お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

挑戦は身を助く。チャレンジし続けた先に訪れたチャンスで「大企業の経営層」へ。NTTメディアサプライイノベーション開発部部長・新宅亮子さんの素顔

#リーダーの素顔

ミクニシオリ

経営者やいわゆる「リーダー」って、どうしても私たちとは違う世界の人……と思ってしまいがち。でも、リーダーたちも毎日寝て、起きて、ご飯を食べて……そして仕事をしている普通の人。そんなリーダーの素顔を探るべく、「子どもの頃はどんな子だった?」「毎日どれくらい働いている?」「やっぱりタワマン住みですか?」など、素朴な疑問をぶつけます。

取材・文:ミクニシオリ
撮影:大嶋千尋
編集:松岡紘子/マイナビウーマン編集部

働く女性たちは、自分の意思で社内キャリアを築いていくことの難しさを感じることは多いもの。結婚や出産といったライフイベントもあり、描いたとおりにキャリアを築ける人はなかなかいないのかもしれません。

「年齢や性別、それまでのキャリアに関係なく、挑戦したい時や挑戦できる時に行動してみると、何かが変わる可能性があるよ。私は“挑戦が身を助く(たすく)”って思っています」

そう話してくれたのは、新卒でNTTに入社し、30年かけてグループ会社の役員にまで上り詰めた、新宅亮子さん。彼女にとっても、自分のキャリアは思い描いた通りのものではなかったといいます。30代でシングルマザーとなった新宅さんは「若い頃は逆に、自分のキャリアを棚上げにして他に優先すべきことに全集中! ということも多かった」と話してくれました。そんな彼女のキャリアが花開いたのは、なんとアラフィフを迎えてからのこと。

彼女のキャリアや人生の話を聞いてみると、何かに挑戦するのに、遅いなんてことはないのだと思わせられます。また、地方の営業・企画職を長く務めてきた新宅さんのキャリアを大きく変えるきっかけになったのは、とある「飛び道具的」な努力のおかげなのだとか。

新宅 亮子さん

1992年NTT入社。仕事と育児を両立しながら地域に閉じたキャリアとして20年以上営業畑をわたり歩き、その後人事労働部門の育成業務に従事。40代後半に差しかかる頃、個人で社外のビジネスコンテストや起業家養成プログラムに挑戦し、そこで得た知見や人脈を社内に持ち込むかたちで活用。イントレプレナーとして活躍する中、介護も経験した後、2022年に飛び級扱いでNTT西日本のグループ会社役員にハードアサイン。その後、2023年7月に新設された「イノベーション開発部」の組織長に任命され、インキュベーション段階にある新サービスの早期立ち上げや新規事業開発に邁進中。

40代後半を迎えて「社外活動」をフックに事業開発組織へとキャリアチェンジ

Q.1 幼少期はどんな性格でしたか?

好奇心旺盛だった一方で、食が細く体格も小さかったので、母をよく心配させていました。幼少からなんとなく、自分は他の子とちょっと違うかもしれないと思っていました。他の子が興味を持つことに自分は興味を持てなかったり、ちょっと空気が読めなかったり。もちろん悪気はなかったのですが、先生からしても扱いづらさがあったのではないかと、今になって思います。ただ、母がとても優しい人で、何かあった時は「亮子ちゃんは大丈夫」と強く抱きしめてくれました。そのおかげで背負いすぎることなく、のびのび成長できたと思います。

幼少期の新宅さん。お父さん、1歳違いの弟さんと一緒に(ご本人提供)

Q.2 学生時代に注力したことはなんですか。

バイトやサークル活動など、みんなと同じようなことを特に深く考えることなく、楽しんでいたと思います。特に思い入れがあるのは、FM局でのバイトですね。番組コンテンツの企画制作や選曲、パーソナリティまでやらせてもらっていて、エンタメ業界にも興味を持っていました。就職活動も、当時はバブルだったこともあって「女の子はキャラ採用」なんて言われていたので、あまり苦労した覚えはありません。その分、入社してからは色々と苦労しました……(笑)。

Q.3 これまでのキャリアを教えて下さい。

1992年にNTTに入社し、現在32年目です。長らく、名古屋で営業・企画職として現場仕事を続けてきました。20代で結婚、出産し、30代には離婚も経験しています。シングルマザーとして子育てしてきたので、40代半ばまで拠点を変えないことがキャリアの最優先事項だったのですが、「もっと色々な仕事に挑戦してみたい」という思いもずっと持っていました。

私は50代を迎えてから、介護も経験した頃に「NTT University」という多様な経営人材のキャリア形成を支援する社内制度を知り、ちょうど一般公募での募集があったので思い切って受験したところ、合格することができました。「NTT University」では、経営等の研修プログラムの受講に加えて、未経験業務分野でのポスト配置によって実践の業務経験を積むカリキュラムが導入されていました。そのため、「NTT University」への入学を契機に、その年の夏には地域の現場課長から飛び級でNTTメディアサプライの役員にハードアサインされ、現在は新設されたイノベーション開発部の部長を務めています。

Q.4 リーダー職に就いた時の心境を教えてください。

新卒時代から「新規事業をやってみたい」「海外で活躍したい」という思いで働いてきましたが、20代後半、30代では、プライベートでのライフイベントが忙しく、目の前の仕事と日常に追われて精一杯の時期が続きました。40代を迎えてから「私の人生ってこれでいいんだっけ」と立ち返り、自費でビジネススクールに通ってMBAを取得したりビジネスコンテストに応募したりと積極的に活動してきました。私から言えるのは、40代、50代でも新しいことを学んだり、挑戦したりするのは遅くないということ。ただ、いきなり高いポジションに就くと今までとは当然見える景色が変わりますから、もちろんプレッシャーは大きかったです。

新しいことを学び、新しい人と出会い……夢だった海外出張にも

Q.5 新しい挑戦のために、どんな努力をしましたか。

自分の実力試し、運試しも兼ねて社外での実績づくりに力を入れました。40代半ばで通ったビジネススクールでの学びは大きかったですね。そこでの成績が想像以上に良く、志を同じくする仲間にも恵まれ、自分の強みを知ったことをきっかけに様々なビジネスコンテストに応募し、社外実績を持ち込むかたちでNTTグループ内のジョブポスティング制度に応募して夢に見た本社組織への転身をかなえました。大企業務めだったり、地方で働いていたりする方だと、今の会社で新しい挑戦なんてできない、と感じるかもしれません。私もそうでしたが、ハングリー精神と好奇心だけでここまでやってきました。

Q.6 仕事でやりがいを感じるのはどんな時ですか?

新規事業や国際的な仕事にはずっと興味があったので、今扱っている商材には非常にやりがいを感じています。例えば、eSIMサービスでは、お持ちのスマートフォンがeSIM対応端末であれば、Webでのお申し込みのみで、物理的なSIMの抜き差しをすることなく海外でもスマートフォンを使っていただけます。コンシューマ向けサービスの取り扱いは当社で初めてのことなので苦労も多いですが、時代の変わり目を作るサービスに携われていることが嬉しいです。

Q.7 リーダー職に就いてから、大変だったことはありますか?

挑戦するタイミングが遅かった分、周囲で活躍するエリートとの格の違いに悩むこともあります。経営という新しい領域へのチャレンジをしながら、新規事業の数字を伸ばしていかなくてはいけないというプレッシャーに押しつぶされそうになった時もありましたが、人の倍は努力しないとできないことも多いので、とにかくがむしゃらにやるしかありません。とはいえ、完璧をめざすのではなく、不完全なままの私であっても、できるだけ自然体の私で通用する世界をつくりたいと思っています。理想は、個の強みのかけ合わせで共助・協働・共創が育まれ、価値創造に向けた強いチームビルディングが成されること。私は能力に偏りのある人材なので、標準的なリーダーができる当たり前のことができず、その分苦労も多いのですが、誰しも社会のどこかには、自分が活躍できる領域があるはずです。今は自分の活動を通して、キャリアに悩む女性にそのことを伝えていくことをモチベーションに、努力を続けています。

Q.8リーダー職に就いてから、嬉しかったことはありますか?

去年、海外でのモバイル展示会に視察と個別商談を兼ねて参加させていただきました。念願かなって初めて海外出張に行くことができた時は感慨深かったですね。通訳もなしにトライしなくてはいけなかったので、英語で起業したビジネススクールの友人に個別でビジネス英会話のレッスンをつけてもらってから行きましたが、それでも現地での交流は緊張の連続でした。ただ、「NTT University」で知り合ったNTTグループのグローバル人材の方を通じて得たご縁にも恵まれ、現地で彼女と再会した際にはそこからさらに新たな出会いもいただき、想像以上のグローバル人材との人脈開拓につながりました。初めての海外出張で、個別商談を成功できたことも嬉しかったですが、人とのつながりの大切さを噛み締めた瞬間でもありました。

Q.9 仕事終わりやお休みの日は何をされていますか?

介護もやり切り、子どもも手が離れているので、ここ数年は今まで以上に、自分のために時間を使えるようになりました。社内では会議をしている時間が長いですが、現在も退勤後は社外活動に力を入れています。ビジネススクールで出会った仲間たちと情報交換をしたり、新しい知識を身につけたり……最近では「中部女性リーダーズサロン」という中部圏を中心に多様性と変革を育むコミュニティにも所属しており、ずっと興味のあったダイバーシティ推進活動にも力を入れています。

異色のキャリアも「当たり前」になる世の中を願って

Q.10 プライベートや仕事での悩みはありますか?

今は、仕事で新しい挑戦をさせていただいていることに全力で応えたいという思いが強く、人生も後半に差しかかっているというのに、プライベートな悩みはほとんどありません(笑)。ただ仕事では、様々な社外活動に参加したり、新しい知識を身につけたりしているにも関わらず、なかなか仕事の成果につなげられていないことが苦しいです。ただ、思い悩んでばかりなのもよくないので、睡眠と食事には気をつけて生活しています。身体と心のどちらかが疲れている時は、一方だけでも気をつけてケアするのが大切だと思っています。

Q.11 ストレス発散の方法を教えてください。

土日も社外活動に勤しむことも多いですが、美味しいごはんも好きなので、地元のママ友たちとおしゃべりしてストレス発散することも。時に、仕事と直接関係のない人と話をすることが、私にとって心安らぐ瞬間になります。離婚やシングルでの子育て、介護など、人生の中で大変なことはこれまでも何度もありましたが、そういった時に人生の先輩や、ポジティブな友人に話を聞いてもらうことで、心が軽くなったことが多かったように思います。

今でも心に残っているのは、やりたいことが思うようにできなかった30代の頃、40代の先輩に「女の人生は40からよ」と言われたこと。数年後、その先輩にはさらに「50になると女はもっと自由になる」とも言われました(笑)。確かに、色々なライフイベントがいったん落ち着いたタイミングだったからこそ、今こうして自分の仕事のためだけに生きることができています。苦しい時はいつも、背中を押してくれる誰かの一言に助けられてきたような気がします。

Q.12 働く女性たちに一言、メッセージをお願いします。

自分としては、飛び級での就任は到底かなわないミラクルのように思えましたが、思い切って踏み出してみたら、新しい世界が開けました。こういったキャリアが、これからは世の中でもっと当たり前のことになっていくと思います。私は決して完璧な人間ではなく、標準的なリーダーと比べて圧倒的に足りていない部分があります。けれど、そんな私を必要としてくれる部署があった。完璧ではなくても、助けて応援してくれる人がいて、活躍できる場所はあります。会社にいるからこそ、足りない部分は人を頼ることもできます。私は、足りない部分も多いけれど足りている部分を強みにした“ありのままの自分”で通用する領域、世界があると証明し、日本のダイバーシティの懐を広げていきたいです。

※この記事は2024年03月22日に公開されたものです

ミクニシオリ

1992年生まれ。2017年にライター・編集として独立。芸能人やインフルエンサー、起業家など、主に女性に対するインタビューを多数執筆。恋バナと恋愛考察も得意ジャンル。ハッピーとラッキーがみんなに届きますように。

Twitter:https://twitter.com/oohrin

この著者の記事一覧 

SHARE