raciné代表が語る「膣美容」が女性のカラダに大切なワケ
すべての女性が自分らしく過ごすために、女性の健康や身体にまつわるサービスを展開するリーダーにインタビュー。女性としても、ビジネスパーソンとしても輝く彼女たちは、一体どんなことを考え、“女性のカラダ”と向き合っているのでしょうか?
取材・文:ミクニシオリ
撮影:大嶋千尋
編集:鈴木麻葉/マイナビウーマン編集部
「フェムテックが話題になっていることは知っているけれど、実際何をすればいいのかはよく分からない」という声をよく聞きます。たしかにメディアでは話題に上がりがちだけど、生理や自分の身体に悩みがないと、自分とどう関係があるのか分からないですよね。
でも「気づいてから取り入れるのではなく、予防のために行うことが大切なこと」ってたくさんあります。今回、それを教えてくれたのは、膣美容液や膣フローラ検査キットなどのプロダクトを展開する、デリケートゾーンブランド「raciné」の代表・叶くるみさん。
叶さんは、大手化粧品会社勤務で培った経験と、自身の妊活、妊娠、出産をきっかけに、膣の健康管理の大切さを伝えるため、racinéを立ち上げました。「本当の美しさのためには、肌表面のケアだけでなく、内側からのケアが大切なのでは」「不妊に悩む前に、予防的に膣美容に取り組んでいれば」。悩んだ経験を持つ彼女だからこそ伝わる、膣ケアと私たちの美容・健康との関わりを教えてもらいました。
美容を突き詰める中で膣美容に興味を持った20代
――叶さんは「raciné」を立ち上げる以前は、どんなお仕事をしていたんですか?
新卒から起業するまで、化粧品会社で、企画職として働いていました。美について向き合う日々でしたが、肌表面のケアを贅沢にしても、そもそもの体や肌の状態次第でスキンケアの効果が反映されないこともあると感じていました。
自分自身も化粧品が大好きで、スキンケアにはかなり力を入れていたのですが、忙しかったこともあり、どんな高級美容液を塗っても、肌が荒れる日も。そこで、インナーケアについても勉強するようになり「膣美容の可能性」を考えるようになりました。
――インナーケアと膣美容にはどんな関係性があるんですか?
膣は内臓なので、膣をケアすることは、まさにインナーケアなんです。内臓なのに外側からケアすることができる、特別な臓器だと思っています。
実は膣って、肌表面(腕の内側の皮膚)と比べて成分の吸収率が約42倍あると言われているんです。この吸収率を活用しない手はないですよね!
――すごい吸収率! 初めて知った情報なのですが、スキンケア会社の方なら誰でも知っているようなことなのでしょうか?
化粧品会社が目指すのは肌表面からのアプローチなので、研究者でもその情報を知らない人もいると思います。
というのも、私が膣美容にたどり着いたもう一つのきっかけが、妊活に取り組んでいたからなんです。ホルモン療法で自己注射や体外受精など、さまざまな方法を試していました。
――では、不妊と膣美容は関係があるのでしょうか?
私の場合はそうでした。不妊治療は身体と金銭面で負担が大きく、一度休んでいる時に、デリケートゾーンケアの大切さを知ったんです。
その後、よもぎ蒸しや膣ケアサロンに通ったり、ラクトバチルス菌という膣の善玉菌のサプリや膣剤を使うことで、自然に妊娠することができました。
――ちなみに、大企業で開発するのではなく、自身で起業されたのはなぜですか?
まだまだフェムテック市場は日本においてこれからの分野ですので、大手企業で商品を作る場合、どうしても企画承認や研究に時間がかかるんです。なので、自分で立ち上げる道を選びました。
女性自身の膣内環境に注目してほしいワケ
――膣ケアはインナーケアにもつながるというお話だったと思うのですが、美容的な観点としては、吸収率以外にどんな関わりがあるのでしょうか?
体の構造として、膣は子宮、卵巣とつながっていますよね。そして卵巣は、女性ホルモンが分泌される臓器です。卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンは“美容ホルモン”とも呼ばれていて、肌のうるおいや髪のツヤを作ってくれています。膣の状態が良いと、免疫がしっかりと働くので、ウイルスや悪玉菌などをブロックすることができ、女性ホルモンのバランスも整うと考えています。
また、膣周りは血流を左右する重要な部分です。血行をよくすると、美しい肌、いい体調につながり、全身にうれしい効果があります。
――女性ホルモンの働きが美容と関係がある話は、聞いたことがあります。
そうなんです! 女性ホルモンと膣の状態も関係があるんですよ。年齢とともにエストロゲンが低下することで、膣がうるおいづらくなってしまい、免疫も下がっていきます。その結果、乾燥やかゆみやニオイといったトラブルにつながります。
最近は若くても、ホルモンバランスが乱れて、膣の状態が良くない方も増えていると婦人科医師の方たちと話す中で話題になります。しかも、膣の乾燥などのトラブルを自覚し、なにか対策をしている人は少ないんです。
――たしかに、自分の膣内環境に目を向けたことはなかったかもしれません。
ですよね(笑)。妊娠したいと思った時に初めて膣内環境に目を向けてケアを始めると、妊娠のタイミングが遅くなってしまうこともあります。1日でも早く、膣ケアを始めてほしいという思いがあります。
そこで開発したのが、膣美容液の『core serum』なんです。美容効果の切り口は、妊娠期、出産期、更年期等、ライフステージによって大きく身体の状態が変化していく女性に、まずは膣ケアに興味を持ってもらうためにつくった商品です。
セックスレス改善、全身美容……幅広い膣美容の効果
――『core serum』のこだわりポイントについて、お伺いできますか?
まず、原料選定にこだわり抜いた「ヒト幹細胞培養液」を使っていることです。ヒト幹細胞培養液は再生医療の領域でも注目されている成分で、点滴で体内に投与する美容クリニックが多くあります。
美容クリニックでは、点滴という方法を使う以上、医師が関わることになるので施術も高額になりますが、『core serum』を使い、膣内に美容液を入れることは誰にでもできるので、コスト面と手間の面で優位性があります。
また、膣の善玉菌であるラクトバチルス菌の培養液を全成分の79%配合しているので、肌や腸だけでなく、膣も菌ケアできるのが特徴です。
――『core serum』の開発で苦労されたのはどんな部分ですか?
数十箇所の工場に企画書を持ち込みましたが、全ての工場に生産を断られてしまったことでしょうか(笑)。商材が特殊で、どの工場にも「作ったことがないもの」「フェムケアというセンシティブなもの」と捉えられてしまいました。最終的に、理念に共感してくれる会社と出会って作ることができました。
形状や使用感も何パターンも試して、女性が使いやすいようにしています。膣内に挿れるのが怖いという意見もあるのですが、カートリッジはタンポンより細く、痛みも感じず簡単に使うことができますよ。
――『core serum』はどのような頻度で使うのがよいのでしょうか?
おすすめは、生理後の3日間連続使用していただくことですが、生理さえ避ければいつでも使っていただいて構いません。
――叶さんはフェムケアや膣美容に向き合ってから、自身にどんな変化を感じますか?
まず、肌環境がかなりよくなりました。膣ケアを始めてからは体調を崩しづらくなったので、急な肌荒れに見舞われることが減りましたね。平熱も上がりました!
――膣美容がこんなにさまざまな効果を持つとは、思っていませんでした。
やはり日本では、まだまだ膣に関する情報が足りておらず、女性自身の理解が得られていないのが悔しいですね。婦人科が身近でないこともあって、なかなか自身の膣内環境を知るきっかけがないということを問題視しており、先日『膣チェックキットキット』もリリースしました。
この検査キットではラクトバチルス菌という善玉菌の量を調べることができます。ラクトバチルス菌は、膣の状態の指標となる菌で、子宮内膜症や妊娠と関連があります。今後妊娠を考える方にも早めに検査してほしいですし、そうではない人も自身の膣内環境を知って、膣美人を目指すきっかけになればいいなと思っています。
――膣ケアはこれから、日本でも広がっていくと思いますか?
膣美容は「raciné」でもっと広げていけるように頑張ります! とはいえ、日本人女性全体の膣ケアへの理解が必要になります。
膣の悩みができる前に予防していくことがベストです。女性にとって膣は唯一、自身で触れる臓器であり、そしてライフステージにも関わる重要な器官でもあります。フェムケアの定着とともに、膣内環境も注目されていくと思いますが、そのスピードをさらに早めて、お悩みを持つ人を1人でも減らすのが、私のミッションです!
※この記事は2023年04月13日に公開されたものです