【File63】彼氏へのマイルールがイタすぎた話
今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回は野口万紀子さんのイタい恋。
「なんでマキちゃんは結婚できないんだろうね」
誰かに会うともれなくこの話題が出てきます。女子会でも、仕事でも、同窓会でも、最後は必ずと言っていいほど『なぜ私が結婚できないのか問題』で皆が議論し始める。あまりにも言われるので、もう慣れっこです。
まぁ、そりゃこの歳まで一度もバツも無くきてしまったので、何か問題があるのではないかと思う人もいるでしょう。なんなら、男に興味が無い人だと思われたこともあるんですから!
周りの友達は30代のうちに結婚しなくちゃ! という切迫感からか、マッチングアプリやらお見合いまでさまざまな手段で出会い、まとまっていきました。
私はこれまで一体何をしてきたのだろう……。
正直そういう思いが無いとも言い切れない。若い頃の自分のことはあまり覚えていないのですが、一つだけ言えることは、とにかく変な癖を持っていたんですよ。
今回はそのお話をしたいと思います。
汗を見ると〇〇な気持ちに……無茶苦茶な私の彼氏像
単刀直入に言うと当時の私は、汗をかく人が無理っていう絶対的な基準があったんです。
自分だって汗かくじゃないか!
いや、その通りなんです。
厳密にいうと、潔癖が過ぎて汗がダラダラ垂れてるのが無理とかではなく、汗をかいている人を見ると、なぜか悲しい気持ちになるっていう謎のメンタルが……(笑)。とにかく汗をかかない、もしくは可能な限りかかない努力をしてくれる人じゃないとダメだったんです。
何かのトラウマなのか、無意識レベルの潔癖症だったのか、原因はよくわからないのですが、とにかく汗をかいてほしくなかった……(泣)。「汗をかいてほしくない」から派生して、走ってほしくないっていうのもあって、たとえ急がなきゃいけない状況だったとしても、走ってほしくないんですよ。
「走る=汗をかく」のイメージがあったんだと思うんですけど、たとえ遅刻しそうでも私のところに来る直前までは走っててもいいけど、登場時には歩いてきてほしくて、汗もかかないで! ってお願いしてたんです。
めんどくさすぎる……(笑)。
さまざまな反論が聞こえてきそうですが、マイルールはまだまだ続きます。
ランニングは見えないところでコッソリと……
当時の彼氏は健気にも私の謎ルールを守ってくれていて、ちょっと小走りしたりランニングしたりする時も「走ったらマキに嫌われる!!」と言って、私がいない時や、目につかないルートで走ったりしてくれていました。
待ち合わせにギリギリの時間であっても、走る姿を見せることなく涼しい顔で登場。真夏にラーメン屋に行こうが、辛いものを食べに行こうが汗はかけません(笑)。もうそれは皇室の人たちのような徹底ぶりです。
当然ですが、走って汗をかいている人しかいないジムなんかも、これが理由で最近まで封印していました。私にとっては、走って汗をかいている人を見ると、なぜかめっちゃテンション下がってしまうんです。
でも、その人たちは全く悪くない!! スポーツに敬意があるし、トレーニングはすばらしいと思っているのです!
ただ、どうしても受け入れられなくて。見てるとなぜか悲しい気持ちになってしまうんですよ。
気取っているとか誤解されるのが嫌で、実は悩んで、いろんな人に相談したりしました。
12年間の女子校生活が祟ったのか、子供の頃の何かトラウマなのか……。心あたりがあるとすると、3歳の頃から小児喘息で、走ったりすると呼吸が苦しくなることが多かったことです。「走る(汗をかく)=苦しくてつらいこと」みたいなイメージがあったのかもしれません。
おトイレもNG! 彼氏に排泄機能無しの設定
しかし、私の癖はこれだけではありませんでした。
極めつけはトイレに行かないこと!!
アイドルじゃないんだから……。これは物理的に本当に行かないのは無理なのですが、当時の彼がどうしていたのかというと、私が気がつかないうちにしに行ってくれていました(笑)。
私と一緒にいる時は、気がつかない間にふといなくなっていて、おトイレを済まし、いつの間にか戻ってきている……いつもそんな感じでした。
「ちょっとおトイレ行ってくるね」とかもなく、本当に気がつかないうちに済ましてくれてるんです。
じゃあ、家にいる時はどうするんだ! という声が聞こえてきそうですが、お家では私が寝ている隙に済ましていたみたいです。5年近くお付き合いしている間、意識のある時は、彼氏がおトイレに行くのを見ることがまずなかったので、今思えば本当にすごいことだと感心してしまいます……。
今書いていて思ったけど、これDVじゃないのか(汗)!?
あ、でも強要していたわけじゃ無いんです!! おトイレ問題は、彼氏が自発的にそうしたいと言ってしてくれていました。それもどうなんだって感じですが、おトイレに行かないキャラみたいなのが確立していたんですよ。お互い、変形した価値観が当たり前だと思っていたんですね。
今思えば、記念日は必ずお花を贈ろう! とか結婚式は馬に乗って登場しよう! とか決めていて、ほんとにバカップルだったのだと思います。若かったんだな……。
今だから笑って話していますが、ほんとどうかしていたと思います。すみませんでした……。
イタい恋から得た教訓「人間だもの! 彼氏の汗も彼の一部」
彼氏というものを美化していて、生々しいリアルな人間を受け入れられないまま過ごしていた私。おかげさまで、今ではこの面倒くさい癖をすっかり克服することができ、好きな人の汗はむしろ好きになれたのでホッとしています(克服エピソードについてはまたお話しできればと思っています)。
今は彼が汗かいても走っても、嫌いになりません(笑)。
私がいまだに独身なのがこのせいだったのかは謎ですが、自分の中での当たり前から脱却して、新たな価値観を楽しむことも恋愛の醍醐味だと、今では感じています。一緒に汗だくになりながらラーメン食べるとか最高ですよね!!
皆さんはどんなイタい恋、思い出しましたか??
(文・野口万紀子、イラスト・菜々子)
※この記事は2022年10月03日に公開されたものです