「時間を要する」の使い方とは? 意味や例文・類語・言い換え表現
「時間を要する」とは、何かをするために時間が必要であることを意味する言葉。敬語の要素はないため、ビジネスでは「時間を要します」といった形で使用しましょう。今回は「時間を要する」の使い方・例文・類語や言い換え語句を紹介します。
「時間を要する」とは、作業などに時間がかかることを表す言葉です。ビジネスシーンではよく使われますが、日常会話で耳にする機会は少ないので、正しい意味や使い方が分からない人も多いでしょう。
この記事では「時間を要する」という言葉の意味や使い方、似た意味を表す類語・言い換え表現について詳しく確認していきます。
「時間を要する」の使い方に自信のない人は、ぜひ参考にしてください。
「時間を要する」の意味とは?
「時間を要する」とは、「時間がかかる」ことをフォーマルに表現する言葉です。
ここに含まれる「要する」という言葉は、日常生活ではあまり使われないため、聞き馴染みがない方も多いでしょう。
「要する」の意味を辞書で引いてみると、以下の意味が掲載されています。
ようする【要する】
(1)そのこと、あるいはそのものを必要とする。入用である。
(2)要約する。かいつまむ。
(3)人を道に待ち受ける。まちぶせする。
(岩波書店『広辞苑 第七版』)
このうち、「時間を要する」で使われているのは(1)の「必要とする」の意味です。
つまり、「時間を要する」とは、何かをするために時間が必要であることを表す言葉だといえます。
「時間を要する」の敬語は?
「時間を要する」はフォーマルな響きの言葉ですが、敬語ではありません。そのため、ビジネスシーンでは「時間を要します」と丁寧語にして表現する必要があります。
とはいえ、「時間を要する」の主語は作業や予定などの「物事」です。そのため、自分側を低くする謙譲語や、相手を高める尊敬語にする必要はありません。「時間を要させていただきます」などと表現すると、かえって冗長で場違いな表現になってしまうので注意しましょう。
「時間を要する」の正しい使い方(例文付き)
「時間を要する」は、作業などに一定以上の時間がかかることを表し、ビジネスシーンでよく使われる言葉です。
具体的には、時間がかかることへの「謝罪」をしたり、「許可」を求めたり、その他の「提案」につなげる際に多く使われます。
「時間を要する」の正しい使い方を、以下の例文で確認しておきましょう。
例文
・この度は、作業完了までに時間を要してしまい、大変申し訳ございません。
・今回の案件は前回より時間を要しますが、よろしいでしょうか。
・こちらの仕様ですと完成までに時間を要しますので、別の仕様への変更をおすすめします。
「時間を要する」の類語・言い換え表現
「時間を要する」には、似た意味を表す類語・言い換え表現が多数あります。「時間がかかる」という基本の意味はどれも同じですが、表すニュアンスが異なるので、場面に応じて適切なものを使い分ける必要があります。
ここでは、「時間を要する」の類義語・言い換え表現のうち、特に代表的なものを6つ確認していきましょう。
「時間がかかる」
日常会話の場合は、「時間がかかる」と直接表現してしまうのがおすすめです。
親しい間柄の場合は、「時間を要する」などとフォーマルに言い表すと、かえって真意が伝わらない可能性があります。
その一方、ビジネスシーンなどで「時間がかかる」を多用すると、淡泊な印象に聞こえたり、稚拙な言葉遣いだと思われたりする可能性があります。そのため、カジュアルな場面では「時間がかかる」、フォーマルな場面では「時間を要する」と、シーンに応じて使い分けるといいでしょう。
「お待たせする」
「時間を要する」で伝えたいのは、時間がかかった結果、相手を待たせてしまうという意味です。そのため、その結果に着目して「お待たせする」と表現することもできます。
「お待たせする」は「時間を要する」と同様に、ビジネスシーンでも問題なく使用可能です。「お待たせしてしまい申し訳ありません」といった謝罪をはじめ、幅広い文脈で活用できるでしょう。
「時間を要する」と「お待たせする」の違いは、目的語の付け方にあります。「お待たせする」の目的語はあくまで相手なので、それ以外を目的語にすることはできません。そのため、「作業に時間を要する」とは言えても、「作業にお待たせする」とは言えないので要注意です。
そのような場合は、「作業完了までお待たせして」などと、目的語以外の方法で意味を補うとよいでしょう。
「手間取る」
「時間を要する」の類語としては、「手間取る(てまどる)」も挙げられます。
「手間」とは、何かを行うために必要な時間・労力といった意味です。そのため、「手間取る」と言うと、作業などで時間がかかるという意味になり、「時間を要する」とほとんど同じ意味を伝えられます。
「時間を要する」と「手間取る」の違いは、実際に時間がかかったのか否かという点にあります。
「時間を要する」の場合は、実際に「時間を要した」と使うこともできますし、未来において「時間を要するだろう」と予想する意味でも使えます。
その一方、「手間取る」は基本的に、実際に「手間取った」ことを表すことが多いです。そのため、「手間取りますが、よろしいですか」などと未来の予定を指して使うと、不自然に響く可能性があるので注意しましょう。
「おいそれとはいかない」
「おいそれとはいかない」は、「時間を要する」と同様に、物事に時間がかかることを表す表現です。
「おいそれ」という言葉は、相手に呼びかける感動詞である「おい」と、それに代名詞「それ」とすぐ応じることに由来しています。このことから、「おいそれといく」で物事が即座に完了することを指すようになり、「おいそれとはいかない」と否定することで、簡単にはできない物事を表すようになりました。
ただし、「おいそれ」には「おい」という口語言葉が入っていることもあり、日常会話でしか使えないカジュアルな表現です。そのため、ビジネスシーンで「おいそれとはいかない」と表現すると、失礼な物言いに受け取られる可能性があるので注意しましょう。
「一朝一夕にはいかない」
「一朝一夕(いっちょういっせき)にはいかない」は、時間がかかることを表す慣用表現で、「時間を要する」と似た意味で使うことができます。
「一朝一夕」とは、ひと朝かひと晩、つまりわずかな期間を意味します。そこから、「一朝一夕にはいかない」の形で、「わずかな時間にはできない」という意味を表すようになりました。
「一朝一夕にはいかない」は昔からある慣用句なので、日常会話からビジネスシーンまで、幅広い文脈で使えます。しかし、あまり多用するともったいぶった印象に聞こえる可能性があるので、使いすぎにはくれぐれも注意しましょう。
「ローマは一日にして成らず」
「ローマは一日にして成らず(ならず)」は、立派なことを成し遂げるには長い月日がかかることを表すことわざです。
ここで言う「ローマ」とは、紀元前から1200年以上も繁栄した「ローマ帝国」のこと。そのような大帝国を築き上げるためには、並大抵ではない月日が必要だったことから、世界各国でことわざとして使用されるようになりました。
「ローマは一日にして成らず」は、前述の「一朝一夕にはいかない」以上にもったいぶった言い回しです。そのため、安易に使いすぎると、かえって印象が軽くなってしまいます。そのため、「ローマは一日にして成らず」を使うのは、ここぞという場面に留めておくようにしましょう。
「時間を要する」は時間がかかることへの謝罪などに使える表現
「時間を要する」は、作業などを行う上で時間が必要だと表現する際に使われる言葉です。
日常会話ではあまり使われない一方、ビジネスシーンでは多くの場面で多用されます。
ビジネスシーンにおいて、相手をなるべく待たせないに越したことはありませんが、容易には運ばないことも多々あるでしょう。そのような場合は「時間を要する」やその他の類語を使って、適切に相手へ謝罪したり、許可を求めたりしていきましょう。
(にほんご倶楽部)
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※この記事は2023年08月07日に公開されたものです