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皆が幸せな未来を求めて。imperfect株式会社 代表取締役・佐伯美紗子さんの素顔

#リーダーの素顔

太田 冴

経営者やいわゆる「リーダー」って、どうしても私たちとは違う世界の人……と思ってしまいがち。でも、リーダーたちも毎日寝て、起きて、ご飯を食べて……そして仕事をしている普通の人。そんなリーダーの素顔を探るべく、「子どもの頃はどんな子だった?」「毎日どれくらい働いている?」「やっぱりタワマン住みですか?」など、素朴な疑問をぶつけます。

取材・文:太田冴
撮影:三浦晃一
編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部

経営者やいわゆる「リーダー」って、どうしても私たちとは違う世界の人……と思ってしまいがち。でもリーダーたちも毎日寝て、起きて、ご飯を食べて、そして仕事をしていて……私たちと同じように生活を送る、ビジネスウーマンの一人でもあります。

そんなリーダーたちの素顔や、これまでを探る本企画。今回の「リーダー」は、表参道ヒルズに構えるウェルフードマーケット&カフェ「imperfect表参道」を運営するimperfect株式会社代表取締役社長佐伯美紗子さん

コーヒーやチョコレートなどの生産現場に存在する貧困や搾取などの社会問題に向き合いながらも、美味しくておしゃれな商品を通じて無理なくサステナブルな社会を目指し、日々奮闘しているといいます。

穏やかで優しい語り口の裏には「社会を良くしたい」というまっすぐで力強い思いがありました。

佐伯美紗子さん

1985年大阪府生まれ。幼少期をアメリカで過ごし、その時の経験から「いつか社会や経済の仕組みを変えたい」という想いを抱くようになる。帰国後は国内の大学に進学し、2008年大手総合商社に新卒入社。2019年「imperfect 株式会社」の設立に携わり、マーケティング部⻑就任。ウェルフードマーケット&カフェ「imperfect 表参道」を同年7月に開業。2022年8月に代表取締役社長就任(現任)。

人見知りで物静かだった幼少期、海外で過ごした10代

Q.1 幼少期はどんな性格でしたか?

あまり悩んだりしない、楽観的な性格でした。すごく人見知りだったので、大勢の友人と一緒にいるというよりは、一人で過ごす時間が好きでした。

Q.2 どのようなご家庭で育ちましたか?

とても賑やかで仲が良い家庭でした。特に中高時代は親の仕事の都合で、家族みんなでアメリカに住んでいたこともあり、出かけるときは常に家族一緒。多感なティーンエイジャーの頃ですから一般的には家族と距離が出来やすい年頃だと思いますが、そんな時期でも常に一緒だったのですごく仲が良かったんじゃないかな。

姉がいるのですが、姉妹それぞれ好きなことを自由にやらせてもらえる環境だったと思います。

Q.3 思春期は学校でどんな存在でしたか?

みんなの前で何かをする、というようなことは苦手だったので、物静かなほうだったと思います。アメリカの学校に通っていた時も、日本に帰国してからも、ハンドベル部に所属していました。

Q.4 学生時代にアルバイトはしていましたか?

大学の近くにある不動産会社で働いていました。一人暮らしを始める高校3年生や大学1年生のお客様に、カウンターで物件を紹介するお仕事でした。特に2~3月は繁忙期で、忙しなく働いていたのを覚えています。

Q.5 大学時代はどのようなことを学んでいましたか?

経済学部で、株式市場分析などを学んでいました。また、ベルギーでホームステイをしていた時期も。幼少期からアメリカやメキシコには住んだことがありましたが、ヨーロッパには縁が無く初めての経験。伝統的な暮らしや街並みが残る地域ですごく魅力的だったのを覚えています。

また、私は当時からチョコレートが大好きで、おいしいお菓子をいっぱい食べられるのも最高でした。ベルギーって、ショコラティエさんが営んでいる小さなチョコレート屋さんが町中の至る所に並んでいるんです。今日はここのお菓子を食べよう、明日はあそこの……と、毎日楽しんでいました。今ではチョコレートを扱う事業を行っているのですから、なんだか繋がっているものですね。

「SDGsってビジネスになるの?」懐疑的な声と戦った創業期

Q.6 社長に就任するまでの経緯を教えてください。

元々新卒で総合商社に入社したのですが、その後事業として立ち上げたのがimperfectです。会社員でしたから、社長になりたいとか起業したいという意思があったわけではありません。

ただ、当時は今ほどSDGsやサステナビリティが注目を浴びていない時代。自分の手がけるビジネスが社会に対して良い影響を与えるためにはどうすれば良いのか、ということを考えた結果、最適な方法が会社を立ち上げる、ということでした。会社という形態にすることで、私たちのやりたいことができる、と思ったのです。

設立当時は私の上司にあたる人が社長を担っていましたが、当初から「いずれは佐伯に任せようと思っている」と言ってもらっていて。いずれは、くらいの気持ちでいたのですが、まさかこんなに早い段階でその時がくるとは。はじめは、自分に務まるのか、という不安でいっぱいでした。

Q.7 社長になった当初、一番大変だったことは何ですか?

「imperfect」では「私たち生活者のみならず、世界や社会にとってもWell(良い)」という意味を込めた「ウェルフード&ドリンク」を提供していますが、創業当初の2019年は今ほどサステナビリティやSDGsが浸透していなかったため「本当にビジネスとして成り立つのか」という懐疑的な意見も多くありました。

株主をはじめ事業に関わってくださる方々に対してこのビジネスの重要性や未来を信じていただけるよう説得するのが非常に大変でした。

Q.8 創業してから一番うれしかったことは何ですか?

私たちがサポートしている農園の方々が喜んでくださることが一番うれしいです。皆さんはカカオやコーヒー豆などを栽培していらっしゃいますが、それがどのような商品に生まれ変わって販売されているのか、というのを知らない方は多い。

そこで、実際に表参道の店舗に来ていただいたり、動画や写真を用いてお店や商品の様子を見ていただいたりしています。遠く離れた日本でこんなふうに自分たちが作ったものが消費者に届いていると知ることができて、すごく喜んでくださるんです。

Q.9 仕事でやりがいを感じるのはどんな時ですか?

ふたつあるのですが、ひとつはやはりお客様が私たちの商品をみて「おいしそう」「かわいい」と言ってくださる姿を見る時。純粋に、とてもうれしく思います。

そして、もう一つは、従業員が楽しそうに働いている姿を見る時です。特に私たちの事業は、伝えたいコンセプトやメッセージが強く、かつはっきりしています。それを従業員の皆が同じレベルで共有できていることが事業の成功につながると考えているんです。

1日の終わりは“前向きな振り返り”で気持ちをリセット

Q.10 毎日のタイムスケジュールを教えてください。

朝はあまり強くないので、ゆっくりシャワーを浴びて身支度をして出社します。そこから23時ごろまで会社にいますね。

すごく長いと思うのですが、実はそこまでしんどくないんですよ(笑)。あまりプライベートと仕事の境目を作らないタイプだからかもしれません。会社にいるからといってずっと根を詰めて働いているわけでもありませんし、逆に家にいるからといって仕事のことを忘れているわけでもありませんから。

午前中から午後過ぎまでは社内外との打ち合わせが詰まっていて、チームメンバーからの相談を受けたり自分で考えごとをしたりする時間は夕方以降。帰宅後は寝る支度をしてベッドに入ります。香りものがとても好きなので、キャンドルを焚いてリラックスしながらゆっくり考えごとをしています。

Q.11 自宅でのルーティーンはありますか?

夜ベッドに入った後、一日を振り返る時間を作っています。例えばメンバーとの会話を振り返って「もう少しああいう伝え方をすればよかったな」とか「明日はこれを伝えよう」とか、頭の整理をするんです。

やはり人間なので当然気持ちの浮き沈みもありますが、それを表に出すのは避けたい。できる限り自分自身が穏やかでいられるように、そうして振り返りをして気持ちを鎮めてから眠るようにしているんです。

よく「逆に眠れなくなるのでは?」と聞かれますが、どちらかというと早く明日にならないかな、くらいの気持ちで眠りにつけるんですよ。

振り返りをしていると、メンバーに伝えたいことがたくさん出てきます。「ああすれば良かった」という後悔や反省の気持ちよりも、「明日はあのメンバーに“ここが良かったよ”って伝えよう」などと思って寝るので、明日がくるのが楽しみになるんです。

Q.12 お休みの日は何をされていますか?

私、寝ることと食べることがすごく好きなんです。なので、休日はとにかくおいしいものを食べておいしいお酒を飲んで、ゆっくり眠る。これが一番幸せです。

あとは、本を読むのもすごく好きです。小説もビジネス書も読みますが、一番好きなのは真山仁さんの経済小説『ハゲタカ』シリーズ。

あとはキャンドル集めも好きで、家に20〜30個くらいはあるので、毎日その中から気分に合う香りを選んでキャンドルウォーマーで楽しんでいます。要するに、かなりのインドア派ですね(笑)。

ロールモデルは船の仕事をしていた祖母の存在

Q.13 何歳まで仕事をしたいですか?

考えたこともなかったですね……。というのも、私の祖母がずっと働いていたんです。時代的に自分で仕事をする女性はそう多くなかったはずですが、船の設計周辺に関わる仕事をしていてすごくアクティブな女性だったんです。そんな祖母の姿を見ていたからか、いくつになっても元気に働いていることが自然に想像できるんだと思います。

将来の夢は “かわいいおばあちゃん”になること。もちろん顔がかわいいという意味ではなく、すごく穏やかで優しい雰囲気をまとっているおばあちゃんになりたいんです。それまでの人生に自分なりに自信を持ち、自立している人こそ、歳をとったときにそういう雰囲気を醸し出せるのだと思うから。

Q.14 プライベートで悩みはありますか?

全然無いです。もちろん仕事でもプライベートでも考えることはいっぱいあるのですが、“悩む”ことはありません。あれこれ悩むことは解決にはならないと思うんです。

課題があったらその時に出せるベストな回答をすぐに出す。それで解決しなかったらまた考えて次の手を打つ、というように、ただ漠然と悩む時間は持たないようにしています。あとはやっぱり、おいしいものを食べてゆっくり寝て、忘れちゃうことも大事です(笑)。

Q.15 今後の展望を教えてください。

せっかく社会に関わって生きているのであれば、何かしら自分自身が社会に対してプラスになれることをしたいと思っています。今はそれが幸いにも事業を通じて叶えられているので、より一層成果をだして、生産者も含めた世の中を少しでも良くしていきたい。

歳を重ねて、仮にそれが事業という形ではなくなったとしても、私という人間が関わることで少しでも社会を良くすることができれば、と思います。

※この記事は2023年06月20日に公開されたものです

太田 冴

ライター/平成元年生まれ。舞台、韓国ドラマ、俳優、アイドルグループ、コスメなどを幅広く愛する雑食オタク。ジェンダー・ダイバーシティマネジメント・メンタルヘルスなどの社会問題にも関心あり。30歳で大学院に入学し、学び直しをしました。

●note:https://note.com/sae8320

●Twitter:https://twitter.com/sae8320

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