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立ち止まってもいい。和田彩花が“好き”と“仕事”を両立するワケ

#Lifeview

高橋千里

あこがれの人、がんばってる人、共感できる人。それと、ただ単純に好きだなって思える人。そんな誰かの決断が、自分の決断をあと押ししてくれることってある。20~30代のマイナビウーマン読者と同世代の編集部・ライターが「今話を聞いてみたい!」と思う人物に会って、その人の生き方を切り取るインタビュー連載。

取材・文:高橋千里
撮影:洞澤佐智子
編集:鈴木麻葉/マイナビウーマン編集部

ここ数年、20〜30代の人々の“好きなこと”に対する価値観が変わってきた気がする。

コロナ禍により働き方が見直され、独立や起業を志す人が増えてきた。誰でも好きなことを投稿できるSNSでは、個人の発信により価値を見出されるようになった。その結果、自分の好きなことを追求したり、仕事にしたりする人が増えているのを体感的に感じる。

マイナビウーマン読者と同世代の芸能人でも、まさに“好きなこと”を仕事につなげて活躍し続けている女性がいる。アイドルの和田彩花さん(27歳)だ。

ハロー!プロジェクトの女性アイドルグループ・アンジュルム(旧:スマイレージ)の元メンバーで、初代リーダーを務めていた彼女は、当時アイドル活動を続けながら、美術史を学ぶために大学・大学院にも通っていた。

「両立の道を選んだのは、どっちも好きだったから。アイドル活動は、自分の目標とする地点まで辿り着くまではやめないと決めていたし、そこで諦める選択はなかったですね」

迷いのない瞳で、両立の理由をさらりと口にする。有限な時間の中で2つの“好き”を両立しようと決めたのは、彼女にとって自然なことだったのだ。

「どちらかの専門になるんじゃなく、私の立ち位置でできることをやろうと思ったんです。幸いなことに、母も先生も私の選択を応援してくれて。どちらにも100%全力で取り組むことができましたね」

しかし、何年もその両立を完璧に続けることは容易ではない。大学院に進んでからさらに多忙を極め、最終的に「パンクしてしまった」と語る。

「美術史のレポートが溜まってしまって、ライブの休憩時間中に発狂したこともありました。それだけならまだしも、やっぱりどうしても時間が足りなくて、大学院を1年休学することになって。その前後くらいには、(アンジュルムの)グループを辞めることも視野に入れていましたね」

その後、アンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業。彼女にとって重要な人生の過渡期を経て、今もし当時に戻っても“両立”という選択を取るのだろうか。

「当時に戻ったら、両立はしないと思います。美術史だけやりたいです。一番悲しかったのが、大好きな美術史の授業を早退したり、休んだりしなきゃいけなかったこと。先生の講義テーマは興味のあるものばかりだったのに、それを聞けなかったのが心残り。今やり直せるなら、学業を優先して、すべての授業に出たいですね」

立ち止まることは「悪いことではない」

現状維持か、挑戦か。やりたいことか、やるべきことか。安定か、ときめきか。

年齢を重ねるごとに、仕事でも恋愛でも、人生の岐路に立たされる機会が増えていく。そして、そのたびに考える。どちらの選択が“正解”なんだろうか?

大学院との両立や休学、グループの卒業など、数々の節目を超えてきた和田さんは、選択の仕方をこう捉える。

「岐路に立たされた状態って不安が大きいですよね。精神状態も普段とは違うし、そこで選択するのってすごく危ないと思うんです。自分もパンクしていたときはそうだったので、ネットでいろいろと調べて、今は判断力が落ちているからまずはゆっくり休んで考えたほうがいいと学びました」

急いでどちらかを選択するのではなく、休息を取ることで、自分のやりたいことや未来を見つめ直すことができた。そう語る和田さんは、清々しい面持ちだった。

「自分の心と体を大切にするのが一番大事。だから、まずは立ち止まってみること。それは何かしらを辞めてしまうことにつながるかもしれないけど、辞めて落ち着いてから考えればいいんです。休むことや辞めることは決して悪いことではないし、体調が悪くても頑張って仕事に行ったり、第一線で活躍したりすることが絶対ではないと思うので」

30代が近づくにつれて「(心が)キリキリすることが多くなってきた」とも話す。それは、恋愛や結婚にまつわる話題が増えてきたことから。

「少し前の自分は、恋愛や結婚のことを聞かれるのがストレスで、それから逃げるために“仕事”という言葉を手段として口にしていました。そうすることでしか自分を守れなかったんですよね。だけど今は、プライベートをまったくなくすことがいいことではないと気づきました。今後は仕事とプライベートのバランスを取って、うまく生きていきたいな」

好きなことを追求できる原動力は「好きだから、ただそれだけ」

現在はソロでアイドル活動を続ける彼女は、初のアルバム「私的礼讃」を11月23日にリリースする。そのアートワークと作詞を自身で手がけるという試みに初挑戦した。

「グループ活動をしていた頃から、新曲が出るたびに自分なりの解釈をするのが好きだったんです。私だったらこういう衣装で、こういうジャケットのデザインで、こういうダンスにするかな……という妄想を繰り広げていて。

また、普段から自分の思ったことをスマホのメモに文章として書き留めておくのも好きでした。だから、今回のアートワークと作詞も、自然な流れで考えることができましたね」

グループ時代はなかなか組み込むことができなかった“自分なりの表現”を、今回のアルバムではすべてアウトプットすることができたと話す。

それだけにとどまらず、美術関連の書籍や番組出演、WEBメディアでのエッセイ連載など、“好きなこと”を多くの仕事につなげてきた実績がある。

「自分の中では、好きなことと仕事はきっちり分けず、ひとつの線でつながっているんです。好きなことを追求し続けて、その中で趣味や方向性が多少変わることはあっても、嫌になることはなかったですね。

たとえば美術館を紹介する番組に出演した際、予定以上に収録時間が延びてしまったことがあったんですけど、『長かったな〜。でも、楽しかったな』とすっきりとした疲れを感じることができました」

冒頭でも記したように、ここ数年で人々の“好きなこと”に対する価値観が変わってきた。だからこそ、好きなことをどこまで追求し続けられるかが問われることもある。

だけど彼女の話を聞くと、好きなことに飽きたり、嫌になったりすることは一切ない。その原動力はいったいどこからきているのだろうか。

問うと、「好きなことを追求できる原動力は、好きだから。ただそれだけ」と即答した。

「大変なことがあっても、好きな気持ちだけで乗り越えてきました。だから、たとえば今自分が会社員で、現状維持か、好きなことに挑戦するかで迷っていたら、後者を取ると思います。今は昔よりも転職がしやすいし、独立したり、会社をおこす人も増えている。動きやすくなっているなあと感じますし、0から1を作る自分のタイプにも合っているので」

しかしその一方で、必ずしも自分の考えが全員に当てはまるわけではないとも語る。

「私の友達で、会社員として上司から指示を受けて働くほうが好きだし得意という子もいます。それって決して悪いことではないですよね。転職や起業が増えている状況をメディアで目にすると自分の価値観が古いものだと思ってしまうかもしれないけど、そんなことはない。自分は何が好きで、何ができるのか。それを自己分析することが大事だと感じます」

最後に、彼女にとって“好きなこと”はどのような存在なのか聞いてみた。

「好きなことを仕事につなげるかは別として、好きなことがあるから人生が楽しくなると思っています。どうしても人間って、社会全体や友達と比べて、自分のできないことが目についてしまいがち。だけど好きなことをしている時間って、そういうネガティブな感情から離れて自分と向き合えますよね。癒やされるし、心から楽しいと感じられる。そんなすてきな時間、人生を楽しんでほしいです」

取材後、「いつか世界中の美術館を巡りたい!」と今後の野望を教えてくれた和田さん。好きなことを語る彼女の顔はとても晴れやかで、まぶしく感じた。

好きなことを仕事にできる人は魅力的だ。だけど自分に置き換えたとき、必ずしもそれだけが正解ではない。どんな仕事をしているときの自分が好きなのか、自分には何ができるのか。たまには一息ついて休みながら、“好きなこと”とのバランスの取り方をゆっくりと模索していく。

そうした先に、彼女の言う「すてきな人生」があるのかもしれない。

和田彩花ファーストソロアルバム『私的礼讃』

女性アイドルグループ・アンジュルムを卒業し、ソロとなって初めてのアルバム。

和田さん自ら、収録曲の作詞を手掛けたほか、アートワークにも初挑戦した本作品。表題曲『私的礼讃』は、鼻歌混じりの軽やかなボーカルと、バンドの躍動感ある演奏が魅力の中毒性のある一曲です。

11月23日より全世界配信中

 

※この記事は2021年11月23日に公開されたものです

高橋千里

高橋千里(たかはし ちさと)

2016年にマイナビ中途入社→2020年までマイナビウーマン編集部に所属。芸能人インタビューやコラムなど、20本以上の連載・特集の編集を担当。2021年からフリーの編集者・ライターとして独立。女性向けジャンル(恋愛・美容・エンタメなど)を中心に活動中。女子アイドル、恋リア、コスメ、お酒が好き!

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