業は「うさんくさい」「将来が不安定」と切り捨てられる傾向にあります。ゲームやインターネット、プログラミングなど、インターネットを前提とした趣味も理解されにくいため、マイナス査定。「野球! ゴルフ! サッカー!」といったわかりやすいアウトドアか、「クラシック鑑賞! 美術館鑑賞!」といった“育ちのよさがうかがえる”趣味が求められます。

同様の理由で、「離婚家庭育ち」「バツイチ」の人もNG対象になりやすいです。親世代は周囲の離婚率が低かったためか「離婚している人間は少数派で問題がある」という偏見を持つ人が残念ながら少なくありません。ひどい場合になると「離婚家庭で育った人は、離婚が当たり前だと思っているから、離婚する確率が高くなる」など、根拠のない思い込みで反対してくる場合もあります。「自分が知らないから」という理由で、国際結婚もNGが出やすいです。

出会い経路も制限があります。親世代にとって「婚活アプリ」は「やばい出会い系」でしかないのでNG。出会い経路はいわゆる「自然な出会い」(職場・大学・友人の紹介・親の紹介)に絞られます。

結果として、彼女たちが望むのは、「親が知っていて、親が安心できる属性をすべて持っている人」となります。

親好みの相手と結婚したい女の婚活はどうなる?

20代前半から「親が好みそうな相手」と付き合って結婚に至る場合、何も問題はありません。そのまま結婚して親も自分もハッピーです。

ですが、「付き合っている相手が、親の好みに合致しない」場合は、親と自分の好みに挟まれてハードモードに陥ります。自分は彼のことが好きだけど、親がNGを出しそうな場合、彼女たちは「彼と別れて親に気に入られる人と付き合う」か、「親に気に入られるよう彼に変わってもらう」か、検討します。

すぐ別れる人は少数派で、最初は「変わってもらう」ことを期待しがち。「オタク趣味をやめてほしいの(親のために)」「もっといい会社に勤めてほしいの(親のために)」「年収を上げてほしいの(親のために)」という希望をやんわりと伝えて、彼に変わることを求めます。これで彼が変わってくれるならいいですが、人間は好みをそう簡単に変えられるものではありません。彼がしぶったり拒絶したりすると「好きなのになんで変わってくれないの」と怒りをぶつけるようになったり、「結婚に真剣じゃないんだ」と被害意識を持つようになったりします。ここまでくると険悪になってお別れパターンが激増します。離婚家庭育ちなど、変えられないステータスの場合は、「親に隠してほしい」と求めるか、別れるかの2択です。ここでも「隠さなければならないことじゃないのに、なんで隠さなければならないんだ」と衝突&お別れパターンが多いです。

「親好みの恋人をゼロから探す」場合も、これまたハードです。

まず、競争率が高すぎます。親世代が知っている大学や企業に所属しているということは、つまりは「そこそこのハイスペック」ということ。ハイスペック狙いなので、ここでベースのハードルがどかんと上がります。

かつ、条件が多すぎます。親世代は「1億総中流」という言葉が示すように、それほどステータスも趣味も細分化していませんでしたが、現代は泣く子も黙るダイバーシティ社会。みなが自分好みの音楽や動画を視聴し、マイナーな趣味でも仲間を見つけやすいため王道趣味をやらなければならない圧力もなく、離婚再婚は当たり前。男女平等、LGBT、とにかく社会状況が、親世代とはまるでちがいます。昭和全盛前の「普通の多数派」は、平成末期では「レアな少数派」なのですが、彼女たちと両親はそのことを理解せず、「当たり前のことを望むだけ」と「趣味・出会い方・家族構成」に至るまで「マスト条件」にします。そのため、マッチする母数も激減。

マッチする母数が少なく、競争率も高ければ、そうそう相手は見つかりません。親にダメ出しされるか、自分が好きになれないか、彼のほうが乗り気でないか……。とにかく探すことが難しくなります。

自分で探すことに疲れ果てると、彼女たちは「親に探してきてもらおう」と思い出します。親の紹介で知り合った人なら、最初からOKが出ているも同然だからです。これで圧倒的世界平和が訪れる……神に感謝……かと思いきや、必ずしもうまくいきません。親が推薦した男性と意気投合してめでたく結婚する場合は問題ないですが、彼女たち側が「親がすごくいい人だと言ってるけれど、どうしても好きになれない」「キスする姿が想像できない」と結婚に乗り気になれない場合はハードモードに全力突入です。「条件はいいけど自分にとっていまいち」な男性とデートしたり、親からのプレッシャーが強くなったりするので、「親の推薦」は別の意味で疲れることに。

自分で探しても疲れる、親に探してもらっても疲れる、どうすればいいの?? と彼女たちは悩むことになります。ここまでくると、道は2つ。妥協して親がOKを出す相手と結婚するか、「自分にとっても親にとってもOKな相手を探す」クエストを数年単位で続けるか。実際は、親のプレッシャーに負けて、そこそこ妥協できて親がOKを出した人と結婚する人が多数派です。しかし、本人たちが満足しているわけではないので「結婚なんてこんなものか……」とあまり幸福を感じない結婚生活になりがち。

結論。親と自分と恋人は、それぞれちがう人間である

親好みの相手と結婚したい女の婚活や結婚生活がハードモードになるのは、「親」「自分」「恋人」はそれぞれ性格も好みもちがう別人である、という基本的人権の基礎概念を理解しておらず、かなりハードな要求を「当たり前」と信じているからです。

彼女たちはこれまで「親に従う」前提で生きてきましたから、「親に合わせる」ことをそれほどストレスに思っていません。だから、彼にもごく自然に「変わって」と求めます。しかし、彼はまったくの別環境で生きてきていますから、いきなり「親のために変われ」と言われてもすぐにできる人はそうそういません。趣味に仕事、家族など、自分にとって大事なものを「親が気に入らないから変えて」と言われたら、反発したくなるのは当然です。しかし、彼女たちはそれほど大変なことだと思っていませんから、「これだけのことでなんで怒るの」「なんでわかってくれないの」「結婚したい気持ちが足りないのでは」とストレス&不満がうなぎのぼりになります。「自分と彼は別の人間である」という前提を共有できていないことが原因です。

また、彼女たちが「親の意見を優先させていて、自分の意見や好みを後回しにしている」ことも、ハードモードになる原因です。「親の好み=私の好み! 何もズレはない!」と完全一致している場合はいいのですが、実際のところは極めてまれです。親の好みと自分の好みがずれている場合、不満を覚えるのは当然なのですが、彼女たちは「親の意見>>>>>自分の意見」で生きてきたため、自分の意見や好みを自覚できておらず、言語化するスキルがありません。よって、なんか不満でも自力で解決できず、「親がいいって言ってるし」と慣れた方法を選択しますが、結局「自分の好み」と外れているため、幸福度がなかなか上がりません。

よって、もし親の言うとおりにして何かひっかかることがあるなら、やるべきことは2つ。「親と自分と彼は、全員がちがう性格と好みを持つ別の人間である」と自覚すること。そして、「親ではなく自分がどうしたいのか」を考え、言語化することです。

この2つを実践してみて、自分が結婚したい相手と、親が望む結婚相手の理想がちがうなら、両親としっかり話し合う必要があります。両親は、これまで自分たちの意見に従ってきた娘からの突然の意見に驚くかもしれませんが、話を聞いてくれる人の場合は、しっかりと伝えればわかってくれるかもしれません。一方、「親の言うことを聞いていればいいんだ」と、聞く耳を持たない親も残念ながらいます。その場合は、「別れる」「親に反対されても結婚する」「親と縁を切る」ことも検討する必要があります。

こうした衝突はストレスがたまるので、つい衝突を避けようとして「親の言うとおりにしておこう」と考えがちです。親の言うとおりにすることは、短期的にはうまくいくように見えますが、長期的には不満をずっと抱えることになるのでおすすめしません。24時間365日続く「結婚生活」をする当事者は「自分」であり、「親」ではないからです。

結婚は自分の人生の幸福度にかかわる意思決定です。親の意見を反映させることは問題ないですが、自分の気持ちをないがしろにしたまま親の意見に従うことはリスキーです。

親を大事に思う気持ちは素晴らしいことだし、親を安心させたいという気持ちはわかります。彼女たちの親も、娘に幸せになってほしいからこそ、あれこれ心配して口を出しているのもわかります。ですが、親と自分は別の人間だし、親の人生と自分の人生も別物です。自分の気持ちとなんとなくずれていて、何か不満や不安がある場合、しっくりこない場合、立ち止まることをおすすめします。

(文:ぱぷりこ、イラスト:itabamoe)

※この記事は2018年11月10日に公開されたものです

ぱぷりこ(恋愛コラムニスト)

ブログ『妖怪男ウォッチ』を書く、アラサーOL。恋愛魔窟で出会った妖怪男女をブログで供養している。特技は悪霊退散、方違え、お焚き上げ。

ブログ『妖怪男ウォッチ』:http://papuriko.hatenablog.com/
Twitter:@papupapuriko

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