「お申し出ください」と「お申し付けください」の違いは? 意味や使い方(例文)
ビジネスシーンでもよく見聞きする「お申し出ください」という言葉。似たフレーズに「お申し付けください」がありますが、両者の違いを理解していますか? 今回は「お申し付けください」の意味や使い方、言い換え表現を例文付きで解説します。
「お申し出ください」という言葉は、ビジネスシーンでよく使われる言葉です。特に接客業では定番の言葉で、お客さまの意見、要望を伝えてほしいシーンで使われます。
この記事では、「お申し出ください」の意味や使い方から、言い換え可能な表現までを解説していきます。
「お申し出ください」の意味とは?
「お申し出ください」は、「意見や希望があれば言ってください」という意味を持つ言葉です。
「申し出る」の意味は以下の通り。
もうしでる【申し出る】
意見・希望などを言って出る。
(三省堂『大辞林 第四版』)
「お申し出ください」は、主にお客さまや取引先に対して使う言葉で、敬語表現としてビジネスシーンを中心に使われています。どちらかと言えばお客さま相手に使うことが多く、接客業で特に定番の表現です。
なお、「お申し出ください」に、「お申し出くださいませ」に変えると、より丁寧な表現になります。
「お申し出ください」の使い方と例文
「お申し出ください」は主にビジネスシーンにおいて、同じ会社で働いている人や知り合いに対しては使う機会がほとんどなく、主に取引先やお客さまに対して使う表現となります。
意見や希望を伝えてくださいという意味合いからも、相手が困っている際や、声がけの定型文としての使われ方が多いでしょう。
社外に向けて使うことが多い言葉なので、使い方を間違えると失礼にあたってしまうケースもあります。例文を参考に、使い方を確認しておきましょう。
例文
・何か私にお手伝いできることがありましたら、何なりとお申し出ください。
・ご不明な点などあればお気軽にお申し出くださいませ。
目上の人や年上の人に対して、「お申し出ください」を使うことがあります。そもそも「申す」は謙譲語ですが、「お~ください」という表現に変えることで丁寧な表現となり、目上の人にも無理なく使える言い回しになります。
「手伝えることがないか教えてほしい」といった表現や、「意見があれば何なりと言ってほしい」などの意味で使われます。
「お申し出ください」と「お申し付けください」の違い
「お申し出ください」と似た表現で「お申し付けください」という言葉があります。この2つは一見似ていますが、それぞれニュアンスが異なります。
もうしつける【申し付ける】
上の者が下の者に命令する。
(三省堂『大辞林 第四版』)
上記の辞書にある通り、「上の者が下の者に命令する」という意味を持つのが「申し付ける」です。
つまり「お申し付けください」は、「必要なものがあれば言ってください」といった、「命令してほしい」の意味に近い言葉といえます。
一方で「お申し出ください」は、「意見や要望を言ってほしい」という意味を持った言い方です。「お申し出ください」は対等な立場に近い表現で、命令ではなく意見を言ってほしい際に使います。
どちらも「伝えてほしい、言ってほしい」の意味を持っていますが、少し違いがあるため使い方に注意しましょう。
「お申し出ください」を使う際の注意点
「お申し出ください」は、似た表現がいくつかあり、その中でも使うシーンによっては誤用になってしまうこともあります。「お申し出ください」を使うにあたって、知っておきたい注意点を紹介します。
取引先やお客さまに失礼のないよう、ポイントを押さえておきましょう。
(1)「お申し出下さい」という漢字表記はNG
「お申し出ください」をメールや手紙で使うときに気を付けたいポイントが、「お申し出下さい」という漢字表記は使用しないということ。
「お申し出ください」の「ください」は補助動詞で、「○○を下さい」の本動詞とは違う言葉です。そのため、「お申し出ください」を書くときは、必ず「ください」をひらがな表記にしましょう。
(2)「お申し出ください」の前に言葉を添える
「お申し出ください」は単体で使うと、相手によってはそっけない印象を持たれてしまったり、事務的に感じられたりすることがあります。
そもそも「お申し出ください」は相手に行動を起こしてもらうためにかける言葉です。そのため、相手の気持ちに寄り添って、意見や答えをもらえるように言葉を添えましょう。
例えば、「何なりとお申し出ください」という表現をすることで、些細なことでも伝えてほしいといった意味が伝わりやすくなるでしょう。
相手が気を使って意見が言えない、ということがないように、「お申し出ください」の前には「些細なことでもぜひお申し出ください」といった寄り添いの言葉を付けることをおすすめします。
「お申し出ください」の言い換え表現
「お申し出ください」には、いろいろな言い換え表現があります。敬語や意味についても若干変わってきますので、適したシーンや相手によって使い分けることができるように複数の言い換え表現を覚えておくと便利です。
「ご教示ください」
目上の方や取引先の方について、「このことについて教えてほしい」という意味で使う言葉が「ご教示ください」です。
「○○についてお申し出ください」よりも、質問に対して答えてほしいときに「ご教示ください」と使うと、さらに目的が伝わりやすくなります。
主に目上の方に対して「お申し出ください」と質問目的で使う場合は「ご教示ください」を使ってみましょう。
「お知らせください」
「お申し出ください」よりも気軽に使える言い換え表現が「お知らせください」です。
「お知らせください」は、何か変更があれば伝えてほしいといった意味や、後ほど連絡がほしいなどのシーンで使う表現です。
もともと「お知らせください」は、通知や案内、連絡について丁寧に伝えるときに使う言葉です。しっかりとした敬語なので、目上の人にも使える言葉です。
「ご連絡ください」
「ご連絡ください」は「お申し出ください」よりも直接的な表現で、「連絡がほしい」という目的がまっすぐに伝わる言い換え表現です。
「お申し出ください」ではやや回りくどい表現になってしまうときも、「ご連絡ください」だと相手に何をしてほしいのかすぐに伝わります。例えば「○○について、変更がありましたらご連絡ください」といった言い方があります。
目上の人に対し使う場合は「ご連絡いただけますでしょうか」「ご連絡お願い申し上げます」などのより丁寧な表現に言い換えて使うようにしましょう。
「お申し出ください」は要望・意見がほしいときに使える言葉
「お申し出ください」はお客さまや取引先に対して、要望や意見があれば言ってほしいといった希望を伝える言葉です。
「お申し付けください」とよく似ていますが、「お申し付けください」は上の人から命令してもらう表現に近い言葉に対して、「お申し出ください」は意見があれば言ってほしいといった、やや対等に近い言い回しです。
言い換え表現を使うことで、質問に対して答えがほしいときやこちらから呼びかけるときにも使うこともできます。
細かい違いはありますが、特にビジネスではよく使うフレーズのため、ぜひ使い方を知ってビジネスシーンに活かしてみてはいかがでしょうか。
(にほんご倶楽部)
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※この記事は2023年06月08日に公開されたものです