みんな違って当たり前。pecoが大切にしてきた、多様性との向き合い方
あこがれの人、がんばってる人、共感できる人。それと、ただ単純に好きだなって思える人。そんな誰かの決断が、自分の決断をあと押ししてくれることってある。20~30代のマイナビウーマン読者と同世代の編集部・ライターが「今話を聞いてみたい!」と思う人物に会って、その人の生き方を切り取るインタビュー連載。
取材・文:ミクニシオリ
撮影:洞澤佐智子
編集:杉田穂南/マイナビウーマン編集部
なぜ、私たちは人の目を気にしてしまうのだろう。
「普通はそうしないよ」とか「それじゃ自分がつらくない?」とか、誰かに言われた言葉が呪いになって、いつの間にか自分自身を縛りつけていく。
2022年。「新しい家族のかたち」を体現し、パートナーとの価値観を認め合って、前に進もうとしていたpecoさんにも、世間からのいろいろな“お声”が集まったという。だけど、彼女はいつだって自分らしい選択をして、その選択に覚悟と責任を持って、前に進んできた。
そんなpecoさんは2024年2月、初めてのエッセイ本『My Life』(祥伝社)を発売した。本には、パートナーのryuchellさんとの当時の関係性や、想いもつづられている。
pecoさんはあの頃も今も、変わらず自分らしく生活している。そんな彼女が教えてくれたのは、ありのまま生きるために大切な、自分と他人を切り分けて考えるコツでした。
あの頃の気持ちを「自分の言葉で伝えたかった」
本の発売にあたって、pecoさんは「自分の言葉で、皆さんに伝えたいことがあって」と話し始めてくれた。
「実は本を作るお話は2022年から進んでいて、そのために色々と動いていました。その時期はryuchellからのカミングアウトもあって、新しい家族のかたちとして進んでいこうとしていたので、私に対してもみなさんから色々なお声をいただいていました。
心配の言葉をたくさんいただく中には“pecoちゃんは優しすぎるよ”というお声もあったのですが、優しいとか優しくないとかではなく、息子とryuchellと一緒に生きていきたいという強い覚悟があったからこその決断でした。その時の想いを私自身が選んだ言葉で伝えたかった」
pecoさんの想いもあって、本は当時の文章をそのままに、プロローグ、エピローグなどを追記して出版することになったのだそう。
「私は、本当に自我が強いんですよ(笑)。例えば、人から何かをすすめられるのも少し苦手なんです。コスメやスキンケアも、自分がいいと思ったものを使い続けちゃうし、気に入っているものをわざわざ変える必要なんてなくないって思っちゃうくらい、自分がいちばんって考え方なんです。
ファンの方は、私に“しっかりしすぎ”って言ってくれるけど、それはryuchellとの関係性があってこその私だと思うんですよ。一人でいたらほんまに何もできない子やったけど、ryuchellがそんな私にたくさんの愛を注いでくれたから、私もryuchellに対してちゃんとした自分でいられたんだと思うんです。pecoちゃんは優しいねって、みなさん言ってくれるけど、ryuchellに対してだから、優しくできたんです」
好きな人に対してだから優しくできるというのは、誰しもにある価値観だ。だけど、そのことがなかなか伝わらなかったのが、pecoさんがエッセイの出版を決意した理由のひとつなのだ。
「私の好きなものは私が決めたいし、それを全ての人に理解してもらおうとは思っていません。自分のことは自分しか分かってあげられないと思っています。誰かが私のことを想って言ってくれる意見も、気持ちはとってもうれしいのですが、私は他人の意見で曲がったりできない人間なんです。それでも、今までの私の気持ちを伝えたくて、本を出版したいと思いました」
自分の選択に責任を持っているからこそ、迷わない
一般人の私たちと比べれば、想像もつかないほどの「意見」を目にし続けているpecoさんだけど、いい意味でそれらを気にしすぎてはいないのだという。
「芸能活動に限らず、私はあまり周りの意見を気にしない方だと思います。例えば子育てでも、分からないことがあったらSNSやネットで調べることはあるけど、その全てを真に受けたりはしないです。いくつか選択肢があったら、その中で自分が共感できたものを実践します。自分に合う選択ができたら、それでいいんじゃないかな?
だからこそ、逆に私の本を読んで、全部を参考にしてほしいなんて思いません。何千行もあるうちのどこか一文でも、読んでくれるだれかの参考になる箇所があればいいなと思います」
こうしてお話してみると、pecoさんがとても自立した女性であることが分かる。他人の意見に流されず、自分らしさを確立できている。幼い頃から培ってきた「選択への責任」に、そのルーツがあるという。
「小さい頃通っていたバレエ教室の先生が本当に厳しい方で、バレエの練習に行くのがキツくなってしまったことがありました。辞めたい、と母に伝えると“自分でやると決めたことなんだから、辞めるなら舞台が終わってからにしなさい”と言われました。母のこういった姿勢は、今でも私の礎になっています。
私は、自分の発言や行動には必ず責任が伴うと思っています。結婚や出産の時にも大きな覚悟をしました。だからこそ、何があっても気丈でいられるんだと思います。愚痴くらいは言ったっていいけれど、選んだ以上はやり遂げたい。少なくとも、私はそうでありたいです」
自分の選択に、自信と覚悟を持つ。当たり前のことのようで、なかなか難しい。時に後悔してしまうことは誰にだってあるはず。そんな時pecoさんはどうしているのだろうか。
「後悔することはあってもうまく変換しちゃいます。例えばレストランに行って、ハンバーグを注文した後、実際にテーブルに運ばれてきてから、やっぱりパスタだったかもって日もあるじゃないですか。そういう時は、自分の中で必死に、ハンバーグのいいところについて考えるんです。
あ、ハンバーグだったら汁も飛べへんから服も汚れへんな、とか(笑)。だって、もうハンバーグは目の前にあるんだから、後戻りできないじゃないですか。今ある状況をいい方向に転がせるかは、自分次第だと思うんです」
決まってしまったことについては後悔せず、ポジティブに変換。それでも悲しみが勝つ時は、悲しみを怒りに変えて、「なんでやねん!」とツッコんでいるのだそう。面白おかしく話してくれたpecoさんだけど、彼女の最も人間らしい部分であり、素晴らしい部分だとも思った。彼女は自分の選択を他人のせいにしないし、自分を責めることもしないのだ。
でも、あまりにもしっかりと「自分らしさ」を確立していると、親しい人と衝突することもあるのではないだろうか。
「自分が折れなすぎて、お付き合いする人を困らせたことはありました。だけど、ryuchellとはそうならなかった。彼が私を思いやってくれるから、私も自然とryuchellに優しさを返すことができました。それでも言いたいことをガマンすることはしませんでした。ケンカの時に気をつけていたのは、意見の伝え方。
どんな時でも“ryuchellはこう言ってくれるけど”と、相手が私を想って言ってくれていることへの感謝を、言葉にして表すようにしていました。
相手から意見を言われた時も、最初に“伝えてくれてありがとう”と返せるように意識しています。今も、息子がイヤイヤしている時もワガママを言ってくれている、と受け取るようにしています。感謝は口に出していればいつか自分に返ってくるし、相手の思いやりが伝わったのなら、感謝を返すのが礼儀だと思っているから。その分、ryuchellにも感謝を求めてましたけどね(笑)」
家族だけでなく、お友達や仕事相手にも常に感謝の言葉を口に出すようにしているというpecoさん。たしかに、礼儀正しい人には礼儀正しくしようと思うし、感謝を伝えてくれる人には、自分もそれを返したくなるものなようにも思える。happyな関係性を自分から作ることで、自分が生きやすい世界ができあがっていく。