【第2話】トラウマが生んだ不思議な化学反応。「忘れ物」がつなぐ新たなご縁
恋愛・婚活コラムニストのやまとなでし子さんが、フジテレビ木曜ドラマ『いちばんすきな花』を毎週考察&展開予想するコラムです。“男女の間に友情は成立するのか?”をテーマに、違う人生を歩んできた4人の男女が紡ぎ出す“友情”と“恋愛”を描く同作。それぞれの価値観を持つ4人が考える“本当に大切なもの”とは――。
※このコラムは『いちばんすきな花』2話までのネタバレを含んでいます。
恐怖! まだ終わっていなかった、クソ同僚のおかわりクソ行動
美女であるがゆえに、見た目で誤解を受けがちで、人とのコミュニケーションがうまく回らないというコンプレックスをもつ夜々(今田美桜)。
結婚式に感動をして涙をすれば、「感動したふりがうまい! 女優!」とはやされ、同僚の男と気軽に飲みに行けば勘違いされて家に連れ込まれそうになり……他人から見れば、その美貌で何不自由なく、欲しいものも人の気持ちも思い通りに手に入る、イージーモードの人生を送っている美女かのように思われている夜々。
しかしその実は、人の気持ちは常に自分の想定外に動いてしまい、セルフイメージと他人から持たれるイメージのギャップに苦しみ、生きづらさを感じています。
ある日、彼女が家に帰ると、先日飲みに行っただけで勘違いをされた同僚が玄関の前でまさかの待ち伏せしているという、通報待ったなしの出来事が……! 前回このストーカー同僚男は、夜々を家に連れ込めないと分かった瞬間、自分の読み誤りは棚に上げて「お前が勘違いさせるのが悪い!」とばかりに逆ギレ捨て台詞を吐いて去ったクソ野郎です。
「大丈夫だよ! 友達からでいいよ!」と、何が大丈夫なのか一切根拠のない謎の上から目線でなんとか関係をつなごうと食い下がってきます。もちろん逃げる夜々。するとたまたま紅葉(神尾楓珠)の姿が目に入ります。
認知の歪んだクソ男に制裁を!
紅葉の名前も言えないままに「彼氏!」と言い張り、クソを撃退するのですが、クソは生粋のクソなのでただでは引き下がりません。「もっと自分を大事にしたほうがいい! 内側から愛される人にならないと!」「この子ね、顔がいいだけだよ」と、わざわざ人間性まで否定する最低発言を吐き捨てて消えていきました。クソ!
クソすぎてここまでですでに9回もクソと連呼してしまいまクソ!!
夜々は自分を大事にした結果、やばすぎるお前から逃げたんだが何を言っているのだ?
「顔がいいだけ」と言うけれど、顔に惹かれて、勝手に夜々の人間性を決めつけ、期待し、実際中身をちゃんと見る前に消えたのはお前。外側も内側も愛されなかった人間の負け惜しみです。
同僚男と関わりたくないがために、手前味噌のうそで撒こうとしていることにも気づけず、自分の都合のいいように物事を受け取るアホ男なわけですが、こういう人に限ってグイグイ突撃してくるんですよね。夜々もたくさん消耗させられてきたのでしょう。
恋人より友達の方が下という世間の認識に対して「友達の方が作るの簡単だからじゃない?」と言った同僚男のセリフも、夜々の気持ちを深くえぐるのに十分なものでした。その友達を作ることが、夜々にとって一番ハードモードなのですから。
しかし、ドラマとしてはこのめげないクソ男の行動はとても見応えがあります。クソ男の次回のご活躍も期待しております!
過去の思い出から掘り起こされる、ゆくえのコンプ
そのまま家に帰ることができなくなった夜々と、紅葉は椿(松下洸平)の家へ。二人きりが苦手な二人は三人組なら、とアポなしで訪問。「忘れ物です!」を口実に、先日椿の家に捨ててあった夜々の美容院のポイントカードを見せて上がり込みます。このゴリ押し感、新手の悪徳商法みたいで嫌いじゃないです。
紅葉の機転で、さらにそこにゆくえ(多部未華子)が加わり、4人が再会。そんな中、話の流れでゆくえのコンプレックスの話題に。それはみんなと一緒にいても自分だけ同じ感情になれないのが怖い、他人の感情を勝手に想像して傷つく、というもの。
ちびっこ相撲で体格のいい子と、小柄な子が対戦した時、周囲から体格のいい子が当然勝つであろうと期待される中、小柄な子が粘り勝ち。周囲は感動する中、ゆくえは「負けちゃった子はお相撲続けられるかな? 悔しいって気持ちだけで泣けてるかな? 恥ずかしいって気持ちに邪魔されていないかな?」と、心配が先立ってしまって感動できなかったというもの。
ゆくえの悩みはゆくえの魅力。あの場で救われていた夜々
この気持ちって100%の優しさであり、こういった細やかな配慮って一つの才能。誰でもできることではありません。気持ちを想像して、寄り添ってくれる人がいるだけで、体格のいい子の心が救われるわけです。これはゆくえの良さであり魅力。
これを自分の良くないところ、と思ってしまっているゆくえの価値観を変えてあげたいと思う中、椿が言葉を発します。
「みんなが同じ感情になっていたら気持ち悪い。言っちゃダメなことはあるけど、思っちゃダメなことはない」とゆくえをそっと肯定するのです。ゆくえはこの言葉で救われるのですが、その他にゆくえの言葉でひっそりと救われている人がいました。そう、夜々です。
彼女も見た目で「男好きな女」と決めつけられたり、「グループの中心的存在」などと勝手に役割を期待されたりするなど、苦しい思いをしてきました。
そのため、「見た目で勝利を期待されながら、求められる役割に応えられかった男の子」の話には、感情移入をするところがあったはず。
そんな中、見えることだけで事実を決めつけず、本質を正しく見つめ、相手の立場になって寄り添えるゆくえという人間がいることに、あの場で救われたのだと思います。そんな風に中身を見ようとしてくれる人がいるのだと。
そして、ゆくえなら、そんなふうに本当の夜々を理解して、友達になってくれるのかも、と希望も生まれたのではないでしょうか。
夜々が「(顔がいいって)嫌みって思いますか?」とゆくえに聞いた際に、ゆくえは自分のことだと思って、「ごめんなさい! (私の)頭がいいって嫌みでしたよね?」と繕っていましたが、そんな風に返されることも、夜々にとっては新鮮でうれしかったのだと思います。
芽生え始めた友情
この4人は「二人組」にそれぞれ違うトラウマを抱えているけれど、だからこそ、お互いの気持ちや痛みを共感できる不思議な化学反応が起き始めました。
今回のように、お互いの言葉や考え方で少しずつ自分を肯定するきっかけを持ったり、自信を持たせ合ったりすることができるいい関係になっていけそうですね。
その後、男女で分かれて二人組になった時も、もう二人組に対するいづらさは感じさせず、「(その質問を今いない彼らに)今度聞いてみよっか」と自然に「今度」というフレーズがでるなど、この関係性の大きな発展を表していましたね。
人間関係に苦手意識のある彼らから、それぞれ「今度」という、未来を示す言葉が自然に出るなんて、友情が芽生えてきた証。それと、「今度」って言われると、次も会いたいと思ってくれたんだなぁって、言われた側もうれしくなりますよね。
忘れ物でつながるご縁
「また会いたい」という気持ちの表明に、紅葉は「これ忘れていきますね」と椿の家にわざとハンカチを置いていきました。もう二度と会うことはない、と言っていた椿がそれをすっと受け入れたこともまた、心がじんわり暖かくなりましたよね。
椿が美容院に忘れていった会社のIDカード、「忘れ物!」と椿の家に押し入る口実に使った美容院のポイントカード、紅葉がわざと椿の家に忘れたハンカチ、ゆくえがバスに忘れたボールペン、不思議なことに忘れ物がこの4人の縁をつなぎ、小さな友情が芽生え始めました。
そんな中、椿の元嫁が「忘れ物をした」と椿の元にアポなし訪問。果たしてこの忘れ物はどんなストーリーの展開を見せるのか、次回に期待です。
(やまとなでし子)
※この記事は2023年10月26日に公開されたものです